ロージング博士が発見したこの堆積岩は、実に30cmが3000年をかけてゆっくりと全く乱れずに積もっている事を示している。つまりこれは、波がない場所、つまり100mより深い深海で堆積したものなのだ。
更に熱水噴出孔(生物の誕生場所と想像されているところ)が近くに無いことも重要なポイントとなる。水の流れが多少でもあると、綺麗な堆積岩にならないからである。
ロージング博士は生物は熱水噴出孔の近くで誕生したか、あるいはどこか別の場所で誕生し(特定はされていない)、ほどなくして熱水噴出孔の周りにやってきたと考えている。
複雑な仕組みを持たない誕生直後の生命にとっては楽に生きられる環境だからである。だが、博士が見つけた「生命」は、熱水孔を離れて大海原に暮らしていた事を、その一糸乱れぬ縞模様から容易に想像できるものである。
しかしそこで生きるのは大変である。
エネルギーやミネラルの少ない海水から効率的にエネルギーを体内に取り込む能力を携帯してなくては生きられないからである。
ロージング博士が生命の誕生した時期を推測しても「38億年前よりずっと前」である。ただし、海が出来た直後であるとは考えられる。
最近の研究では43億年前頃には地球に海があったことが分かってきているので、生命も43億年前頃に誕生した可能性がある。
結局これ以上深く言及できないのが実情である。それは仕方の無いことである。なぜなら、生命がどのように誕生したかは未だに解明されてない。決定的な証拠が無いからである。
※参考文献
NHK地球大進化プロジェクト・地球大進化・日本放送出版協会・2004