マイナンバーが必要な理由、目的も理解できます。しかし、この理由、目的、注意等に沿って考えると、医療保険証の新規発行を停止し、マイナンバーカードと一体化していくことが妥当な方法でしょうか。
「一般財団法人「情報システム学会」の元常務理事八木晃二さんは「マイナ保険証は危険すぎる」「デジタル先進国で、1枚のカードに保険証機能、運転免許証機能、本人確認証明などの機能を追加し、国民に持たせている国はない」八木さんは全ての機能にアクセスを可能とするマイナカードと4桁の暗証番号を「実印」に例えて訴える。「どこにでも実印を持ち歩きますか?実印を他人に預けますか」こうした状況から身分証明書、行政システムへのアクセス、保険証としての機能は一枚のカードに入れ込まずに分けるべきだと説明する。」(令和6年11月28日付毎日新聞朝刊)
「実印」を日常的に持ち歩く人はいないでしょう。保険証はそういうわけには行けません。年に1回行くか行かないかという若い人ならともかく、高齢者の場合、保険証を頻繁に持ち歩くでしょう。そして、私も含めて高齢者は紛失しやすく、盗難に遭いやすく、詐欺被害に遭いやすいのです。このことは患者さん個人の問題にとどまらず、マイナンバー制度そのものへの信頼性を損ない、情報セキュリテイの穴を作りやすく、サイバー犯罪、サイバー攻撃の的になりやすいと思うのです。
使いやすさと情報セキュリテイの観点からも医療保険証を単独で電子化し、マイナンバーと紐付けることが望ましいと考えます。仮に紛失や盗難にあっても、医療保険の保険者番号・被保険者番号の秘匿性はマイナンバーより低く保険医療機関等とセットでなければ診療報酬の請求はできません。また、専用端末を使用することにより、どこからアクセスしたが記録されるでしょう。
もちろん問題点があります。かえって手続きが煩雑となる。健康保険証の発行コストが余分にかかる。しかし、住所変更した時には、市町村の窓口でマイナンバーを用いて変更する。健康保険の資格の得喪、変更は職場を通じて、あるいは市町村の窓口でマイナンバーを用いて変更する。すでに行われていることです。マイナンバーはその時に記載すればいいことです。問題はICチップを組み込んだ保険証の発行コストだと思います。1枚あたりどのくらいかかるかです。現行のマイナカードの再発行手数料は電子証明書込みで1000円です。紙やプラスチックの保険証に比べれば高くつくかもしれませんが、マイナポイントの大判振る舞いに比べれば、本来の目的に合うと思います
今後、健康保険証に限らず、運転免許証・身分証明書への活用・パスポートへの紐づけなどマイナンバーカードの機能拡大が想定されます。その方法或いは設計についてもう一度見直してもよいのではないでしょうか。基礎年金番号、住民基基本台帳カードの二の舞にならぬように、もう一度立ち止まって考えてもいいのはないでしょうか