ヒトへの進化。そしてヒトの限界と可能性。

私たちの体には38億年の歴史が詰まってます。偶然と必然が組み合わさり進化をしてきた我々の祖先の謎とは?

湿地帯の試練と肺の進化(4)

2008年02月29日 | Weblog
肺は海で誕生した

ところで生物の肺はいつ誕生し、われわれも祖先はどのように肺をしんかさせていったのだろうか?実はこの答えを求めるのは非常に難しい。というのも肺の組織は柔らかいため、化石に残りにくいのだ。

かつて肺は魚の浮き袋から進化したものだと考えられていた。かのチャールズ・ダーウィンは鰓呼吸をしていた魚類が浮力調節する器官として浮き袋を進化させ、のちにそれが肺になったと考えた。多くの科学者も100年以上にわたってこの解釈に同意していた。

ところが最近の学説でこれは完全に否定されている。浮き袋が先に進化したのではなく、むしろ肺が先に誕生し、それが浮き袋に姿を変えたという考え方が主流だ。

デボン紀のデルタ地帯で乾期の厳しさに耐えたのは私たちの祖先だけではなかった。同じ頃、条鰭類(じょうきるい)と呼ばれるグループの魚たちも肺呼吸を行い、湿地帯に住み着いていたのだ。実はこの条鰭類こそ、現代の海や川で最も繁栄を遂げている魚たちのグループなのだ。

しかしデボン紀当時はまだ小魚に過ぎず、われわれの祖先よりももっと弱い立場にあった。ところが条鰭類の多くは中生代に再び海に戻って大繁栄を遂げる。このとき不要となった肺を浮き袋に変え、浮力調節をすることで、海中でより効率よく、そして早く動くことが可能になったと考えられている。

その後、条鰭類の中には再度淡水に戻るものもでてきて、その中から再度肺機能を持つものも現れているのだ。

浮き袋のある海水魚はデボン紀に肺を持った淡水魚の子孫なのである。

※参考文献
 NHK地球大進化プロジェクト・地球大進化・日本放送出版協会・2004

湿地帯の試練と肺の進化(3)

2008年02月29日 | Weblog


肺を持った魚の登場

水中が定期的に酸欠に見舞われるアマゾンでは適応の結果、空気呼吸ができる魚が数多く住んでいる。古代魚ピラルクーも肺呼吸に頼っている。定期的に水面に出ては空気を吸っているのだ。このようにアマゾンでは何らかの方法で空気呼吸をする魚が生息している。

中でも私たちに関係が深いのは
肺魚(※写真)と呼ばれる魚だ。肺魚は文字通り「肺」を持った魚だ。鰓も持っているが、呼吸はもっぱら肺に頼っているため水中にいたままだと溺れ死んでしまう。

肺魚は肉鰭類(にくきるい)と呼ばれるグループに属している。彼らはデボン紀にカレドニア山脈のふもとに進出した私たちの祖先、ユーステノプテロンと同じグループである。

じつはかれらは、私たちの祖先がまだ魚だったデボン紀の時代から生き残っている古代魚なのである。現在生き残っている肉鰭類は、この肺魚2属と、シーラカンス1属の計3属にすぎない。そして最新の研究で肺魚はシーラカンスよりも私たち人間に近いとされている。つまりデボン紀に生きていたユーステノプテロンとはいわば従兄弟にあたるような関係なのである。

現在生息している肺魚3種はアフリカとオーストラリア、アマゾンのいずれも熱帯の沼地に生息している。

アマゾンの肺魚、レピドレシン・パラドクサは幼魚の頃は外鰓(がいさい)と呼ばれる体の外に出ている鰓(えら)を持ち、成魚になると肺呼吸を始める。そして成魚は乾燥した夏季になると水底の泥の中に穴を掘って夏眠する。このとき、泥で繭のようなものをつくるものもいる。全長は2メートル近くにもなる。


※参考文献
 NHK地球大進化プロジェクト・地球大進化・日本放送出版協会・2004


湿地帯の試練と肺の進化(2)

2008年02月29日 | Weblog

楽園が地獄と化す


乾期がピークとなる10月、水没林の豊かな生態系とは対象的な状況になる。アマゾンでは乾期になると水位は最大で18メートルも下がる。ジャングル内の水が引くこの時期、無数の残留湖が出現し、場所によっては干上がるところも出てくる。

水の量が減り水温が高くなると水中の溶存酸素が少なくなってしまう。このため水中は酸欠状態に陥る。さらに、こうした水位の低い場所では、植物の存在が酸欠を加速させてしまう。バクテリアが水中の葉を分解するときに酸素を大量に消費してしまうためだ。魚たちに恵みを与えていた植物が大きな試練をもたらす存在となるのだ。こうなると水中は地獄と化してしまう。

私たちの祖先が暮らしたデボン紀のデルタ地帯も雨季と乾期がはっきりした気候だったことが分かっている。このアマゾンで見られるような乾期の厳しさは当然あったと考えられている。


熱帯地方の湿地帯で生き残るには、酸欠をいかに克服するかが鍵となるのだ。

※参考文献
 NHK地球大進化プロジェクト・地球大進化・日本放送出版協会・2004