OSS技術者育成日記

デージーネットでオープンソース技術者を育成する時に私が考えたこと、大切にしていることを書いていきます。

学生症候群とパーキンソンの法則

2014-01-06 16:28:02 | 仕事のコツ

■ はじめに


今回は、学生症候群とパーキンソンの法則について取り上げます。この2つは、プロジェクト管理の世界では良く取り上げられるのですが、デージーネットの社員に聞いて見たところ、意外と知らないことが分かりました。とはいえ、何を隠そう、私も傾向としては知っていたものの、「学生症候群」、「パーキンソンの法則」という名前については知りませんでした。自分の記録としての意味も含めて、ここで取り上げておくことにします。

■ 学生症候群


学生症候群というのは、学生が期限ギリギリになるまで夏休みの宿題に取り組まないことが多いことから名づけられたものです。つまり、多くの人は、十分に期限まで余裕のある仕事をもらっても、なかなか取り組みを行わず、ギリギリになってから取り組む傾向があるということです。

以前にも、緊急中毒の話についてブログに取り上げましたが、学生症候群を克服しないと、緊急中毒にも陥りやすいことになります。

■ パーキンソンの法則


パーキンソンの法則とは、「ある資源に対する需要は、その資源が入手可能な量まで膨張する」という法則です。この法則の起源についての私の知識は、Wikipediaのものしかありませんが、コンピュータの世界では、「データ量は与えられた記憶装置のスペースを満たすまで膨張する」などという例で当てはまると説明されています。

私が思い当たるだけでも、この傾向にあてはまることは多いです。例えば、CPUやメモリなどのコンピュータの性能は以前より格段に良くなっています。しかし、私がコンピュータプログラムを始めたころの状況と比べると、現在のプログラムは小規模なプログラムでもたいへん多くのリソースを使ってしまいます。これは、プログラミングのしやすさを追求した結果です。プログラミングのしやすさを追求したことで、多くの人がプログラムを開発できるようになり、利用用途も適応領域も大きく増えました。しかし、どんなにコンピュータの性能が上がっても決して満足しないのは、すぐに与えられたリソースの範囲いっぱいまで使うようになってしまうためだと思います。

ちょっと話がそれましたが、プロジェクト管理で言えば「長い期限を与えた場合には、その時間いっぱいまで時間を使ってしまう」ということになります。

■ 成長の鍵


私が知っている限り、いわゆる「できるSE」や「できるプログラマー」は、学生症候群にもパーキンソンの法則にも当てはまりません。つまり、この2つをどう克服するかが、技術者の成長の鍵になる可能性があるということです。

学生症候群に対する解決策は、夏休みの宿題の場合と同じです。計画を立てて、コツコツ取り組みなさいということです。まずは、ギリギリになってから取り組むという傾向があるかどうかをチェックしてみる必要があります。そして、この傾向が、仕事を非常に困難なものにすることを認識する必要があります。

発生する問題は、主に緊急中毒になってしまうということです。つまり、すべての仕事が期限のギリギリの緊急度の高い仕事になってしまいます。そうなると、本当に重要なことに時間を割くことができなくなります。当然、勉強や効率化などにも取り組めません。いつまで経っても、スキルを伸ばすことができないのです。(詳しくは、重要事項に取り組むを参照)

パーキンソンの法則に対する解決策は、「期限を決めないこと」というのを読んだことがあります。しかし、私はこれには賛成できません。どんな仕事でも、たいていの場合には期限があり、自分の裁量だけで決めない訳にはいかないからです。

パーキンソンの法則に縛られ、ある時間をすべて使ってしまう人の傾向には二種類あります。一つは、効率よくやろうと思っていないということです。もう一つは、ある程度の完成度になってから、いつまでも完成させないことです。例えば、心配性で、残りの時間があるだけ何度も何度もテストを繰り返し行うような人がいます。あるいは、時間いっぱいまでデザインをこね回したり、時間があるからとドキュメントを作ったりという人もいます。

パーキンソンの法則を克服する方法は、一つではありません。例えば、次のような方法があると思います。

・常に効率アップのための工夫をする
・前倒しのスケジュールになることを目指す
・時間が余ったら行うことを決めておく
・最初に完成形の品質レベルを決めておく
・仕事を磨き上げる時間を、あらかじめスケジュールに入れておく

■ プロジェクト管理や育成で気をつけること


プロジェクトリーダーや部下を持つマネージャは、人にはこの二つの傾向があることを常に想定しておく必要があります。

学生症候群の傾向がある人に仕事を依頼する場合には、放任しておいてはダメです。最初にきちんと計画を立てていることをチェックし、仕事を計画どおりに進められているかを常にチェックする必要があります。放任していると、ギリギリまで手をつけず、気がついたら手遅れということになりかねません。

パーキンソンの法則の傾向がある人に仕事を依頼する場合には、本当の期限よりも短い期限を伝えるのが良いと思います。つまり、時間に関してのリスクは、依頼者側で担保しないといけないということです。

そして、どちらの場合にも有効なのは、仕事を細分化して、短い単位でスケジュールを決めさせることです。そして、進捗報告をきちんとさせましょう。

これらのことを管理者やプロジェクトリーダーが実施してあげれば、メンバーの仕事は比較的円滑に回っていく可能性が高くなります。しかし、注意しなければならないのは、それはメンバーが学生症候群やパーキンソンの法則を克服した訳ではないことです。

最終的には、メンバー自身が自分の傾向を認識し、自分の力で克服するだけのスキルを身につける必要があります。つまり、メンバー自身に傾向があることを認識させ、克服するための取り組みをしてもらいながら、プロジェクトの中の統制も意識していく必要があるのです。

■ おわりに


今回は、パーキンソンの法則と学生症候群という二つの側面から、成長やプロジェクト管理について書きました。知識として、この2つの傾向を知っているかどうかで、様々な応用が効くと思います。

しかし、「ドラッカーさんに教わった IT技術者が変わる50の習慣」の中でも取り上げているように、これはピーター・ドラッカーが言っている生産性向上策でも十分に克服できます。つまり、仕事を小さな単位に分解し組み立て直す習慣をつけ、フィードバック分析をすることが、一番の近道なのかもしれません。
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