道東を発見する旅 第3の人生

医学生の憂鬱

医学生の憂鬱

医学部に入る学生は優秀な人ばかりなので、入学後はあまり勉強しなくてもすんなりと医者になれるものだと考える人は多いだろう。

しかし、実際は予想以上に厳しいハードな勉強を強いられる。それは超難関大学の医学生でも例外ではなく、受験勉強とは異なる能力が要求されるので進級に苦労する人も結構いるのだ。

医師向けの雑誌で、自分が定期的に購読している「医事新報」という雑誌がある。

それに国立OSK大学の教授がエッセイを書いている。

その先生が7月に4回連続で「学生の成績不良」をテーマに自分の意見を述べておられた。

本来は本文を引用するべきなのだが、長くなるので、以下、要点だけを紹介します。

この大学の医学部は偏差値が74だそうだ。学生の8割が中高一貫校の卒業生である。

先生は医学部の3年生(関西では3回生と言う)の教育を担当しておられる。

医学部に入学後の2年間で普通に勉強していれば知識は相当のレベルに達している。それを前提にこの先生の教科では学生に教育し試験する。

エッセイの内容は、今年、学生の定期試験の成績がとても悪くて約半数を不合格にしたところから始まり、あまりの出来の悪さに落胆したとツィートしたところ、多数のリツィートがあったという。

なぜこんなに成績が悪かったのかを調べるために不合格者の半分くらいと面談したそうだ。

面談の結果、合格するためには、自学自習の時間を講義時間(36時間)の2倍、60から80時間かけること、教科書の内容を理解すること、繰り返し教科書に目を通すことの3点が大事だと感じたそうで、それは今更ながらも学問の王道であると書いている。

さて、不合格になる理由で危惧しておられるのが、「本人は真面目に勉強しているのに全く点数につながっていない学生」が相当数いる事である。

彼らには「論理的な文章を書けない」、「パターンを認識して問題を解くことが出来るが、ちょっとひねったら対応できない」、「自分の思い込みから抜け出ることが出来ない」の3つの傾向があるという。

そんな人たちが、どうして難関の入学試験を突破できたのだろうか?

結局、現行の入試では本当に優秀な学生を選抜できていないのではないか、さらに「入試制度がおかしいのでは?」という結論だった。

感想

医学部の定員はだいたい100人前後であるが、優秀な学生の中には発達障害の学生は必ずいる。そんな人は人の気持ちがわからない。エッセイにあるように能力不足の人も間違いなく相当数いる。

もう本人が、このブログを読むことはないので自分の嫁さんの話を書いておく。

嫁さんは国立OSK大学医学部の卒業で入学は2番、卒業は3番だったそうだ。エッセイの著者の3年先輩である。

嫁さんの話では、学生の時、ちょっと勉強すれば問題を見て、まるでプリンターが印字するかのように文章がどんどん出てきたと言っていた。

特に解剖の試験では、まったく基礎知識のないラテン語名を完璧に覚えなければならないので誰もが苦労するのだが、解剖の先生と口論して絶対落とすとか言われたそうで、頑張ってほとんど満点をとったそうだ。

そんなわけで優秀な同級生たちからは常に一目置かれていた。なぜか研修医のときに私立医大の卒業生である自分と仲良くなって現在に至っている。

臨床研修の後、一緒に大学院に行った。自分はそれなりに成果が出たのだが、嫁さんは成果が上がらず苦労していた。

最後は学位をもらったが、研究者としての能力は色々な要素がからんでおり、特に上司との関係がすごく大事なので、それが問題だったようだ。

従って、入学試験や医学部の卒然教育では卓抜した能力を発揮できたが、その後の人生には人間関係の調整力という能力が必要でそれが不足していたのだろう。

話を医学生に戻す。医学生は一握りの恐ろしく優秀な人達とそれ以外の普通の人の集団から構成されているヘテロな集団であることをエッセイは示唆している。

だから医学生の間では、一握りの優秀な人たちの能力に怖れおののきながら、コツコツと努力して卒業までこぎつける人も多いというのが現状だろう。

しかし、我々の頃と今との大きな違いは少子化による子供の絶対数が大きく減少していることがあげられる。

少子化で難関大学の入学生のレベルも下がっているのかもしれない。

最後に、医学生の場合、医師国家試験合格後は医師として、それまでとは全く異なる能力が要求されることになる。

以前は医師免許を貰ったら、それ以上評価されることは無かったと思う。

今は免許を貰ってから2年の新しい研修制度でまた厳しく評価されるのだ。

医者になり、まわりから先生と呼ばれる生活をおくるようになっても、次の2年の研修制度の中で、厳しい勤務に耐えきれずメンタルがおかしくなりドロップアウトする人が出てきているようだ。

研修制度で脱落し終了認定を受けられなければ保険医の資格が得られず保険診療が出来なくなり、医者として診療所や病院で勤務できない事となる。

それでも医師免許さえあれば健康診断の医者とかなら出来るそうだが、医者として働ける範囲が狭まってしまうのだ。

やかましい先生にガミガミ言われながらもようやく卒業できても、国家試験に落ち続ける人、免許をもらっても研修を修了できず働けない人とかが出てくる事を考えると、医学生が憂鬱になってもおかしくない。

自分も20歳くらいからの10年間を振り返ってみると課題を克服しながら目標に向かってコツコツと自己研鑽に励む毎日は辛くて厳しいかった。

だが、眠る時間を削りながらも充実していて死に物狂いで働くのが楽しかったことを想い出す。若かったのでなんでもできたのだろう。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「日記」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事