楽善な日々

新社会人となった楽と、大学生善、おとん、そしておかんの日々を綴ります。新しい街に引っ越して、新しいスタートを切りました。

トイレの張り紙

2023年06月29日 | 2023年日記
1年前、浪人生だった善は
少しも伸びていかない模試の結果に
やる気と元気を持っていかれて、
日ごと暗い顔になっていった。

なんとか笑顔にさせてあげよう。
一回でも笑顔になれれば、それでよい。
それだけで、今日一日を生き抜く力が出てくるはず。
笑うことが善を救ってくれる。
そう信じていた。

善は、数式や英単語などを、
目につきやすいトイレの壁に貼っていた。
その空いている隙間に2枚、張り紙を付け足すことにした。

「手のとどくところだけを見ていればいいんだ。
 物事の手の付けられないほどの厄介さと、
 人間の力の弱さとを考えあわせたひには、
 そりゃ何もできなくなるさ。
 だから、まずやってみて、
 それから次にやることを考えることだ」

「われわれが欲するものはすべて、
 山と同じだ。
 われわれを待っており、逃げていきはしない。
 けれども、よじ登らなければならない」

 アラン著 「幸福論」より

トイレから出てきた善が笑いながら言った。

「誰、張り紙したの?なんか名言貼ってあるんですけど~!」

浪人生の親にとっては、
笑顔を見る瞬間が宝物だった。
一日一回、宝を発見するために、
頭をひねってアイディアを絞り出していたよ。

6月29日  おかん






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