※当ブログのシステム設定により、行途中でのスペースが意図したとおりに表示されないことがあります。英語の台詞や歌詞及び和訳ではおかしな表示が現れることになりますが、ご容赦ください。
(怪人に鼓舞・激励されるかのようにクリスティーンは発声練習をし、最高音に達する。怪人はパイプオルガンを演奏しながら自分の気持ちを激しく吐露し始める。)
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"INTRO TO THE MUSIC OF THE NIGHT"
PHANTOM:(怪人)
I have brought you to the seat of sweet music's throne... お前を甘美なる音楽の王座へと連れてきた
To this kingdom where all must pay homage to music... music... 全てのものが音楽へ敬意を払わなばならないこの王国へと
(怪人はオルガンから手を放し、クリスティーンを指さし・・・)
You have come here, for one purpose, and one alone... お前はここに、一つの目的のため一人でやってきた
Since the moment I first heard you sing, 初めてお前が歌うのを聞いてから
I have needed you with me, to serve me to sing, for my music, my music
私はお前が私の傍で、私に仕え、私の音楽のために歌うのを必要としていた
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(ここで、怪人の口調が激しいものから説明するような、あるいは説得するようなものに変化する。)
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"THE MUSIC OF THE NIGHT"
PHANTOM:(怪人)
Night-time sharpens, heightens each sensation… 夜はそれぞれの感覚を研ぎ澄まし高める
Darkness stirs and wakes imagination... 闇が想像をかき回し目覚めさせる
Silently the senses abandon their defences... 静かに感覚は防御を捨てる
Slowly, gently night unfurls its splendour... ゆっくりと優しく夜はその素晴らしさを広げる
(怪人はオルガンから離れ、クリスティーに近づく。)
Grasp it, Sense it - tremulous and tender... 優しく震えるそれを掴み、それを感じるのだ
Turn your face away from the garish light of day, けばけばしい昼の光から顔を背け
Turn your thoughts away from cold, unfeeling light, 冷たく感覚のない光から思いを遠ざけ
And listen to the music of the night... そして夜の音楽に耳を傾けるのだ
Close your eyes and surrender to your darkest dreams! 目を閉じ、暗闇にある夢に身を委ねるのだ
Purge your thoughts of the life you knew before! これまでの世界に対する思いを清めるのだ
Close your eyes, let your spirit start to soar! 目を閉じ、魂を高く舞い上がらせるのだ
And you'll live as you've never lived before". そうすれば永遠の命を持つだろう
Softly, deftly, music shall surround you... そっと、そして巧みに音楽はお前を囲む
Feel it, hear it, closing in around you... それを感じ、それを聞き、自分の周りに閉じ込めるのだ
Open up your mind, let your fantasies unwind in this darkness 心を開き、この闇の中で空想を解き放つのだ
Which you know you cannot fight – その闇は抗うことのできない
The darkness of the music of the night... 夜の音楽の闇なのだ
(クリスティーンは怪人の説得を聞きながらも、仮面の下にある素顔が気になり、それを取ろうとするが怪人にかわされる。怪人は更に自分の音楽に対する、そしてクリスティーンに対する思いを語り続ける。)
Let your mind start a journey through a strange, new world! お前の心を不思議で新しい世界へ旅立たせるのだ
Leave all thoughts of the world you knew before! 以前いた世界への思いを全て手放し
Let your soul take you where you long to be! お前の魂がいたいと思ってきた場所へと行かせるのだ
Only then can you belong to me... そうすることでお前は私のものになる
(怪人はクリスティーンの後ろから彼女の左肩越しに前の方へと左腕を伸ばし、半ば気を失いかけているクリスティーンの頭を抱くような恰好になる。クリスティーンは目を閉じ、頭を怪人の左肩に預ける。怪人はなおも語り続ける。)
Floating, falling, sweet intoxication! 浮いたり、沈んだり、甘美な陶酔
Touch me, trust me, savour each sensation! 私に触れ、私を信じ、それぞれの感覚を味わうのだ
(クリスティーンは頭を怪人の左肩に預けながら無意識のうちに右手を仮面へと伸ばすが、怪人は彼女の手首をつかみ仮面を外させまいとする。この動きがあってクリスティーンは目を開けた状態になる。怪人はクリスティーンの手を取りながらなおも彼女への説得を続ける。)
Let the dream begin, let your darker side give in 夢を始めさせ、お前の影の部分を降伏させるのだ
To the power of the music that I write – 私が書く音楽の力へと
The power of the music of the night... 夜の音楽の力へと
(クリスティーンは怪人の手に促されるように顔を遠くへと向け夢見るような表情を見せる。怪人が後ろから彼女の左側に回り込み、右手で彼女の左腕を掴むとクリスティーンは気を失い倒れ掛かる。怪人は彼女を抱きかかえボートへと運びそこに寝せる。そして舞台の中央で最後の一人語りをする。)
You alone can make my song take flight お前だけが私の歌を飛び立たせることができるのだ
- help me make the music of the night... 夜の音楽を作る助けとなってほしい
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怪人を照らしているスポットライトがフェードアウトし、舞台は燭台の光だけが見える状態になって第5場の終了。クリスティーンはボートで寝ている状態のまま、怪人はオルガンの位置へと移動することで第6場へと続く。
※ハー・マジェスティー劇場等で行われる公演では、クリスティーンが気を失う場面は次のようになっている。
"THE MUSIC OF THE NIGHT" の最終部分で怪人は次のことばを語りながら、クリスティーンをパイプオルガンの反対側(下手側)にあるダストカバーの掛かった鏡の前へとゆっくり連れて行く。
