
さて諸君、今日も部品たちの声が聞こえているだろうか?
そんなわたくしは、今日も部品たちにギャーギャー文句を言われております。
えー、設計というお仕事、なんだかカッコいいイメージがあるかもしれないが、
実態はというと──全方位からのわがまま調整業である。
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部品たちは実におしゃべりだ。
「ここ薄すぎる!潰れる!」「この穴、位置ずれてると死ぬから!」
「となりのやつとうまくやれないんですけど?」「おい、誰だよこのR決めたの…」
もう、まるで『ジョジョ』に出てくるスタンド「ピストルズ」。
全員が文句を言ってる。全員が正しい顔して。
そして全員が──お金が欲しいのである。
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材料は言う、「このままじゃ力が足りない」。
加工は言う、「こんな形、工場泣かせだ」。
営業は言う、「このライン、カッコ悪いって言われたら売れないっすよ」。
品証は言う、「想定外の使い方、絶対されますからね」。
全員がちょっとずつ正しくて、全員がちょっとずつ無理を言う。
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じゃあ、設計者は何をするのか。
最適化する。
ただそれだけのことだ。
でもこの「最適化」、ただの理屈じゃない。
コスト、強度、デザイン、安全性、組立性、UX、そして“部品の気持ち”まで。
全部を考えて、全部にちょっとずつ折り合いつけて、
最後に「これでどうでしょうか」と形にして差し出す。
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つまり設計とは──
「形をつくる人」じゃなくて「矛盾を納得に変える人」。
もっと言うなら、
**「文句だらけの部品たちを、なんとなく幸せにしてあげる人」**である。
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これは、数学じゃない。正しさじゃない。
誰かが見た瞬間、「あ、なんかこの形いいね」って思ってくれる、
人間くさいバランス感覚の塊だ。
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わたしは今日も、
しゃべりすぎる部品たちの声に耳を傾けながら、
お金の取り合いに終止符を打つべく図面を描く。
そう、それがわたしにとっての「設計」だ。
最適化の専門家であり、沈黙しない現場の調停役。
そして時々、ピストルズの兄貴。
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ふぅ。
たまには部品に「ありがとう」って言われてみたいもんだね。