■はじめに
これは、9月3日に「仕事と成長」という内容で話した社長トークの一部をまとめたものです。
今回の社長トークでは、7月から契約したイノベーションクラブを使って研修を受けるときに、どのようなことを考えながら研修を受ければ良いかというヒントを与えることを目的としていました。
■技術者という仕事
最初に技術者とはどういう仕事かを再確認しておきます(技術者とはどんな仕事かも参照)。
まず、「技術」をYahoo辞書で調べると次のように書かれています。
・物事を取り扱ったり処理したりする際の方法や手段。また、それを行うわざ
・科学の研究成果を生かして人間生活に役立たせる方法
また、「技術者」をYahoo辞書で調べると次のように出てきました。
・専門的な技術をもち、それを役立たせることを職業とする人
ちなみに、私は、技術者という仕事を次のように説明しています。
「人々の生活の質を向上したり、社会を便利にする仕事」
例えば、デージーネットの仕事に当てはめて考えると、デージーネットの技術者は次のような人ということになります。
・インターネットやオープンソースの専門的な技術者
・インターネットを便利で安心して使えるようにする仕事
・多くの人々の生活の質を向上することができる
デージーネットでは、ISPのサービス用サーバや、ネットサービス用のサーバをたくさん構築しています。ですので、この仕事は「多くの人々の生活の質を向上することができる」仕事なのです。このことを考えると、私たちは、社会の役に立つ技術者となるために、少しでも成長をしていかなければいけないと思うのです。
■知識労働者と技術者
ドラッカーは、知識労働者という考え方を提唱しました。もちろん、技術者も知識労働者です。知識労働者に必要とされる能力を考えれば、どのようなことを身につければ良いのかが分かるかもしれません。
ドラッカーは、まず知識労働者には「専門性」と「ネットワーク」が必要だと言っています。
専門性は、どう身につければ良いでしょうか? 専門性は、新入社員研修や業務内での各種調査など、業務を通じて培っていくこともできます。しかし、一方で自己学習や資格の取得などを通じて身につけていくことも大切です。
専門性と言うと、知識のことを指すと思っている人も多いようですが、知識は専門性の一つの要素に過ぎません。例えば、医師の国家試験に合格したら、医師として必要な最低限の知識が身についていることは分かります。しかし、その人が本当の意味で医療の専門家として活躍できるかどうかは、まったく別問題です。例えば、手術をするためには知識だけでなく、道具を使いこなす技量が必要です。患者さんの状態をきちんと聞くためには、コミュニケーション力も必要かもしれません。私は、こうした知識を生かす力がついてこそ、初めて専門性が生かせるのだと思います。
次に、ネットワークとは、専門家どうしのつながりのことです。仕事は、一人ではできません。特に大きな仕事になれば、他の専門家と一緒に仕事をしていく必要があります。そのために必要なのがネットワークということです。
では、どうやったらネットワークを作ることができるでしょうか?
私は、積極的に人と関わっていくことが大切なのだと思います。例えば、デージーネットでは、社内での勉強会、飲み会、社員旅行、清掃など人と関わる機会をたくさん用意しています。こうした活動を通じて、お互いの人間性を把握し、信頼関係を結んで置くことが、仕事の上でのネットワークにも影響を与えていくのだと思います。
そして、ドラッカーは、「経営者の条件」の中で、成果をあげるにはスキルが必要だと言っています。「成果をあげるスキル」については、後で解説します。
■ 能力を身につけるには
次の図は、能力と意識のマトリックスです。これは、「実践するドラッカー」の著者の佐藤等さんが講演で紹介していたものです。
私たちは、最初はどんな能力が必要なのかを知りません。ですから、まずは、どんな能力が必要なのかを「気づく」必要があります。本を読んで勉強したり、セミナーを受けたりすることで、この「気づき」を得ることができます。ただ、気づいて知っただけでは、能力を獲得したとは言えません。その知識を、実践や訓練を通じて使えるようにすることで、初めて能力がある状態になります。しかし、そこで終わってもいけません。本当の意味で能力を獲得したと言えるのは、無意識にそれを使えるようになったときです。佐藤さんは、講演では、九九を例にしていました。9×9が意識せずに計算できるようにならないと、99×99の計算はすごく難しいはずです。意識しなくても、パッと9×9の答えが浮かんでくるようになって、初めて九九を身につけたと言えます。それが無意識になるまで訓練するということです。
研修を受けてできるのは、「気づく」というところまでです。そこで得た「気づき」を仕事にどう行かし、習慣化していくことがとても大切なのです。
■ 成果をあげる5つの能力
ドラッカーは、経営者の条件の中で、成果をあげるには次の5つの能力が必要だと言っています(出典: プロフェッショナルの原点:P.F.ドラッカー:ダイヤモンド社)。
・時間をマネージメントする
・貢献に焦点を合わせる
・強みを生かす
・重要なことに集中する
・効果的な意思決定を行う
それぞれが、セミナーなどでのタイトルにもなっているくらい重要なことです。このブログでは個々については解説しませんが、1点だけ技術者にとってとても大切なことだけを取り上げておきます。
ドラッカーは、「貢献に焦点を合わせる」ということが、より良い人間関係に必要な、コミュニケーション、チームワーク、自己啓発、人材育成の4つの能力を身につけることにつながると言っています。これが、技術者が「専門的な技術をもち、それを役立たせることを職業とする人」であることに、とても大きく関係していると思います。IT業界の技術者は、コミュニケーションが下手でひとりよがりになりがちな傾向があります。その傾向を打破し、成果をあげるために、この「貢献に焦点を合わせる」ということは、とても大切な目標だと思うのです。
■ おわりに
「仕事の報酬と楽しさ」でも説明していましたように、「能力をつける」というのは、それ自体がとても意味のあることです。能力をつけ、腕を磨くことで、私たちは技術者として「いい仕事」ができるようになります。そして、後に残るような良い仕事ができた時に味わう達成感は、何者にも変えがたいものだと、私は思います。
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