文芸社のコンクールに応募した小説を掲載致します。
この小説は現代に蘇った坂本龍馬が日本のみならず地球規模で改革を行うという壮大なスケールの物語です。
ぜひぜひご覧下さい。
「日本をいま一度せんたく申候」
幕末の英雄、坂本龍馬は今天国にいた。天国で地上の様子を見なが ら、嘆いていました。
自分が生命を懸けて成し遂げた日本、その日本がおかしくなっている。どうにかしたいと思い、神様に、地上に帰りたいと訴えていた
。神様もあまりの熱心さに負け、ある条件を付けて龍馬を地上に送ることにした。その条件とは…。「1年後、地上に降りたその場所に同じ時刻に戻ること、もし戻れない場合は龍馬の体は永遠に消えてしまう事。また、地上における体も死んでしまう事。」だった。このことを胸に刻み、龍馬は再び地上に帰る事になった。さて、その顛末はいかがあいなりましょうや?
さて、所変わって、こちらは地上、
時は2011年11月15日、日本の京都のとある一角に世界中から、多くの著名人が集まった。マスコミも集まり、その様子は全世界へ中継された。実は、日本で最初の壮大なテーマパークが誕生したのだった。そのセレモニーに日本の首相や世界の要人が駆けつけてきたのだった。そのテーマパークの名前はズバリ「ジャパン・ヒストリー・パーク」
日本の歴史をバーチャル空間で体感できるという世界でも画期的なテーマパークである。
その中継を羨望のまなこで見つめている一人の少年がいた。名を「坂本竜馬」という。
父が坂本龍馬の大ファンで同じ坂本姓であったため、その子に「竜馬」と名付けた。あの有名な小説「竜馬が行く」にちなんだものである。その竜馬少年はテレビの画面をくいいるように見ていた。あそこに行ってみたい。しかし、その入場料はとても高く、とても少年のこずかいではいけそうにない。そこである計画を考えた。夜中にこっそりと忍び込んで見ようというのである。その為に、あらゆる情報を集め、研究し、周到な計画を考えた。そして、いよいよそれを実行する日がやって
きた。計画によると、その日は警備も手薄で子供が侵入するにはちょうどよかった。しかも背が低い子供には、センサーが働かないようにシステムに入り込み設定をした上での計画だった。ところが、その日、計画にはなかった予想もしない事態が起こったのである。
雷がこの施設を直撃したのである。そして、一人の警備員が生命を落とすのである。しかもその警備員にはある魂が乗り移ったのである。坂本龍馬の霊である。しかし、その異変を知る由もないこの少年は以前から準備していた計画を実行した。夜中に家を出て、誰にも気付かれないように侵入した。しかしその瞬間大きな雷が落ち、思わず少年はその場に気を失ってしまった。気がつくと一人の警備員の顔があった。思わず少年は驚き、計画がばれてしまった事を悟り、ただただ謝った。実はその警備員は神様から1年間だけ地上に帰ることを許された坂本龍馬その人だった。
竜馬少年には、その言葉使いからすぐにその
目の前にいる人物が龍馬だということが直感でわかった。そこで、少年は龍馬を家に連れて帰った。翌朝、その警備員が行方不明になったことがテレビで流れていた。少年は父にそのすべての事情を話し、そこから坂本親子と龍馬による「平成の日本せんたく計画」が実行されるのである。この計画は1年間で成し遂げなければならない為、実に綿密な計画が練られ、その実現には多くの困難が待ち受けていた。3日間に及んだその議論は龍馬が
幕末に提唱した「船中八策」を凌駕する
壮大なもので地球丸「せんたく八策」と名付けられた。
そして、その翌日から、その作戦は実行された。まずは父のつてから、「ジャパン・ヒストリー・パーク」に就職をする。そこで何よりも幕末の事を知っている龍馬は説明員となり、そのカリスマでたちまち大人気となり
マスコミでも大きく取り上げられ、昨年の大河ドラマ「龍馬伝」のブームが再燃した。その後、政界にも、つてのある坂本の父により、
