共生
「共生」をするということは、生命が陸上という極めて過酷な環境に進出するにあたって、極めて重要な意味を持つ。
スコットランドのライニー村は3億9000万年前のデボン紀初期、ロレンシア大陸の端にあった。ここで植物が菌類と共生していた証拠が見つかる。
この菌類は菌糸を植物の根の中に入り込ませ、そこから植物が作った栄養素を吸収して生きている。 しかし、一方的に吸い尽くすと植物(宿主)が死んでしまうため、菌類は栄養を吸い取る代わりに植物にリンなどの重要な栄養塩を供給している。
この行為を通して菌類と植物は共存を始めた。この「共生」は現在ではほとんどの植物の根に認められる。 これはデボン紀の時点に完成したシステムである。
デボン紀の頃の陸は、長年水の中で暮らしてきた植物にとっては生きていくのが厳しい場所であったと考えられる。植物が上陸をしようとしたときに、土壌からリンなど成長に必要な栄養塩を供給してくれる菌類は魅力的であったはずだ。
だからともに陸という新しい未開の地を開拓していくために、植物と菌類はパートナーとして共生していくことを選んだと言えるのだ。
時を同じくして、リニアと呼ばれる高さおよそ10センチの維管束植物も水辺にコロニーを作っていた。その中から次第に水辺を離れ、乾燥した場所に進出しはじめた植物も出てきた。植物が水辺を離れることができたのもこの菌類のおかげだと考えられている。
そして植物の上陸を追うように魚が淡水域に進出してくる。裏を返して言えば、植物がいたからこそ魚は淡水域に進出できた、とも言える。
さらに植物の大型化と時を同じくして魚も大型化する。一説にはそこには植物と動物の共進さえあるとされている。そして魚たちも大型化と平行して多様化も始めた。
しかし私たちの祖先が乗り越えるべき試練は続いた。植物の恩恵を享受するために、魚たちもさらに進化をせざるをえなくなるのである。
<木との出会いと共生への道・完>
※参考文献 ・出典
NHK地球大進化プロジェクト・地球大進化・日本放送出版協会・2004