OSS技術者育成日記

デージーネットでオープンソース技術者を育成する時に私が考えたこと、大切にしていることを書いていきます。

気持ちよく振り返る

2012-12-31 12:45:14 | 仕事のコツ

■ はじめに


秋から冬になってくるにつれ、なぜか多くの人が落ち込みがちになります。屋外に出なくなったり、太陽の光を浴びなくなったりすることが原因なのかもしれませんが、この時期には毎年そう感じます。デージーネットでも新入社員が入社して8ヶ月が経ちました。彼等は、徐々に会社にも慣れてきましたが、一方で上手く行かないことや落ち込むことも増えてきました。そんな時に、「リフレクション(振り返り)をしてください」と言うと、「何やってるんだよ! 反省しろよ!」と言われているような気になることが多いようです。

特に、最近のゆとり世代の人たちは、「上手く行くことを伸ばす」という教育を受けてきています。そのため、逆に「上手く行かないこと」に焦点を当てて深く考えた経験が少なく、そうした気持ちになりやすいようです。

しかし、私たちは「リフレクションをしてください」ということをやめません。これは、叱責のためではありません。論理的思考を身につけるには、普段の行動の良かったことと、悪かったことを分析する癖を付けるのが、一番簡単だからです。

■ 悪かったことの振り返り


このブログでも何回も振れていますが、論理的に考えることは、技術者としてはとても重要なことです。いわゆるPDCAを回すためには、常にチェックをして次のアクションにつなげる癖を付けていかなければなりません。これは、技術者としてだけでなく、現代の社会人として必須のスキルとなってきています。

このスキルを身につけるためには、やはり論理的な振り返りを何度も何度も繰り返しやって、意識しなくてもできるレベルまで持っていく必要があります。この繰り返しのための題材として、日々の自分の活動を使うのがもっとも効率的ですし、そのまま成長にもつながるという利点があります。最初の頃は、自分では自発的にはできません。だから、日報で振り返ることが決まっていたり、できていないと先輩社員から振り返りを求められたりします。たぶん、人から「振り返りをしてください」と求められることは、「反省しろ」と言われているようで、あまり気分の良いことではありません。しかも、多くの場合には、「悪かったこと」や「上手く行かなかったこと」について振り返るように言われるので、なお嫌な気持ちになってしまうのです。

気持ち的には、「上手くいったこと」や「良かったこと」を振り返りたい所です。その方が気持ちが良いですので。でも、何かを実行して「上手く行った」場合に、上手くできた要因を特定するのは、結構難しいものです。上手く行くのは、例えば次のような要因があったからだとします。

・勉強をした
・周囲の手助けを得られた
・落ち着いて考えられた
・きちんと計画ができた

多くの場合には、「上手く行った」という結果は、これらの要因が複合的に組み合わさって初めて結果としてでてきます。おそらく、どれか一つが欠けても上手く行かなかった可能性があります。したがって、一つに要因を特定することが難しいのです。さらに、すべての要因をリストアップするのも難しいのです。結果的に、「上手く行ったこと」を論理的に振り返るのは難しいのです。

逆に、「上手く行かなかったこと」は、通常は一連の行動の中の様々な部分に問題が潜んでいる可能性があり、どれか一つを改善すれば直せる可能性があります。例えば、ドキュメントの内容に不備が多かったという場合を考えてみると、改善することができる箇所は通常は一つではありません。

・計画の時点 ~ 何を書くべきか分かっていなかった
・書いている時点 ~ 後まわしにしたことを書き忘れた
・終わってからのチェック ~ 読み直していなかった

この内のどこか一つが改善されれば、全体として上手くできる可能性があります。そのうちの最も効果が期待できる場所の改善を、次のアクションにつなげていくことができれば、次は上手くいきそうだと考えることができます。

つまり、上手く行ったことは要因を特定し難く、上手く行かなかった事は要因を特定しやすいのです。だから、論理的振り返りを身につけようとすると、「上手く行かなかったこと」に焦点を当ててしまいがちです。これが、嫌な気持ちになる大きな要因になっています。

■ 気持ちよく振り返る


では、どうしたら落ち込まずに振り返りができるのでしょうか? 
とても逆説的に聞こえるかも知れませんが、「上手くやろうと考えて実行する」ことがとても大切です。つまり、工夫をして行動する事です。

工夫をして行動した場合には、上手く行った時には、工夫した結果だったのかを考えればずっと考えやすいです。また、上手く行かなかった時にも、最初から「上手くやろうと考えて」行動していたのですから、失敗したら自然と「なぜ?」という疑問が自分で浮かんでくるものです。そうすれば、人から言われなくても自分で振り返りをすることができます。失敗の要因も、「自分の工夫が足りなかったのではないか?」、「工夫のポイントがずれていたのではないか?」など、考え易くなります。そうすると、落ち込むことが少なくなります。

だから、仕事というのは、「上手くやろうと考えて実行する」、「工夫をしながら実行する」ことが大切なのです。「失敗しなければいいや」と考えて、何となく言われたことを実行していると、論理的に振り返ることも難しく、良い循環にはなりません。

■ おわりに


では、どうしたら「上手くやろうと考えて実行する」、「工夫をしながら実行する」ことができるでしょうか?
私が良く薦めるのは、毎朝の仕事を始める前に「今日の工夫」を考えることです。そして、仕事が終わったときに、その結果について考えてみましょう。こうした行動が毎日の日常になった頃には、きっと論理的思考が身についています。



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