最も有名な翼竜の一つであるプテラノドン。後期白亜紀には翼竜は鳥類に押され気味で、このような大きなサイズの
ものしか繫栄できなかったという説もあるが果たして・・・?
(大阪市立自然史博物館にて撮影)
中生代の空を支配した翼竜。
その不思議な姿は多くの人を魅了してやまない。
そして、「彼らがなぜ絶滅したのか?」という話もまた、たまらなく魅力的なテーマである。
この問いに対して昔から言われてきた"回答"の一つが、中生代の中頃に出てきた新しいタイプの飛行動物である鳥に翼竜が
取って代わられたというものだ。
なるほど、「新しいタイプのものが古いタイプのものに取って代わる」というのは人間の歴史でもよくあることだし、
分かりやすい考え方ではある。
だが、事実はそこまで単純ではないのかもしれない。
近年この見方に疑問を呈するような面白い研究成果がいくつか発表されており、ここではその中から特に私が興味深いと
思った2件を紹介させていただく。
(1) 中生代の最後まで翼竜の多様性は下がらなかった
ネタ元:Longrich NR, Martill DM, Andres B (2018) Late Maastrichtian pterosaurs from North Africa and
mass extinction of Pterosauria at the Cretaceous-Paleogene boundary. PLoS Biol 16(3): e2001663.
https://doi.org/10.1371/journal.pbio.2001663
これまで白亜紀の最後の時代であるマーストリヒチアンの後半の地層からは、比較的身体の大きなアズダルコ科の翼竜
(ケツァルコアトルスの仲間)の化石しか見つかっていなかった。
これは鳥などとの競合に負けて翼竜の多様性が白亜紀末の巨大隕石衝突前から下がった結果とも解釈されてきたが、
本当にそうなのだろうか?
ちゃんと調べられていないだけで、実はこの時代の地層にももっといろいろな種類の翼竜が眠っているのではないか?
そこで、モロッコの白亜紀最末期(マーストリヒチアン後期)の地層から産出する化石を少し丁寧に調べてみました
というのが、この研究なのである。
結果、驚くべきことに当時この場所に下記のような3科7種もの翼竜がいたことが明らかとなった。
プテラノドン科
・Tethydraco regalis(新属新種)
ニクトサウルス科
・Alcione elainus(新属新種)
・Simurghia robusta(新属新種)
・Barbaridactylus grandis(新属新種)
アズダルコ科
・Phosphatodraco mauritanicus
・ケツァルコアトルス属の1種(?)
・属種不詳のアズダルコ科翼竜
翼竜は鳥との競合に負けて少しずつ衰退していったわけではなく、彼らの絶滅は巨大隕石衝突事件によって急激に起こり、
その後の新生代になって現生種につながるような新しいタイプの鳥類の多様化が起きた。
この研究の結果はそんなシナリオを支持しているように見える。
(後編に続く)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます