プレイボール前のシートノックでは、全員が少し浮き足立ってると感じたのは父だけではない。
1回戦第一試合、四国野球の聖地:坊ちゃんBIGスタジアム やはり魔物が潜んでいるのか・・・?
試合前の応援団のエールの交換が、青春をとうに過ぎた球児の父の不安を洗い流してくれた。
先行:南が1点とったらその裏相手が1点取り返す、そんなシーソーゲームはスタンド全体が息を呑む。
自分が歩いてきた人生を振り返って ” たられば ” を考える事自体無意味だと知る父も心が痛んだ。
9回表で4-3のリード 野球を知る者なら、ゲームセットまでは息を抜けない、まして後責めが相手。
2死満塁 ゲームの結果を知る女神は、未だその債をどちらに投げるか決めかねているのか・・?
まるで、スタンドで見守る球児の父の昨日の善行を今も天秤で量っているかのようだ。
マウンドに集まる球児、スタンドの父は心で叫ぶ、 『 息子よ、仲間を信じろ! 』
小学校4年生のスポーツ少年団から続けてきた次男の
ボールゲームは、ひとまず今日終止符を打った。
それは単に球児の夏の終焉ではない。我々家族全員の歴史そのものだった。
相手高校の勝利の校歌を聞きながら、息子は何を思ったのだろうか?
スタンドの応援団の最前列で私はその答えが判ったような気がした。
整列したチームの真中で自高の校歌を大声で歌う息子は、既に明日の未来を見つめていた。
その息子の姿は、とれも晴れやかでとても眩しかった。そして私は、その姿を心から誇らしく思った。