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エンタープライズ仮想化はこの先どう進化するのか?
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先日、VForum2015 の感想を書きました。
http://blog.goo.ne.jp/tonton_ponpon/e/0d2980acd48e370f5623cad39a9248a7
VForumは2013年から毎年参加して聴講しています。 ここから何を感じ取りたいかというと、我々が日々働く企業のITインフラ(要するに業務用パソコンとバックエンド)は今後どうなるのか? どうあるべきか? と思っているからです。
個人的には、たしか2011年頃、「VMware VCloud Director」の存在を知った時、
「これだよ!これ」
と思ったものです。
オンプレミス仮想化とプロバイダが提供する仮想化を相互に行き来できるというのは非常に未来的でした。 あれから5年経って、今どう思っているか、改めてまとめてみたいと思います。
結論から言えば、
エンタープライズ仮想化はクラウド技術を吸収して
プライベートクラウドまたはハイブリッドクラウドへと
進化する
というのが潮流だと思います。
ハイブリッドが良いかプライベートが良いかは業務内容次第でしょう。
ハイブリッドクラウドはパブリッククラウドを使うため、
パブリッククラウド部分は自社の統制(governance)が
完全には効きません
これが問題ならプライベート、そうでないならハイブリッドでしょう。
ところで、なぜ仮想化だけでは駄目で、プライベート/ハイブリッドクラウドなのでしょう?
ハイブリッドクラウドの場合はクラウド事業者の"無限に近いコンピューティングリソース"を活用するという利点があり、わかりやすいですが、オンプレミスの場合、プライベートクラウドであるべき理由は何なのでしょう?
個人的には、
プライベートクラウドが、
"仮想化が果たせなかった理想を実現する"
からだと思います。
"理想"とは、
リソースを企業全体でプール化し、部門、プロジェクトの要望に
応じ、「必要な時に必要なだけ」プールから切り出して提供し、
不要になったら回収、改めて別の需要に提供することで、
有限リソースの利用効率を向上させ最適化を実現する。
という事だと思います。
これは、私が仮想化技術の普及にせっせと尽力していた10年程前に高らかに謳われていた「理想」でした。
現在、「サーバ仮想化」の印象はと言うと
1台の物理サーバ上で多数のOS(仮想マシン)を稼働させ
物理サーバの数を減らせる
という節約ツールの印象はあっても上記理想はあまり語られず、実際の稼働システムでもあまり行われていないのが実情ではないでしょうか?
この"理想"は現在のパブリッククラウドが謳う便益と同じです。 パブリッククラウドが出来る便益をなぜ仮想化は実現できないのでしょうか?
リソースがパブリッククラウドに比べて限られているからでしょうか?
そうではないと思います。
仮想化する際のサイジングは現在でも保守的な場合が多く(※)
ハードウェアが持つリソースに対して半分以下しか利用してい
ない場合が多くみられます。
つまり、余剰リソースはあるのです。
(※)SIerとしては、ギリギリに絞ると、パフォーマンス劣化が
起きた時に責任をかぶせられかねないから保守的に考える
余剰リソースが再配転されない理由は何でしょうか。それは、
(1) リソースプールそのものが小さすぎる
(2) 余剰リソースをオンデマンドに提供/回収する機構がない
からだと思います。
リソースプールが小さすぎる
これは、仮想化を部門単位、又は業務システム単位で行ったからです。
業務単位に Vcenter と専用のESXクラスターで仮想化してしまうと、
VCenter を跨ってリソースプールを作れないので、プールのサイズが小さ
くなります。 数台の物理サーバが作る小さなリソースプールが生む余剰
資源はたかが知れています。
余剰リソースをオンデマンドに提供/回収する機構がない
もし、全社レベルで仮想化基盤を形成している組織の場合、巨大なリソー
スプールの形成は成功しています。
当然、大きな余剰資源も確保できているはずです。
しかし、利用部門が、
「検証システムを作りたいから、IPセグメント(VLAN)3つと
仮想マシン10台、OSはWindows Server 5台、Linux 3台、
検証用の仮想PC2台準備して。 明日までに。」
と言ったら、情シスは喜んで対応するでしょうか?
