少年トッパ

そして僕らは卓治のギターで歌った。<その6>

 練習場所に選んだのは、栄の観覧車の正面にあるカラオケボックス。集まったのは、Yazaさん、TOSHIさん、road21さん、平林さん&次男君、み~こさん、おこちゃま、コーディネーターである野畑さん、それに「時間の都合で本番には出られないけど練習だけ付き合う」とギター持参で現れた頼もしき網谷っちと、野次馬のK16さん。何はともあれ、とりあえずメンバー全員で歌ってみる。……う~ん、これでいいのだろうか。
 何よりも心配なのは、この練習に西河さんが参加できそうにないことである。女性パートの要であり、決め台詞も担当する彼女がいなくては、全然カッコがつかないぞ。本番には間に合うと思うけど、それで大丈夫なのか?
 苦肉の策として、平林さんの次男君には女性パートを受け持ってもらうことになった。彼はなかなか華麗なボーイソプラノの持ち主なのである。

 各々が担当する箇所はすんなりと決まった。男性陣は、トッパ→Yaza→平林→TOSHI→野畑→road21、という順。レコーディングの時と同じく、僕は一番最初である。
 ちなみに、どうしてレコーディングの時に僕が最初だったかというと、ただ単に「間違えてもやり直すのは自分だから他の人の迷惑にならない」と思ったからである。ほら、一発録りの場合、途中で誰かが間違えたら、また最初から全部やり直さなきゃならないでしょ? なので一番最初が気分的に最もラクなポジションなのである。だからこそ「オレが最初に歌うんだいっ」とゴネた(のかどうかは記憶が曖昧)のだ。
 しかし、レコーディングならやり直しは可能だが、ライブでは無理だろう。トチったからといって「じゃあ、もう一度」なんてわけにはいかない。そんなことしたらヒンシュクを買うのは間違いない。う~ん、やっぱり今回は一番最初じゃない方が良かったかも。しかし、男性に関しては全員がソロのパートがあるのだ。どこを担当しようがトチったら恥ずかしいのは同じである。

 何度か練習を繰り返す。コーラスの箇所をどうするかで迷う。やっぱり、誰がどの高さで歌うのかキッチリと決めた方がいいのだろうか。その時、僕の頭に天啓が閃いた。

「みんな声の高さがバラバラなんだから、そのまんま歌えば、それでコーラスになるんじゃない?」

 ……アホである。音楽の素養の欠片もない者の発言である。当然、一笑に付されるのみ。
 そうそう、さっき紹介した長谷川さんからのメールだけど、プロのミュージシャンでもあるroad21さんによると「学校で音楽の授業をキチンと聞いていれば理解できる内容」であるらしい。すんません、僕、途轍もなく劣等生だったんです。

 時間いっぱいまで何度か練習し、カラオケボックスを出る。さあ、卓治が待つクアトロへ行くのだ。緊張で足も強張る……かと思ったが、みんな足取りは軽い。まあ、なんとかなるさ。

 テクテク歩いてクアトロに到着。西河さんも来ている。一安心。
 マネージャーさんに迎えられ、リハーサル中の会場に入る。そこに待っていたのは、なんと小山卓治本人! あ、これは当然か。それだけじゃなく、高橋研さんと鈴木祐樹君もいる。どちらも今日のライブのゲストである。それにしても、三人ともすごく痩せてるなぁ。あんまり健康的とはいえない雰囲気だ。ちゃんとメシ食ってんの? 酒が主食なのか? などと冷静に考えたりする。オレ、けっこう余裕あるじゃん。

 それぞれの立ち位置が決まり、リハーサル開始。卓治がギターを弾き始める。もちろん、最初に歌うのは僕である。タイミングを間違えないようにしなきゃ。それ、♪彼女のブラウスの一番上の♪
 おおおっ、我ながら上手いこと歌えた! ほぼ完璧である。いやホント、背後でギターを弾く卓治とほぼ正面で笑みを浮かべながら見ている高橋研さんのオーラが憑依したのか、自分でも驚くほど上手に歌えたのである。オレ、やるじゃん。
 他のメンバーも練習の時よりも上手い。女性陣のコーラス、それに決め台詞もバッチリ決まる。最後の部分では、全員が大声でシャウト。この辺はもう、楽しければオッケーである。そして完了。みんな最高! 拍手喝采! 「卓治のギターで歌っている」という事実が、僕らのレベルを引き上げてくれたのだろう。
 唯一気になるのは、ほとんどの者が歌詞カードのコピーを持っていることである。僕も手に持って歌った。もちろん歌詞は丸暗記しているのだが、持っていないとどうも不安なのだ。しかし、念のため、卓治に聞いてみた。
「すみません、本番でも歌詞カードを持ってていいですか?」
「いいよっ」
 ニッコリと笑って卓治が答えてくれた。よっしゃ、これで準備万端。あとは本番を待つのみだ。しかし、この時点で僕は忘れていた。自分が本番に弱い人間であることを――。

                              <つづく>

※この続きは明日以降になります。しばしお待ちを!

コメント一覧

トッパ
●SKDさん

長いっつっても、半分はメールの引用ですので、僕
の労力は少ないです(笑)。
読むのは後回しにして、今日は遠慮なく泳いできて
くださいね~。

あ、注文どうも! 僕が儲かるわけじゃないけど
(笑)。

●おこちゃま

ホント、いい思い出になったよね。

佑樹君、いたじゃん。視界に入らないほど舞い上
がってたとは!(笑)
おこちゃま
いい想い出になりました。
リハーサルに祐樹くん居たっけ??研さんだけかと思ってたけど。緊張してたのかなぁ~。
SKD
な、長い!まだ続くの~?
コレ読む為に、私は今夜スイミングをサボりました。
明日は絶対行くから、続きは簡潔にヨロシク!

あ、DVDは予約しましたよ~。

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