あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

ウメキョーに泣く

2012-07-21 | 本(文庫本)
荒木源さんの『オケ老人!』を読みました。
この作品、本当に面白かったです。憎たらしいくらいに爽快で愉快でした。
まずはタイトルから。
「オケ老人」は「ボケ老人」の間違いではありません。言葉をかけているには違いないでしょうが、「オケ」です。「オーケストラ」の「オケ」です。

梅が岡高校に赴任し、この町に転居してきた数学教師・中島は、市の文化センターで行われていた地元のアマチュア交響楽団の演奏に感動し、早速入団の申し込みをした。しかし中島が入団したのは、演奏を聴いた「梅が岡フィルハーモニー(梅フィル)」ではなく、梅フィルメンバーがごっそり抜けた後の、楽器演奏の技術もあやしい老人ばかりの「梅が岡交響楽団(梅響)」だった。

お話は、間違えて入団してしまった梅響で奮闘し、成長していく中島と梅響メンバーたちのほのぼの・まったりしたエピソードがメイン。それに、中島が憧れる同僚の坂下先生、対立する梅フィルのコンマス・大沢、彼の息子と梅響代表・野々村の孫娘の恋、ロシアの人気指揮者たちが華やかにしてくれ、さらに、ロシアの工作員とかが絡んできて、物語をピリッと締めてくれます。
こういう作品を読むと「年をとるのも悪くない」って思えます。
物覚えは悪くなるし、その分、物忘れは多くなるけど、身体も若いころと比べるとスムースには動いてくれなくなるけど、何か、楽しそう。
そうなるためには、人生の経験値が必要ですけど。これは必須ですね。老いるまでに経験したことの数と質。それをオケ老人たちが教えてくれました。

そして何やかんやあった後、梅響は演奏会を開くまでになります。演目は、ベートーヴェンの『エグモント序曲』、ドヴォルザークの『新世界より』。
ここで私はヒラメキました。どちらの楽曲もCDで持っているし、ウォークマンにも入っています。ならば曲を聴きながら演奏会部分を読めば一層楽しめるのではないかと。…そして実践。梅響コンサートの開幕です。
まずは『エグモント序曲』。物語の始まったころは100小節ほどしかこの曲を演奏できなかった梅響が、今、ステージで堂々と披露しています。新しく入団してきた若者たちに助けられながら、素晴らしい音色を聴かせます。
そして終盤、オケ最高齢で陸軍でラッパ手をしていた経験を持つラバウルさんのトランペットが高らかに鳴り響き『ラバウルさん、良い音だよぉ~』と感動し、不覚にも落涙。

……………………………………………………

いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや
今聴いているのは梅響の音じゃないから。フィルハーモニア管弦楽団だし。カラヤンだし。


こんなことをメインプログラムの『新世界より』でもやっちゃいました。第2楽章のマーサのコーラングレーで感涙…。
「だからぁ~、梅響じゃないから。小澤征爾さんとサンフランシスコ交響楽団ですから~」

こんな読書スタイルも楽しい、本当に楽しい作品でした。
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