恐らくそうではないと思います。
なぜか? 「そのための機械化された仕組みがなく大変だから」です
これが実は一番の問題と思っています。そして、これを解決できるのがクラウド技術だと思っています。
私の仮想化基盤の提案/構築・稼働後サポートの経験から、顧客の上記のような依頼が一番困りました。相手は仮想だからポチっとできると思っていますが、実際はそうはいきません。
具体的に何をしなければいけないか?と言うと
・要求されたVLAN3つを物理LANスイッチに登録する
・仮想マシンがHAやVMotionする全ハイパーバイザの
仮想LANスイッチにも要求されたVLAN3つを登録する
・仮想マシンを配置するストレージを空き容量や性能
を鑑みて決める
・要求された仮想マシンに適合するテンプレートが既に
あるか確認。 なければ作る。
・仮想マシンを作成し、指定の仮想ネットワーク(VLAN)
に接続する
作業を行う手順の確認、確認チェックリスト、日程調整も必要です。
結果的に、明日までに! は無理で、最短でも数日後、下手をすると2週間後まで顧客は待たされます。
なぜそんなに時間がかかるのか? それは
・複数業務システムが相乗りする物理スイッチ、ハイパーバイザ
に手を入れる(VLANを追加する)ため慎重な計画が必要
(全系ダウンを起こす可能性がある)
・手順がほとんど手作業なので、人的ミス予防策(レビューや
チェックリストなど)が必要
・実際の作業も手作業ゆえ時間がかかる
・サーバ、ストレージ、ネットワークの関係者が関わるので
レビュー、作業の日程調整が難しい
といった問題があるからです。
そこで、色よい返事をしないものだから、気軽に新規のシステムを共通基盤に乗せるという方向にはならず、結果的に余剰計算資源は死蔵されてるわけです。
ユーザが強ければ、情シスが泣く泣くやるかもしれませんが、これとて属人性とリスクの高い作業であることは変わらず、手間(=人件費)はかかり、スキルの高い要員(=人件費も高い)が必要です。
クラウド管理システム(CMS)は元々IaaSプロバイダーが自社のサービスの基盤として使うためのものです。 このため徹底的に自動化がなされています。
具体的には
・VLANなどのSDN管理はCMSが自動で行います
・全ての仮想スイッチへの変更もCMSが自動で行います
・仮想マシンが作られるストレージもサービスメニューに
応じて自動的に判定されます
・テンプレートはクラウド全体で一元的に管理され、
サービスメニューと紐づけられてメニューに応じて
自動的に選ばれます
・仮想マシン作成とネットワーク接続もセルフサービス
ポータルのメニューからスペック、テンプレート、接
続先ネットワークを選べば、あとはCMSが自動的に処理
を行います。
結果、今まで2週間もかかった作業は数分か数十分で終わってしまいます。
その時短も驚くべきことですが、作業のための関係者の調整やレビュー、チェックリスト作成、作業の際の複数人員でのクロスチェックなど、うんざりする非生産的作業がすべてなくなってしまうのはさらに画期的だと思います。
まあ、プロバイダーが使うのですから、手間暇かけて仮想サーバを準備していては競争に勝てないので、当たり前と言えば当たり前ですが、最初に見た時はビックリしたものです。 AWSと同じようなことが、自分の目の前にある! と。
それ故に、エンタープライズ仮想化は、プロバイダー向け技術を吸収してプライベートクラウドへと進化すると思うわけです。
現在、入手可能なCMS(=プライベートクラウドを作るソフト)は以下のようなものがあります。
1) Accelerite CloudPlatform(CloudStackの商用版)
http://accelerite.com/products/cloudplatform/
2) Apache CloudStack
http://cloudstack.apache.org/
3) Openstack (RedHat, Mirantisなどが提供)
RedHat OpenStack Platform
http://www.redhat.com/ja/technologies/linux-platforms/openstack-platform
Mirantis OpenStack
http://www.mirantis.com/products/mirantis-openstack-software/
4) OpenStack (コミュニティ版)
http://www.openstack.org/
5) VMware VCloudSuite
http://www.vmware.com/jp/products/vcloud-suite.html
来年半ばに登場する AzureStack もその一つと言えるでしょう。
Microsoft AzureStack
http://www.microsoft.com/ja-jp/server-cloud/products-Microsoft-Azure-Stack.aspx
かつて感動した VMware VCloud Director は残念ながら現在はエンタープライズ向けの販売は終了してしまいました。 後継は VCloud Suite という事になっていますが、VFolum 2015 の感想で書いたように、まだ寄せ集め感を感じます。
プライベートクラウドはクラウドですから、組織のポリシーが許せばネットワーク経由でどこからでも使えます。 さらにクラウドは IaaS も DaaS も提供できます。
エンタープライズ仮想化が今後どうなるか?興味深いところです。
エンタープライズ仮想化はこの先どう進化するのか?
