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支流からの眺め

那須朝日岳での遭難

 10月6日に那須連峰の朝日岳近くで遭難があり、4名(60代男性2名、70代女性2名)が亡くなった。那須連峰は三本槍岳(1917m)を最高峰とし、南に向って朝日岳(1896m)、茶臼岳(1915m)と連なる山塊である。ロープーウエイを使えば、茶臼岳まで小1時間、朝日岳まで1.5時間で行ける。天気が良ければ子供連れでも問題ない。そこで4名も亡くなるとは・・。(サムネイルの右の鋭鋒が朝日岳)

 4名は1名と3名の2組らしい。正確な行程は分からないが、単独の男性は大阪から来て前日は三斗小屋温泉に宿泊し、当日は大峠から三本槍を経由して峠の茶屋駐車場を目指していたようである。他の3名は栃木県の方々で、峠の茶屋駐車場から朝日岳を往復する予定だったのだろう。行程としては、共に一般向けである(ということは、軽装備だったのだろう)。

 那須岳は太平洋側の山で標高も2000m以下だが、日本海との間にある山が比較的低く北西風が直に当たる。稜線にも植物はほとんど生えない。当日は今季初めての冬型の気圧配置であり、遭難発生時(お昼頃)の現場は気温0度、体感温度はー20度以下で、強風で身動きもできない状態だったろう。向かった救助隊も、峰の茶屋跡(1720m)付近まで到達したが暴風で引き返したという。

 この季節の山は怖い。自らも似た経験がある。数年前の今頃八甲田山に行った時のことである。下界は曇天でそう寒くもなく、簡単な夏山ハイキングスタイルでロープーウエイに乗った。しかし頂上駅を降りると、なんと小雪が舞っているではないか。外輪山の赤倉岳を目指して登り始めると風雪は激しくなり、稜線に出ると凄まじい勢いで西(左)から雪が殴りつけてきた。

 雨具がはち切れそうな音を立てる。手で帽子を抑えて顔を守るが、手と雨具に雪がはりついて氷となる。火山口の辺縁を風に抗いながら歩くが、吹き飛ばされればそれまでだ。30分ほどで避難小屋に着いた時には、その有難さをしみじみ感じた。しばらくして風雪は少し収まり、頂上に行くことはできた。下山路は稜線を歩く気にならず、巻き道の宮様ルート(結構歩きづらい)で戻った。

 そういえば、那須岳では2017年3月に高校生の雪崩事故があった。疎な樹林帯の尾根筋でラッセルの練習を行っていた時である。前日の夜に約30センチ積雪があり、その新雪が崩れたのであろう。8名(生徒7名、教員1名)が亡くなり、40名が負傷した。訓練場所の選定、雪崩発生の予知、発生時の危機対応、指導体制などが問題となったが、どのように総括されたのだろうか・・。

 初秋は寒さに体が慣れていない。雨と風には特に警戒が必要である。装備や服装はどうだったのか、天気予報をよく見たのか、助言する者はいなかったのか、確認したい事項はあるが、まずは遭難自体を教訓としたい(合掌)。なお、3名の遭難現場からは峰の茶屋跡の避難小屋まで15分程度であろう。それでも遭難が起こるのである。朝日岳にも避難小屋を設置することは一考に値する。

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