道東を発見する旅 第3の人生

人は記憶の集積物、ふるまいは記憶のデータベースに依存する

最近読んだ本から、興味をひいた部分を紹介します:伊東真著「記憶する技術」サンマーク出版

著者は司法試験予備校のカリスマ講師である。テレビで著者が話すのを見たとき、そのソフトな語り口と論理的な話の内容から、きっと精神的に安定している人なのだろうと思った。

司法試験に合格するためには、膨大な量の事柄を覚えて使いこなすことができなければならない。本屋で、この人の記憶術の本を見かけたので、いわゆるハウツー本かなと思いパラパラとめくってみた。確かに全5章のうち4章まではそうだが、最後の章がとても面白かったので購入した。最後の章を紹介します。

本文を引用したいのだけど、長くなるので、要約して説明することにしました。当然、原著のニュアンスとは、だいぶかけ離れてしまっているかもしれません。是非、本屋で実物を手に取ってみて下さい。

回りの評価に引きずられる生き方

著者は周りの評価を気にして、理想の自分を演じる鼻持ちならない人間だった。司法試験の講師になったあとも、学生の評価が気になってしかたなかった。褒められたときはいいのだが、けなされるとひどく落ち込んだ。

そういう評価に引きずられるのが嫌で、また落ちこんだ。そして悩んだ結果、自分は昔の記憶にひきずられすぎている事に気がついた。

忘れられないマイナスの記憶

誰にでも忘れられないマイナスの記憶がある。それをプラスに変えてしまえば人生が変わると思い、マイナスの記憶をどうプラスに変えるかを考えて、その時はマイナスと思っていたことが、実はいまの自分にとってプラスになるのだと、意味の転換をすればいいと思うようになった。

そして時間がかかったが、今は忘れられない記憶がなんだったのか、思い出せなくなったという。

忘れる力が生きる力になる

最近は努めて嫌なことは忘れるようにしている。講師をしていると色んな方面から批判される。一方的な中傷をされた時など、そこから何も学ぶ事が無い場合や自分の不都合なことはどんどん忘れていくことにしている。

どんどん変化するために、どんどん不都合なことは忘れること。それが生きるために不可欠である。

人は記憶の集積物である

ずっと、「考えること」と「記憶すること」とは、車の両輪のように対峙(たいじ)するものであると考えてきた。両方とも同じくらい重要で、互いに補完し合って、人間は発展してきたのだと。だが、そうではなく、人が生きる根底に記憶があり、そこから思考や考えが生み出されていると考えるようになった。ちょうど命の源泉のように、人が知的に生きる大本に記憶があるのだ。

だから記憶をコントロールすることが、人間が知的に、感情豊かに生きるためにきわめて重要なことだとおもう。記憶をどう使うかで、その人の生き方までかわってくるといえるのだ。

記憶のデータベースからふるまいを選択している

あの人は優しい人だという場合、その人なりの記憶の再現のしかたがあり、それを周りが優しいと評価しているだけなのだ。本人にとって、そうふるまうことが一番自然な姿なのだろう。

なりたい自分になる

なりたい自分に変えていくには、自分の人柄をつくる記憶の部分から変えていけばいい。言い換えれば、いい記憶をたくさん蓄えていくことで、いい人間になることができる。

たとえ毎日が変化のない平凡な日常だとしても、その中から意識しているものを選び取り、感じ取って新しい記憶をつくり出し、蓄えていく。

自分が感じたり見たりしたことに、積極的な意味づけを与えていく。そうやっていい記憶だけを残していく。

記憶は変えられるし、未来の自分も変えられる。

感想

記憶術の大家が、内省的に考えて辿り着いた結論が不都合な記憶は消し去る事、そして前向きにいい経験をすることがいい記憶を蓄積するになり、なりたい自分へとなれるので幸せな人生をおくれると結論しています。

自分が特に気に入ったのは、記憶のデータベース次第で、いい人にも悪い人にもなりうるという下りです。いい人になるためには、いい記憶になるような良い経験を蓄積することです。一方、そこで嫌なことやマイナス思考は除去されると言います。

冒頭で、精神的にとても安定しているように見えると書きましたが、常に自然な表情をしておられるので、何か理由があるのだろうと思っていましたが、これが理由だったのかと考えてしまいました。

著者の論理から展開すると、過去のマイナスな記憶を後生大事に抱えながら生きている人は過去に生きている人です。出来るだけ早く、良い経験を蓄積して、マイナスの記憶をプラスに上塗り保存してしまうべきです。

以前、人生は解釈が全てであるということわざを紹介したと思いますが、誰が考えても明らかに自分にとって不利なシチュエーションでさえも、真剣にプラス思考で取り組むと良い記憶につながります。

自分の心のデーターベースを常に新しいものにいれかえてしまうのが人生の極意のようです。
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