「冗談っ。この塀に穴開ける気?」
「冗談ではなく、本気のようですわよ」
じりじりと障壁から遠ざかる二人。このままでは、それほどの時間をかけず、障壁は崩れるであろう。勿論、魔犬が障壁を崩して出て来るのをおとなしく待っているつもりは、さらさらない。魔犬が障壁に体当たりする音を背中で聞きながら、ふたりはその場から一目散に逃げ出した。
剣技であれば、そこら辺の男を相手にしても引けを取らないグリシーヌであるが、これは、普通の剣が通用しない魔犬である。それでも、多少の時間の余裕があれば、一時的にグルラディーヌの魔力を剣に吹き込むという手も使えるのだが、近づいたとき、炎で攻撃されては、どうしようもない。
「妹姫・おとひめ。森はいけませんわよ」
逃げながらも、グリシーヌが注意する。
炎を纏う魔犬が森の中まで追って来れば、火事になることは間違いない。下手をしたら、自分たちまで森と運命を共にする羽目になってしまう。
あの相手に、炎の術は使えないから・・・。
逃げながらも必死で考えを巡らすグルラディーヌ。とその時、ある匂いと音を捉えた。
「姉姫、こっち」
グリシーヌの腕をつまみ、走る方向を変える。道標になるのは、かすかな匂いと音。魔犬に追いつかれる前にその源にたどり着かなくてはならない。
とにかく、走って走って走って・・・。
一瞬、自分の感覚に自信をなくしかけた時、道が開け、それが目の前に現れた。
二人の目の前に現れたもの、それは、大きな泉であった。
グルラディーヌが捉えたのは、水の匂いと音だったのだ。
炎を纏い火を吹く犬が相手なら、水場を陣に取ればこちらが有利になるはずだ。少なくとも、火事を巻き起こすことは、ない。後は、そうやって魔犬を討ち取るか、である。
出来ることなら元の世界に、あるいは、呼び出した術者の元へ送り返してやるのが一番であるのだが、あいにく、それは、グルラディーヌの持つ術のレパートリーには含まれていなかった。
「冗談ではなく、本気のようですわよ」
じりじりと障壁から遠ざかる二人。このままでは、それほどの時間をかけず、障壁は崩れるであろう。勿論、魔犬が障壁を崩して出て来るのをおとなしく待っているつもりは、さらさらない。魔犬が障壁に体当たりする音を背中で聞きながら、ふたりはその場から一目散に逃げ出した。
剣技であれば、そこら辺の男を相手にしても引けを取らないグリシーヌであるが、これは、普通の剣が通用しない魔犬である。それでも、多少の時間の余裕があれば、一時的にグルラディーヌの魔力を剣に吹き込むという手も使えるのだが、近づいたとき、炎で攻撃されては、どうしようもない。
「妹姫・おとひめ。森はいけませんわよ」
逃げながらも、グリシーヌが注意する。
炎を纏う魔犬が森の中まで追って来れば、火事になることは間違いない。下手をしたら、自分たちまで森と運命を共にする羽目になってしまう。
あの相手に、炎の術は使えないから・・・。
逃げながらも必死で考えを巡らすグルラディーヌ。とその時、ある匂いと音を捉えた。
「姉姫、こっち」
グリシーヌの腕をつまみ、走る方向を変える。道標になるのは、かすかな匂いと音。魔犬に追いつかれる前にその源にたどり着かなくてはならない。
とにかく、走って走って走って・・・。
一瞬、自分の感覚に自信をなくしかけた時、道が開け、それが目の前に現れた。
二人の目の前に現れたもの、それは、大きな泉であった。
グルラディーヌが捉えたのは、水の匂いと音だったのだ。
炎を纏い火を吹く犬が相手なら、水場を陣に取ればこちらが有利になるはずだ。少なくとも、火事を巻き起こすことは、ない。後は、そうやって魔犬を討ち取るか、である。
出来ることなら元の世界に、あるいは、呼び出した術者の元へ送り返してやるのが一番であるのだが、あいにく、それは、グルラディーヌの持つ術のレパートリーには含まれていなかった。