OSS技術者育成日記

デージーネットでオープンソース技術者を育成する時に私が考えたこと、大切にしていることを書いていきます。

不安とチャレンジ

2017-03-11 09:56:54 | 社会人として
久しぶりの投稿になります。今回は、2017年3月1日に社長トークとしてデージーネット社内に対して話した内容をまとめてみました。
最近、社員の日報に「◯◯の作業が不安だ」というようなことが書かれているのをよく見かけます。また、リーダーからも、「不安だからやりたくない」と言っている部下に、どう接するべきかという相談が寄せられます。そんなこともあり、社員に「不安」という感情について話をしてみました。

■ チャレンジの必要性
デージーネットでは、若手の社員にも積極的に仕事を任せていくことにしています。

以前は、ある程度の技術を身につけるまでは、顧客とのメールのやりとりもさせていませんでした。顧客先へのシステムの設置なども、先輩技術者がほとんどを実施していました。そのため、若手は会社で待っているというような仕事が多かったと思います。

しかし、ここ数年は、若手にも積極的に顧客対応の業務を与えています。もちろん、仕事の重要度や緊急度によって、できる仕事とできないものがあります。しかし、技術的に未熟でも、顧客とのメールのやり取りができるような業務や、顧客先での作業ができる業務もあります。そうした業務は、多少効率は悪くても、積極的に若手に任せるようにしています。というのは、チャレンジしなければ人は成長しないからです。

ただ、チャレンジをすることを恐れる人が非常に多いのが残念です。おそらく、「失敗したら叱られるかもしれない」とか、「失敗したら格好悪い」と思っているのだと思います。しかし、何かを身につけるには、失敗を避けて通ることはできません。

例えば、はじめて自転車に乗ったときのことを思い出してみてください。周囲の友達や両親が自転車に乗っているのを見れば、自転車に乗るのがどういうことかのイメージは付きます。それほど難しそうには見えないでしょう。しかし、実際にやってみても、直ぐには乗れるようになりません。何度も何度も転んで、繰り返しやっているうちに、バランスの取り方やペダルの漕ぎ方などを徐々に身につけて行って、乗れるようになるのです。

■ やめたら、その時が失敗
何か技術やスキルを身につける時、私たちは自転車に初めて乗ったときと同じ道をたどります。初めから上手くできる人なんて、ほとんどいません。何度も失敗して、繰り返し挑戦する中で身につけていくのです。ですから、失敗が格好悪い何て思っていたら、いつまで経っても、技術もスキルも身につきません。

自転車の乗り方を覚えるときもそうだったように、できるまでやらなければ成功することはできません。本当の失敗は、途中で止めてしまうことです。つまり、成功するまでやり続けることが必要なのです。論語には、「過ちて改めざる、これを過ちと謂う」とあります。失敗を生かすことができなかったら、それを失敗というのです。

■ 不安という心理
チャレンジをすれば、不安とは常に隣り合わせです。例えば、お客様の重要なデータを扱うときとか、運用中のサーバの設定を変更するときなど、私たちは「本当にこれをやって大丈夫か?」と不安になることがあります。また、難しい仕事をしていれば、仕事が終わらなくて毎日毎日残業をすることもあるでしょう。本当に終われるのか不安になるかもしれません。お客様のところへ説明にいかなければいけないときにも、上手く話ができるか不安に感じることもあります。会社の将来性や、社会の先行きなど、心配なことを数え上げればきりがありません。

私たちは、不安に感じたことがあったときに、その感情に正しく対処する必要があるのです。

最近、私が読んだ「スタンフォードの心理学講義 人生がうまくいくシンプルなルール(ケリー・マクゴニガル)」の中には、おもしろいことが書いてありました。「不安が、成功へ導くエネルギーである」ということです。この書籍によれば、最近の行動研究では、不安は、目の前の脅威に対して、私たちの体が全力で頑張る時であることを認知して教えてくれているサインだということです。

例えば、実際に不安になったときに、自分にどんな変化が起こるかを考えてみるとよく分かります。デージーネットの社員に聞いてみたところ、「イライラする」「ドキドキする」「寝れなくなる」などということが多いようです。ちなみに、以前の私も同じでした。例えば、社員が大失敗をして、お客様のところに謝りにいかなければならないようなことが、ごく稀にあります。こうしたとき、私は「お客様にどう話をしよう」「怒っているお客様に、どう説明しよう」と考えます。少し先のことですが、やはり不安を感じるのです。不安になると、このことは頭から離れません。夜寝るときになっても、ずっと考えています。すると、ドキドキしてなかなか眠ることができません。このように、不安なことがあると、イライラしたり、寝れなくなってしまったりしてしまうのです。これは、体が興奮してしまっているからということなのです。

