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※粘性の低い溶岩が何層にも重なって形成された中央シベリア高原。溶岩の高さは数千メートルに達する。
シベリア洪水玄武岩
中央シベリア高原は、北極圏から北緯50度のバイカル湖付近にまでひろがる世界有数の高原である。体積は約200万平方キロメートル。その玄武岩の塊の面積は日本の5倍あまりとされてきた。
高原を形成しているのは玄武岩と呼ばれる岩石である。最大で3700メートルの厚さをもつことが確認されている。じつは、この広大さと分厚さ誇る玄武岩の巨大な岩塊がすべて同じ火山噴火によって噴出した溶岩らしいのだ。
繰り返すが、日本の面積の5倍もの広がりである。
専門家達はこの巨大な岩塊を「シベリア洪水玄武岩」と呼ぶ。「洪水」と付くのは、玄武岩が噴出時には極めて粘性の低い溶岩であり、噴火口からあふれ出すと、まるで洪水のように広範囲にひろがるからである。
専門家がこの極北の地域に注目するようになった理由は、その玄武岩がおよそ2億5000万年前、すなわちPT境界の大量絶滅の年代に極めて近いことが分かってきたからである。シベリア洪水玄武岩の解析にはさまざまな研究チームがアルゴン・アルゴン法やウラン・鉛法という解析方法を用いて年代の特定を進め、いずれも約2億5000万年前に形成されたものだと結論付けたのだ。
史上最大の生物絶滅事件、そしてそれと同時期に起きた史上最大の火山噴火。科学者たちはこれを単なる偶然とは決して考えない。ある絶滅研究者は、「因果関係の追究を重んずる現代科学は、偶然として片付けることを本能的に嫌う」と語った。必ず関係があるだろうというのである。
しかし、これを直感が導き出した単なる推測と片付けることはできない。両者とも「史上最大」と形容される非常にまれなイベントである。その2つが、互いに関係なく独自の理由によってほぼ同時に起こることなど、確率的に考えればほとんどありえないからである。
しかしもちろん、世界の研究者たちが、この因果関係を科学的に立証することを怠っているわけではない。現在、多くの研究者たちが、シベリアの巨大噴火を仮の起点とし、他の現場データとつなぎ合わせることで、大量絶滅の全シナリオを組み立てようと必死なのだ。その詳しい内容は後述するとして、これが実を結べば、逆にシベリアの火山噴火とPT境界の大量絶滅の因果関係が確かなものに近づくことになる。
※PT境界の大量絶滅の原因については隕石衝突説や他の諸説について、さまざまな科学的調査に基づいた説が研究者から提唱されております。ブログ主としましては、決して他の説を否定することはいたしません。大量絶滅の原因の可能性は他にも「可能性としてはありうる」からです。しかしここでは敢えてシベリアの火山噴火説を仮の起点(中心)として、原因を追究させていただくことに致します。この点は皆様にのご理解をいただき、そして読み進めて頂ければと思っております。
※参考文献
NHK地球大進化プロジェクト・地球大進化・日本放送出版協会・2004