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先日、VForum2015 の感想を書きました。
http://blog.goo.ne.jp/tonton_ponpon/e/0d2980acd48e370f5623cad39a9248a7
VForumは2013年から毎年参加して聴講しています。 ここから何を感じ取りたいかというと、我々が日々働く企業のITインフラ(要するに業務用パソコンとバックエンド)は今後どうなるのか? どうあるべきか? と思っているからです。
個人的には、たしか2011年頃、「VMware VCloud Director」の存在を知った時、
「これだよ!これ」
と思ったものです。
オンプレミス仮想化とプロバイダが提供する仮想化を相互に行き来できるというのは非常に未来的でした。 あれから5年経って、今どう思っているか、改めてまとめてみたいと思います。
結論から言えば、
エンタープライズ仮想化はクラウド技術を吸収して
プライベートクラウドまたはハイブリッドクラウドへと
進化する
というのが潮流だと思います。
ハイブリッドが良いかプライベートが良いかは業務内容次第でしょう。
ハイブリッドクラウドはパブリッククラウドを使うため、
パブリッククラウド部分は自社の統制(governance)が
完全には効きません
これが問題ならプライベート、そうでないならハイブリッドでしょう。
ところで、なぜ仮想化だけでは駄目で、プライベート/ハイブリッドクラウドなのでしょう?
ハイブリッドクラウドの場合はクラウド事業者の"無限に近いコンピューティングリソース"を活用するという利点があり、わかりやすいですが、オンプレミスの場合、プライベートクラウドであるべき理由は何なのでしょう?
個人的には、
プライベートクラウドが、
"仮想化が果たせなかった理想を実現する"
からだと思います。
"理想"とは、
リソースを企業全体でプール化し、部門、プロジェクトの要望に
応じ、「必要な時に必要なだけ」プールから切り出して提供し、
不要になったら回収、改めて別の需要に提供することで、
有限リソースの利用効率を向上させ最適化を実現する。
という事だと思います。
これは、私が仮想化技術の普及にせっせと尽力していた10年程前に高らかに謳われていた「理想」でした。
現在、「サーバ仮想化」の印象はと言うと
1台の物理サーバ上で多数のOS(仮想マシン)を稼働させ
物理サーバの数を減らせる
という節約ツールの印象はあっても上記理想はあまり語られず、実際の稼働システムでもあまり行われていないのが実情ではないでしょうか?
この"理想"は現在のパブリッククラウドが謳う便益と同じです。 パブリッククラウドが出来る便益をなぜ仮想化は実現できないのでしょうか?
リソースがパブリッククラウドに比べて限られているからでしょうか?
そうではないと思います。
仮想化する際のサイジングは現在でも保守的な場合が多く(※)
ハードウェアが持つリソースに対して半分以下しか利用してい
ない場合が多くみられます。
つまり、余剰リソースはあるのです。
(※)SIerとしては、ギリギリに絞ると、パフォーマンス劣化が
起きた時に責任をかぶせられかねないから保守的に考える
余剰リソースが再配転されない理由は何でしょうか。それは、
(1) リソースプールそのものが小さすぎる
(2) 余剰リソースをオンデマンドに提供/回収する機構がない
からだと思います。
リソースプールが小さすぎる
これは、仮想化を部門単位、又は業務システム単位で行ったからです。
業務単位に Vcenter と専用のESXクラスターで仮想化してしまうと、
VCenter を跨ってリソースプールを作れないので、プールのサイズが小さ
くなります。 数台の物理サーバが作る小さなリソースプールが生む余剰
資源はたかが知れています。
余剰リソースをオンデマンドに提供/回収する機構がない
もし、全社レベルで仮想化基盤を形成している組織の場合、巨大なリソー
スプールの形成は成功しています。
当然、大きな余剰資源も確保できているはずです。
しかし、利用部門が、
「検証システムを作りたいから、IPセグメント(VLAN)3つと
仮想マシン10台、OSはWindows Server 5台、Linux 3台、
検証用の仮想PC2台準備して。 明日までに。」
と言ったら、情シスは喜んで対応するでしょうか?
