ありとあらゆる欠点の列挙をたまわり、頭がまっしろになった。がっくりと力が抜ける。解剖図を突きつけられては、反論のしようもない。思えば、そのとおりなのだ。器の内側は、まさにオレの腹の中身だった。かくし通せるだろう、という見くびり。ごまかせるだろう、というあなどり。目に見えるうわべを整え、器の本当に必要な部分をおろそかにしていたのだ。それを見透かされ、顔から火がでそうだった。作品を破壊されたショックはもうない。それよりも、なまけ癖のついたこの寝ボケまなこをひらかせてくれたことに感謝するべきだろう。
「というわけで、もいっこつくってみてね。いかな~」
先生はさっさと教卓へとかえっていった。コマは振り出しにもどった。クラスで最初にすごろくのアガリをせしめたと思ったのは、幻想だった。一からやり直しだ。いや、一以前の、根本的なところからの出直しだ。
考えてみれば「振り出しにもどる」はあたりまえのことかもしれない。ひとつの製品の完成はゴールなどではなく、1マスなのだ。こうして1マス1マス、オレたちは自分を進めていくしかない。そして卒業時の技術の完成度こそがゴールであり、自分自身こそが作品となるのだ。オレはもう二度と心得ちがいはすまいと、この失敗を心に焼きつけた。
即座に二個めの花びんを積み上げにかかる。スピードには自信がある。だれよりもたくさんつくればいい。と同時に、クオリティを上げていく。だれにも文句を言わせないほどの出来映えに仕上げることこそが重要だ。
三個、五個、十個・・・時間の許すかぎりに手を動かしつづけた。そして完成したらすぐに、厚みの均一さと土ひもの接着部を確認するため、たてにまっぷたつに割く。断裁した製品は、惜しむヒマもなく廃棄する(捨てるわけではない。すべてのできそこない製品はつぶして粘土にもどされ、もう一度製品となって輪廻していく)。制作サイクルはますます早くなっていった。割かれた花びんは、たちまち山のように積み上がった。しかしそんなものには目もくれず、再びまっさらな粘土を図面通りに正確にのばし、完成させては割き、またつくる、割く、つくる、割く、つくる・・・。割くためにつくりつづけ、つくるために割きつづける。製造科訓練生は何日間も、そのくり返しに明け暮れた。
東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園
「というわけで、もいっこつくってみてね。いかな~」
先生はさっさと教卓へとかえっていった。コマは振り出しにもどった。クラスで最初にすごろくのアガリをせしめたと思ったのは、幻想だった。一からやり直しだ。いや、一以前の、根本的なところからの出直しだ。
考えてみれば「振り出しにもどる」はあたりまえのことかもしれない。ひとつの製品の完成はゴールなどではなく、1マスなのだ。こうして1マス1マス、オレたちは自分を進めていくしかない。そして卒業時の技術の完成度こそがゴールであり、自分自身こそが作品となるのだ。オレはもう二度と心得ちがいはすまいと、この失敗を心に焼きつけた。
即座に二個めの花びんを積み上げにかかる。スピードには自信がある。だれよりもたくさんつくればいい。と同時に、クオリティを上げていく。だれにも文句を言わせないほどの出来映えに仕上げることこそが重要だ。
三個、五個、十個・・・時間の許すかぎりに手を動かしつづけた。そして完成したらすぐに、厚みの均一さと土ひもの接着部を確認するため、たてにまっぷたつに割く。断裁した製品は、惜しむヒマもなく廃棄する(捨てるわけではない。すべてのできそこない製品はつぶして粘土にもどされ、もう一度製品となって輪廻していく)。制作サイクルはますます早くなっていった。割かれた花びんは、たちまち山のように積み上がった。しかしそんなものには目もくれず、再びまっさらな粘土を図面通りに正確にのばし、完成させては割き、またつくる、割く、つくる、割く、つくる・・・。割くためにつくりつづけ、つくるために割きつづける。製造科訓練生は何日間も、そのくり返しに明け暮れた。
東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園