思い込みで動いちゃアカン。

　119番通報の聞き間違いで消火活動が遅れる、という事件が埼玉県で起きた。通報した通行人は「狐狸庵（こりあん）で火事」と言ったのに、消防本部の担当者は「コリアで火事」と聞き間違え、消防車は「コリア」という名の飲食店に向かったらしい。その間に、蕎麦屋「狐狸庵」は全焼。気の毒としか言い様がない。

　僕にも似たような経験がある。実家に住んでいた頃、家の前の道路で交通事故が起こり、双方のクルマから降りた連中が険悪な雰囲気で向かい合った。とばっちりを受けちゃかなわんので、僕は警察に電話をかけた。場所を問われ、「本町の交差点から東野の方へ300メートルぐらいで、橋の手前です」と答えた。
　ところが、なかなか警官が来ない。20分ぐらい待たされたろうか。ようやく来た警官は言った。「交差点から東の方って聞いたけど、逆ですね」と。アホか、お前。「東野（ひがしの）」ってのは、この辺じゃ誰でも知ってる地名じゃねえか。いや、「東野の方」を「東の方」と聞き間違えただけなら、それは仕方ない。僕の滑舌が悪いせいもある。でもさ、「橋の手前」って言ったじゃん。本町の交差点を東の方へ行って、どこに橋があるんじゃい。ちゃんと考えて行動しろよ。
　だが、こういう場合、警官とか役人とかは、自分の非を認めようとはしない。なあなあで終わらせるだけだ。こっちもその程度のことでガタガタ言うのは面倒だし、警官の反感を買うことが得策とは思えなかったので、あんまり文句は言わなかった。

　埼玉の事件でも、通報した人は蕎麦屋のある地名と、目印になるスーパーの名前を告げていたらしい。にも関わらず電話を受けた者はわざわざ地図探索システムで「コリア」を検索し、そちらへ消防車を向かわせたのだ。警察や消防、それと医療に関わる人たちは思い込みで動いちゃアカンて。頼んますわ。