悪魔の囁き

少年時代の友達と楽しかった遊び。青春時代の苦い思い出。社会人になっての挫折。現代のどん底からはいあがる波乱万丈物語です。

若葉と青葉と紅葉と・・・

2017-09-12 09:33:19 | 日記
三話【崩れる神話】


運送屋は、社員が出勤し来る1時間前には麻布店に来ていた。
1階出入り口前の自分が積みやすいところに車を置いていた。
「おはよう」と佐藤が、加藤がトラックの中でスポーツ紙を見ているところに来て挨拶した。
「おはようございます」
「売れたかい」
「厳しいですよ」
「それで、いくらで売れた」
「20万円です」
「今持っているな」
「うん」
「んじゃ、約束の金をよこせよ」
「3割だったな」
「そうだ。それで足は着かないだろうな」
「大丈夫だよ」
「それならいいけど」
「業務課の連中にはバレないようにしているよ」
「特に発送場の人間には、気をつけろよ」
「分かっているよ」
「これから、毎月頭に金をよこせな」
「いいよ」
「それに、変に疑われるといけないから、仕事中以外は伊藤や内藤と話し込まないようになぁ」
「うん」
「それに、伸二もだぞぉ」
「それは、岩田さんにも言われているよ」
「ならいいけど」

「しかし、バイヤー商売上手で、言い値で買ってくれないよ」
「そうだろうな。それでいくらにした」
「取り敢えず、中間を取ってクラCCRを1本80円で決めたよ」
「やはり、そんなものかぁ」
「それに、ウインドウォッシャーとバッテリー液を10円で売るから、持って来い。と言われたよ」
「いくらで欲しいって言うの」
「1本5円だよ」
「それじゃなぁ、割に合わないないし、それに、ケースが多くて盗み出せないものなぁ」
「あんなに、重くて嵩張る物、草臥れ儲けの骨折り損だよ」
「水物に手を付けたら、一発で捕まるよ」
「やはり、ディスカウントショップに持って行ったのかい」
「そう。ホームセンターだと支払いは手形にしてくれと言われたんだよ」
「現金収入の割にはセコイところがあるんだよな」
「親会社が株式上場企業だと、払いはいいんだけどな」
「ディスカウントショップだとノーブランドを安く仕入れて、そこそこの値段で売っているから利益率がいいし、金払いもいいんだよ」
「佐藤さんのところはいくらで売ったの」
「加藤と同じだよ」
「関東地区だと何処も同じか」
「他に売り先あるか」
「群馬県まで行くと、買うところはいくらでもあるけど、燃料代がかかりすぎるんだよ」
「もう少し、高く売れたら足代も出るけど、足元を見られて叩かれたら、危ない橋を渡っても、何の意味がないからな」
「他にめぼしい商品があればいいけどな」
「地下にあるのは、ケミカル以外は、ハード外装部品と季節物が在庫されているだけだからな」
「か、と、言って、二階の値の張る小物用品じゃ、極端に減れば直ぐ分るからな」
「後は、一階に在庫しているカシワのタイヤブラックワックスが、どうにかなればいいんだけどな」
「売れているのかい」
「カシワのタイヤブラックワックスは曇り止めと同じく、テレビコマーシャルが入っているから、売れているよ」
「店では、いくらで売っているの」
「定番で980円、特売でも、580円から680円だよ」
「それなら、480円売りで、400円で持っていけば、かなり儲かるよ」
「そうだな。1000本で400円。40万か。いいところだな」
「やってみるかい」
「でも、あれは、渡部主任が10ケース単位で管理しているから、手は出せないよ」
「毎日1ケースずつ、チョロマカシテ行けばどうにかなるかな」
「ダメだよ。検品所があって、人の出入りも多いから、何処で誰が見ているか分からないからな」
「それなら、4人で交代して盗むか」
「どうやって」
「例えば、伊藤が盗む時は、俺と内藤やお前が、出入り口に居て、ヤバそうな時はアイズをするんだよ」
「それなら、出来るかもしれないな」
・・・!?・・・
「後で、考えて見るよ」
「決めたら教えてよ」
「分かった」

ディスカウントショップの本部の倉庫入口で商品を降ろし、倉庫に入れた。
「これで全部ですね」
「ご苦労様でした」
「有難うございました」
社員が鍵を閉めた所で、隠れていた2台の覆面パトカーから6人刑事が出てきた。
「佐藤。窃盗と横流しの現行犯で逮捕する」
そして――
佐藤の自白で伊藤・内藤・助手の伸二、次の日、加藤も逮捕された。


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