政界でも彼の存在は注目され、やがて、民主党の代表選挙を控えたこの時期の旗頭として担ぎ上げられ、当時腐敗した政権党の中でクリーンなイメージを前面に出し、反対派による工作が効を奏し、民主党の代表として、日本のトップに這い上がる事になった。しかし、あくまで広告塔としての役割はここまでで、すべてが改革派の手に委ねられ、何一つ自分のあたためてきた政策を実現することができない。龍馬はあせりを感じていた。約束の1年には、もう3ヶ月しか残っていない。このままでは何も成し遂げることなく終わってしまう。何とかしなければという思いばかりで一向にこの現実を変えることができない。思い悩む龍馬はある秘策を実現しようとする。
それは、一度天国に帰り師匠の勝海舟に相談することでした。しかし、それをするのは大きなリスクがありました。もう二度と同じ体には戻れないということです。もう一つ自分自身の霊の体もなくなってしまうかもしれません。龍馬はもう一度生命を懸けることにしました。その決意で師匠である、勝海舟に会おうとしました。しかし、その勝海舟はどこにもいません。天国のありとあらゆる場所を探しましたが見つかりません。実は神様が安易に解決策を見つけようとする龍馬に試練を与えたのでした。しかし、決して龍馬を見捨てるような神様ではありませんでした。龍馬が呆然としてどこともなくさまよっている時に、龍馬の心の中に語りかけられました。「龍馬よ!生命を懸けて前首相に会いなさいい。」しかし、龍馬にはどうやって体のない自分が会うことができるのかわかりませんでした。でも、時間がありません。とにもかくにも前首相に会いに行くことになりました。もちろん体がないわけですから、話すこともできません。それでも龍馬は生命懸けで談判しました。何度も何度も語りかけました。それは数十日の間、必死に語りかけました。すると、ある日のことです。龍馬の心の中に前首相の声が聞こえてきました。龍馬の生命懸けの思いが前首相に通じたのです。ある意味前首相が最も日本の事を心配していたのでした。しかし、周囲にその事が理解されず、また、衆議院総選挙での敗北を受け責任を取って自ら、辞職したのでした。前首相も腹を決めました。姿も見えないこの若者の熱意に答え再び日本の再建をかけて立ち上がることを決意したのでした。龍馬の思いと前首相の思いが一つになった瞬間でした。前首相は龍馬に語りかけました。「わかりました。私と一緒にやりましょう。」それ以後、龍馬は前首相と一体となり改革を始めることになりました。龍馬は、
持ち前の話術で多くの議員をとりこみ、又、全国民にもテレビを通して語りかけ、決して国民に不利になる政策はしないことを誓い、国民の賛同を得て、首相に膨大な権限が与えられる「大統領法案」を可決させました。そして、やつぎばやに龍馬の「せんたく八策」を実行しました。そして、龍馬が目指す「全国民が笑顔で生きる社会」
を実現しようとします。
その中でもっとも国民に支持された政策の一つに、
ジャパン・カンパニー
というものがあります。これは普通の会社ではなく、ITを駆使し国民の意見をもとに経済を活性化し、海外へも進出して、外貨を稼ぎ、その利益は国民に還元するという画期的なものでした。そのために、前首相は全財産を投入しました。また、国民の中から多くの人材を発掘して、カンパニーの要職に就けました。のみならず就職できない若者や主婦などありとあらゆる人材を起用し、失業者はほとんどなくなりました。以後日本は大きく変貌し、財政赤字を解消し一気に黒字に転換、数十年後には龍馬が目指す
全国民が笑顔で生きる社会
が実現します。
さて、龍馬はというと、神様と約束した1年を過ぎても地上にとどまり、地上にあった時に願っていた世界の海援隊
に向かって動き出しました。まず向かったのは、どうしても行きたかった、アメリカでした。しかし、そのアメリカは龍馬が生きていた時のアメリカとは違い、病んでいました。そこでも、大統領と協力して改革を断行し、
見事にアメリカを蘇らせます。さらには全世界を改革して廻ることになります。それは、地球丸全体の人々が笑顔で生きる社会
を目指し終わりのない闘いへの船出を意味しました。そしてやがて、世界は戦争・紛争・犯罪のない世界、争いあう国のない世界、まさに龍馬が願った理想の世界へと変貌を遂げていくことになります。しかし、そこに、あの幕末の英雄、坂本龍馬がいたことは、神様意外だれも知る人はありませんでした。
完