少年トッパ

「ああ、スヌーピーのマンガでしょ?」

 ちょっと前に実家へ行った時、ピーナツ・シリーズの単行本を何冊か押し入れから引っ張り出してきた。中学生の頃、つまり約30年に集めていた本だ。たぶん60冊近く買ったと思う。当時の僕は、それほどこのシリーズに惚れ込んでいた。
 「ピーナツ・シリーズって何?」と聞く人には、こう答えることにしていた。アメリカのマンガで、登場人物は子どもだけ。何をやってもダメなチャーリー・ブラウンが主人公で、気の強い女の子のルーシー、その弟で毛布&指しゃぶり依存症のライナス、音楽に夢中のシュレーダー、それにチャーリー・ブラウンの家の飼い犬であるスヌーピーとかが出てて……。その辺りまで話すと、ほとんどの人はこう言う。ああ、スヌーピーなら知ってる! 可愛いから大好き。そっか、スヌーピーのマンガが好きなんだ。
 そのたびに僕は困惑しつつも笑顔を作った。う~ん、確かにスヌーピーは重要な登場人物の一人、というか一匹というか一頭である。しかし、僕はスヌーピーではなく、ピーナツ・シリーズに出てくる子どもたちに惹かれて、その世界にハマったのだ。いつもウジウジと悩んでばかりのチャーリー・ブラウン。毛布を手放せず、指しゃぶりもやめられないライナス。この二人のことは他人とは思えず、もう自分の分身のように感じていたもんだ。いや、スヌーピーのことも好きだったけどね。



↑これが「ピーナツ・ブックス」第36~38巻。



↑「登場人物紹介」のページ。シュレーダーは最近では「シュローダー」と表記されているようですが、当時は「ロ」じゃなくて「レ」でした。

 さて、このピーナツ・シリーズのキャラ(当時はそういう言い方は誕生してなかったが)で僕が妙に愛着を感じていたのは、ロイである。もちろんチャーリー・ブラウンとライナスは大好きなのだが、「気になるヤツ第1位」ってことなら、文句なくロイだった。しかし、この名前を出しても、誰も何の反応も示さない。
 たとえば「スヌーピーが大好き」という人に出会ったりすると「じゃあ、ピーナツ・シリーズは読んだことある?」と聞く。相手が頷くと「どのキャラが好き? スヌーピー以外で」と問う。すると、大抵の場合「ライナスかシュレーダーかな」という返事が戻ってくる。そこで僕が「なんかさ、妙にロイが好きなのよ」なんて言うと、一人残らずキョトン顔である。これまでの人生の中で、僕は一度たりともロイを知っている人に出会ったことがない。
 まあ、それも無理はないだろう。ロイがピーナツ・シリーズに登場したのは、第38巻「結婚したいの、ルーシー」の73~78ページだけなのである。ちょっとストーリーを紹介しよう。学校が休みの間、チャーリー・ブラウンは2週間のキャンプに行く。しかし、そこでも集団の中に溶け込めず、孤独感を味わう。その時、同じようにひとりぼっちで過ごしている子どもに出会う。それがロイなのである。
 ロイに出会ったチャーリー・ブラウンは「友だちだ!」と叫び、両親への手紙に「彼はすごくさびしがってました。でもボク、彼を助けてやったつもりです」と記す。一方、ロイはチャーリー・ブラウンのことを「臨時の友だちにはちょうどいいってタイプです」と手紙に書く。こういうシニカルさが、ピーナツ・シリーズの醍醐味である。
 ロイの登場場面はコマ数にして18。まあ、誰も知らなくても無理はない。でも、ロイを知ってから30年以上が過ぎても、何故だか僕は時々ロイのことを思い出すのだ。なんでだろ。

 そんなこんなで、もしもロイをご存じの方がいればご連絡ください。「臨時の友だち」ぐらいにはなれるかも。



↑これがロイ登場シーン。
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