何の明かりもない暗い夜の山道を一人で歩いているときのことを想像してみましょう。最初は、それほど不安に感じていなくても、風で木がざわざわと揺れる音にビクッとすることもあるでしょう。暗がりから、何か動物が出てくるかもしれません。遠くからは、獣の鳴き声が聞こえてきます。こういう状況になると、きっと「不安」という心理が芽生えるでしょう。そして、私たちの体は何かあったときに素早く反応ができるように準備をするのです。脳からはアドレナリンが分泌されます。そのため、心拍数も高まり、ドキドキします。筋肉は、素早く行動できるように緊張するでしょう。

■ 不安と行動
このように、不安や緊張は、自分自身を危険から守るために自動的に働く心理的かつ肉体的な反応なのです。「心臓に毛が生えた人」などと言いますが、不安を感じない人や緊張しない人というのはいないはずです。誰もが不安や緊張と戦っているのです。

ただ、この不安という感情のコントロール法は、人によって違います。それが、決定的な差になるのです。例えば、金メダルを取るようなアスリートは、こうした不安や緊張を上手く生かして成果を出す力にしています。一方、自分があがり症だと思っている人は、不安や緊張から逃げようとします。そして、逃げなければいけない状態は、心に大きな負担を掛けます。これがストレスの原因になるのです。

SEの仕事の上ではどうでしょうか?
デージーネットの経験値の高い技術者に聞くと、不安を感じたときには事前の準備や調査、練習、テストなど、自信を持って取り組むための努力をしていることが分かりました。不安は、準備、調査、練習、テストなどを行なうためのエネルギーになっているのです。また、彼らは、冷静に対処した方が成功率が高いことを知っています。このように、高度な技術者でも不安を感じないわけではなく、自分から積極的に不安を取り除くための努力をしているのです。

もう一つ重要なことがあります。「人生がうまくいくシンプルなルール」によると、不安という感情と、ワクワクする感情は、実は同じ現象だということです。つまり、私たちは、沸き起こってくる感情をポジティブにとらえられた時に「ワクワクする」と表現し、ネガティブにとらえたときに「不安だ」と表現するのです。つまり、心の持ち方で不安と感じるのか、「ワクワク」と感じるのかが決まるのです。

■ 不安と仕事の適正
実は、不安が成功に導くエネルギーだと言うことは、とても大切なことです。つまり、不安を感じる人の方がエネルギーを持って働けるということなのです。このことは、仕事の適正とも深く関っています。
例えば、高度な技術者に、あまり難しくない仕事を任せたとします。彼は、何も不安を感じず、特に準備も何もなく仕事を実行するでしょう。しかし、これは油断かもしれません。

私の経験上、仕事は少し緊張感を持って取り組んだ方が上手くいきます。力量ギリギリか、少し高めの仕事をしているときの方が、きちんと準備や確認に取り組み、丁寧に仕事をするためです。そして、成功した時には、達成感も感じられるはずです。

そのため、私は高度な技術者に簡単な仕事を任せてはいけないと考えています。そうした仕事は、まだ経験の浅い技術者が、ドキドキしながらやるのにちょうど良い仕事なのです。だから、デージーネットでは若手社員に、どんどん仕事を任せるような体制になっています。

■ 不安への対処方法
チャレンジが必要だということが心の中で分かってはいても、心理的には葛藤があります。そうした葛藤の中で、一番やってはいけないのは不安から逃げようとすることです。不安から逃げるというのは、その仕事を誰かに押し付けたり、先延ばししたりということです。中には、会社を辞めてしまうという選択肢すらあるかもしれません。しかし、不安から逃れようとすると、それは大きな心理的なストレスとなります。
例えば、先ほどの暗闇を歩いている時の例を考えてみてください。多少の不安があっても、努力をして踏みとどまっているうちは、ドキドキしながらも何とか心を平静に保つことができます。しかし、逃げようと考えると、不安は恐怖に変わります。そして、その場に踏みとどまることはできなくなってしまいます。アドレナリンを分泌して準備をしていた体も反応し、さらに多くのアドレナリンを分泌します。おそらく冷静さを失い、必死になって逃げることになるでしょう。この時、心にも大きなストレスが掛かるのは想像に難しくありません。
人間の体は、ある意味ではとても不便です。こうした現実的な脅威がなくても、体は同じように反応してしまいます。仕事の場合でも同じように反応してしまうのです。逃げることを検討しはじめた途端に、不安は心の大きなストレスとなってしまうのです。

