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古代の爬虫類・両生類についてのあれこれ

スクレロケファルスの同定(2)

2017-07-18 19:57:46 | 両生類

さて,前回はスクレロケファルスという両生類の属内の分類について簡単にまとめたわけである。

ざっくり言うと,「スクレロケファルス」という属自体が有効なのか微妙であるものの,現状としてドイツ産のスクレロケファルス属は暫定的に4種に分けられているという話だった。

(詳しくは前回記事を読んでほしい。むしろ前回記事と合わせて読むことを推奨します。)


今回は,これを生かして,自分の写真フォルダにあるSclerocephalus sp.を同定してみるという遊び(?)をやってみたいと思う。

 

では,さっそく「ダイノワールド2015 ヨコハマ恐竜博」にいたこの子から行ってみよう。

よく見ると(よく見なくても)群馬の個体と同じように後頭部の縁がへこんでいるではないか!

頭骨の縫合線とかが見えないので,細かいところはよくわからないが,頭骨の概形などの特徴もSclerocephalus hauseriのそれらと矛盾していないように見える。

これらのことから,この子はSclerocephalus hauseriだと考えられる。

(あくまで自分の個人的な意見ではあるが)

 

続いては上野の国立科学博物館の「生命大躍進展」にいたこの子。

(たぶん普段は科博の筑波研究施設にいる子だと思う)

この子は明らかに1 mより大きいので,おそらくSclerocephalus hauseriかSclerocephalus nobiliのどっちかであろうということが推測できる。

群馬のhauseri君と比べると頭骨後縁のへこみはだいぶ控えめな印象を受ける。

さらに眼窩も小さく,左右の眼窩同士の間隔も広め(ヨコハマの子と比べると一目瞭然!)であり,これらの特徴を考えると,この子はSclerocephalus nobiliに属するようだ

 

本当の本当にちゃんとした種を決めるためには,産出した層準がわからないといけないので,この「同定」はあくまでも暫定的なものである。

しかし,見るポイントがわかると標本を見る楽しさというのは増すと思うので,皆さんも身近で"Sclerocephalus sp."を見かけたら,こんな感じで同定を試みてみると面白いのではないでしょうか。

 

参考文献

(1)  RAINER R. SCHOCH and FLORIAN WITZMANN (2009) “Osteology and relationships of the temnospondyl genus Sclerocephalus”, Zoological Journal of the Linnean Society, 2009, 157, 135–168

(2)  Jozef Klembara and J. Sébastien Steyer (2012) “A New Species of Sclerocephalus (Temnospondyli: Stereospondylomorpha) from the Early Permian of the Boskovice Basin (Czech Republic)”, Journal of Paleontology, 86(2):302-310.

(3)  ジェニファ・クラック・著 松井孝典・監修 真鍋真・校定 池田比佐子・訳 (2000)「手足を持った魚たち」講談社現代新書

 

 



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