「二重作 龍夫」先生の思い出（１)

私が三十代の頃、二重作先生が仙台に来られると聞いて、待ち合わせ場所の居酒屋に出かけました。
高名な方なので私自身少し緊張していたのですが、ひょうひょうとした感じで少しも偉ぶったところがありませんでした。
先輩のみなさんからは、先生はあまり酒を飲まないと聞いていたのですが、その時は少し召し上がり、ご自分で注文された秋刀魚を見て「何だこれは？はらわたが入ってないのか。秋刀魚はらわたがおいしいのに…」といかにも残念そうに食べられたことが今でも記憶に残っています。
また私の作品をご批評いただいた時のこと、「絵画は線と色です。線は訓練によってうまくなるが色はもって生まれてくるものです。あなたは天性の色を持っています。日本一の色とは言わないが素晴らしい色です。これからもっといい作品が出来るはず、がんばりなさい」と言われました。
　それ以来私は、「うちは母子家庭よネ！」の一言にもめげないで、この二十年？二重作先生の言葉を信じ日夜制作に励んでおります。

*二重作　龍夫先生
油絵画家で「ドン・キホーテ」、「富士山」シリーズの作品等で有名。
フランス文化勲章「レジオンドヌール（日本で言えば勲一等と同等）」も受賞されている


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