そのため、逃げる以外の選択肢を考える必要があります。暗い夜道であれば、明かりを灯すとか、何か別の方法を考えるのです。仕事の場合であれば、協力者を探したり、準備したり、調査したり、練習したり、テストしたりというになるでしょう。

また、我慢強い人は不安な感情を放置します。しかし、実は、これもあまり良いことではありません。不安を我慢するのは、体が教えてくれるサインを無視するということです。不安な感情があると、たとえが万していても、脳はアドレナリンを分泌してしまいます。アドレナリンは、瞬時に行動を起こすことができる強いホルモンです。このホルモンを長く持ちつづけることも、心のストレスになってしまうのです。

なお、誰かが「不安」だと相談に来たら、その気持ちを聞いてあげてください。「そんなの大丈夫だよ」と謂いたくなるかもしれませんが、不安な気持ちは我慢してはダメですから、否定しないで、受け入れてあげてくダサい。そして、その不安を減らすために何をしたら良いのかを、一緒に考えましょう。誰かが一緒に考えてくれて、この先にやることが決まると、不思議と不安な気持ちは薄らいでいくものです。そして、最後に不安でもチャレンジしようとしている相手の背中を押してあげましょう。

■ 不安な気持ちを切り替える
不安に対する対処方法を決めたら、もう体からのサインを受け取ったのですから、いつまでも不安を抱えていても仕方ありません。そのため、ここからは気持ちを切り替える必要があります。気持ちを切り替える方法は、人によってそれぞれです。音楽を聞いたり、趣味に没頭したりという方法も良いかもしれません。会社の同僚と、仕事とは関係ない話をしたり、テレビのお笑い系の番組を見るのも良いでしょう。
ですが、どうやったら切り替わるか分からない人には、運動やスポーツをお勧めしています。スポーツに一生懸命に取り組んでいると、徐々に頭の中のネガティブな感情が薄れていくからです。

■ マインドフルネス
こうした感情の問題で悩んでいるのはIT技術者だけではありません。いわゆるホワイトカラーの仕事に取り組んでいる人は、少なからず同じ問題を抱えています。そのため、アメリカのビジネス界では、マインドフルネスが流行しています。
マインドフルネスは、簡単に言えば、日本の座禅のようなものです。座禅では「心を無にする」と言いますが、マインドフルネスは様々な考えを断ち切って、現在の自分の状態に集中するための技術です。呼吸のマインドフルネスと呼ばれているのは、次のような段取りで行ないます。

・楽なあぐらの姿勢になります。椅子に座って、胸の前で手を合わせても構いません。
・腹式呼吸をします。腹式呼吸では、息を吸ったらお腹がふくらみ、吐いたらお腹が凹みます。
・呼吸を徐々に深く長くします。
・目を閉じて、自分の呼吸に気持ちを集中します。そのまま、数分、その状態を持続します。
・心の中には、いろいろな感情や考えが浮かび上がって来ます。それに気づいたら、もう一度呼吸に気持ちを集中しなおします。

マインドフルネスは、難しいことではありません。何をしているかと言うと、感情や考えを断ち切って、今の自分の呼吸に集中する練習をしているのです。これを毎日、5分〜10分くらい続けることで、徐々に心の切り替えが上手くできるようになると言われています。

なお、私は毎朝、ヨガをやっています。ヨガでは、マインドフルネスと同じように呼吸がとても重要です。そして、同時にゆるやかなポーズを取ります。ゆるやかですが、少しきついポーズです。私は、このポーズがあった方が、呼吸だけでなく動作にも集中できるため、心の切り替えがしやすいと思っています。ヨガを終わると、気持ちはすっきりしています。もし、不安な気持ちを立ちきれず悩んでいる人があれば、是非ヨガをやってみてください。



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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2018-01-22 02:31:53
とてもためになります。
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