恐らくそうではないと思います。
なぜか? 「そのための機械化された仕組みがなく大変だから」です
これが実は一番の問題と思っています。そして、これを解決できるのがクラウド技術だと思っています。
私の仮想化基盤の提案/構築・稼働後サポートの経験から、顧客の上記のような依頼が一番困りました。相手は仮想だからポチっとできると思っていますが、実際はそうはいきません。
具体的に何をしなければいけないか?と言うと
・要求されたVLAN3つを物理LANスイッチに登録する
・仮想マシンがHAやVMotionする全ハイパーバイザの
仮想LANスイッチにも要求されたVLAN3つを登録する
・仮想マシンを配置するストレージを空き容量や性能
を鑑みて決める
・要求された仮想マシンに適合するテンプレートが既に
あるか確認。 なければ作る。
・仮想マシンを作成し、指定の仮想ネットワーク(VLAN)
に接続する
作業を行う手順の確認、確認チェックリスト、日程調整も必要です。
結果的に、明日までに! は無理で、最短でも数日後、下手をすると2週間後まで顧客は待たされます。
なぜそんなに時間がかかるのか? それは
・複数業務システムが相乗りする物理スイッチ、ハイパーバイザ
に手を入れる(VLANを追加する)ため慎重な計画が必要
(全系ダウンを起こす可能性がある)
・手順がほとんど手作業なので、人的ミス予防策(レビューや
チェックリストなど)が必要
・実際の作業も手作業ゆえ時間がかかる
・サーバ、ストレージ、ネットワークの関係者が関わるので
レビュー、作業の日程調整が難しい
といった問題があるからです。
そこで、色よい返事をしないものだから、気軽に新規のシステムを共通基盤に乗せるという方向にはならず、結果的に余剰計算資源は死蔵されてるわけです。
ユーザが強ければ、情シスが泣く泣くやるかもしれませんが、これとて属人性とリスクの高い作業であることは変わらず、手間(=人件費)はかかり、スキルの高い要員(=人件費も高い)が必要です。
クラウド管理システム(CMS)は元々IaaSプロバイダーが自社のサービスの基盤として使うためのものです。 このため徹底的に自動化がなされています。
具体的には
・VLANなどのSDN管理はCMSが自動で行います
・全ての仮想スイッチへの変更もCMSが自動で行います
・仮想マシンが作られるストレージもサービスメニューに
応じて自動的に判定されます
・テンプレートはクラウド全体で一元的に管理され、
サービスメニューと紐づけられてメニューに応じて
自動的に選ばれます
・仮想マシン作成とネットワーク接続もセルフサービス
ポータルのメニューからスペック、テンプレート、接
続先ネットワークを選べば、あとはCMSが自動的に処理
を行います。
結果、今まで2週間もかかった作業は数分か数十分で終わってしまいます。
その時短も驚くべきことですが、作業のための関係者の調整やレビュー、チェックリスト作成、作業の際の複数人員でのクロスチェックなど、うんざりする非生産的作業がすべてなくなってしまうのはさらに画期的だと思います。
まあ、プロバイダーが使うのですから、手間暇かけて仮想サーバを準備していては競争に勝てないので、当たり前と言えば当たり前ですが、最初に見た時はビックリしたものです。 AWSと同じようなことが、自分の目の前にある! と。
それ故に、エンタープライズ仮想化は、プロバイダー向け技術を吸収してプライベートクラウドへと進化すると思うわけです。
現在、入手可能なCMS(=プライベートクラウドを作るソフト)は以下のようなものがあります。
1) Accelerite CloudPlatform(CloudStackの商用版)
http://accelerite.com/products/cloudplatform/
2) Apache CloudStack
http://cloudstack.apache.org/
3) Openstack (RedHat, Mirantisなどが提供)
RedHat OpenStack Platform
http://www.redhat.com/ja/technologies/linux-platforms/openstack-platform
Mirantis OpenStack
http://www.mirantis.com/products/mirantis-openstack-software/
4) OpenStack (コミュニティ版)
http://www.openstack.org/
5) VMware VCloudSuite
http://www.vmware.com/jp/products/vcloud-suite.html
来年半ばに登場する AzureStack もその一つと言えるでしょう。
Microsoft AzureStack
http://www.microsoft.com/ja-jp/server-cloud/products-Microsoft-Azure-Stack.aspx
かつて感動した VMware VCloud Director は残念ながら現在はエンタープライズ向けの販売は終了してしまいました。 後継は VCloud Suite という事になっていますが、VFolum 2015 の感想で書いたように、まだ寄せ集め感を感じます。
プライベートクラウドはクラウドですから、組織のポリシーが許せばネットワーク経由でどこからでも使えます。 さらにクラウドは IaaS も DaaS も提供できます。
エンタープライズ仮想化が今後どうなるか?興味深いところです。
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