Let the dream begin, let your darker side give in 夢を始めさせ、お前の影の部分を降伏させるのだ
To the power of the music that I write – 私が書く音楽の力へと
The power of the music of the night... 夜の音楽の力へと
ここで、怪人はダストカバーを外す。すると鏡の中にはウェディングドレスを着たクリスティーン(もちろん別な人物が演じている)が現れる。クリスティーンが鏡に近づくと、鏡の中の人物が突然両手を差し延べ、クリスティーンは驚いて気を失う。
※このような演出で、どのような形でクリスティーンを自分のものにするかという怪人の願望が我々聴衆にはっきりと示される。
※また、怪人が歌う "THE MUSIC OF THE NIGHT" には別な歌詞がある(次の下線部が25周年記念公演とは違う部分)。
Slowly, gently, night unfurls its splendour
Grasp it, sense it, tremulous and tender
Hearing is believing, music is deceiving
Hard as lightning, soft as candle light
Dare you trust the music of the night
Close your eyes for your eyes will only tell the truth
And the truth isn't what you want to see
In the dark it is easy to pretend
That the truth is what it ought to be
Softly, deftly, music shall caress you
Hear it, feel it, secretly possess you
Open up you mind, let your fantasies unwind
In this darkness which you know you cannot fight
The darkness of the music of the night
Close your eyes, start a journey
Through a strange, new world
Leave all thoughts of the world you knew before
Cloe your eyes and let music set you free
Only the can you belong to me
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第3場の最終場面で、戻ってきたラウルが、クリスティーンに贈ったバラが落ちているのを見つけるが、彼女はそこにいない。舞台が暗くなり、すぐにこのミュージカルのタイトル曲と共に第4場が始まる。
舞台の中2階あたりに設けられたオーケストラピットよりも高い位置に渡り廊下のような通路が据えられている。通路は地下にある怪人の隠れ家へと続く階段をイメージしており、その通路を怪人がクリスティーンの手を取って導いていく。二人が下手側から上手側へ、上手側から下手側へと数度往復する間、通路が徐々に下がって行きオーケストラピットよりも下の位置に来る。
※ ハー・マジェスティーズ等の劇場では通路が交互に傾斜して下がるようになっており、二人が常に階段を下りて行くようにイメージできる。
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"THE PHANTOM OF THE OPERA"
CHRISTINE:(クリスティーン)
In sleep he sang to me, in dreams he came... 眠りの中で彼は私に向かって歌い、夢の中に現れる
That voice which calls to me and speaks my name... あの声が語りかけ私の名を呼ぶ
And do I dream again? また夢を見ているのだろうか
For now, I find the Phantom of the Opera is there - inside my mind... 今なら分かる、ファントムがそこに — 私の心の中にいる
PHANTOM:(怪人)
Sing once again with me our strange duet... また一緒に不思議なデュエットを歌うのだ
My power over you grows stronger yet... 私のパワーは以前よりも強くお前に注がれる
And though you turn from me to glance behind, 私から目をそらし後ろを振り返っても
The Phantom of the Opera is there - inside your mind... ファントムはそこに ― お前の心の中にいる
(二人は階段を降り切って、姿を消す。)
※ ハー・マジェスティーズ等の劇場では、第3場で二人が鏡の中に消えてから、第4場でボートに乗って再登場するまで、すなわち階段を下りて行く場面は代役が演じているということで、本当のクリスティーンと怪人役は声だけの出演ということである(ウィキペディア)。 一気に高い位置に設置している通路に登ったり、そこからボートに乗り換えるのは体力的にきついということらしい。
(地底湖に見立てた舞台から燭台が何本もせりあがって来るが二人はまだ姿を現さない。)
※ 劇場の通常公演ではこの辺りから二人がボートにのって地底湖を移動する場面になる。
CHRISTINE:(クリスティーン)
Those who have seen your face draw back in fear. 顔を見た人々は恐れて身を引く
I am the mask you wear... 私はあなたが被る仮面... (あなたの代わりに人々の前て歌っている)
PHANTOM:(怪人)
It's me they hear... 人々が聴くのは私の声なのだ
BOTH:(二人で)
Your/my spirit and your/my voice, in one combined: 二人の魂と声が一つになって
The Phantom of the Opera is there - inside your/my mind... オペラ座のファントムがそこに — 二人の心の中に
(舞台の中央奥の燭台が移動し、そこからボートに乗った怪人とクリスティーンが登場。)
OFFSTAGE VOICES:(舞台裏の声)
He's there, the Phantom of the Opera... 彼、ファントムはそこにいる
Beware the Phantom of the Opera. 気を付けろ、オペラ座のファントムだ
PHANTOM:(怪人)
In all your fantasies, you always knew 幻想の中でお前は常に分かっていたのだ
That man and mystery..., その男と謎が
CHRISTINE:(クリスティーン)
...were both in you... あなたの中で一つになっていると...
BOTH:(二人で)
And in this labyrinth, where night is blind, この暗闇の迷路の中で
The Phantom of the Opera is there/here - inside your/my mind... オペラ座のファントムがここそこに — 二人の心の中に
(隠れ家に着いて怪人はクリスティーンの手を取り、ボートを降りる。怪人は早速彼女に歌のレッスンを始める。)
PHANTOM:(怪人)
My Angel of Music! 私の「音楽の天使」!
CHRISTINE:(クリスティーン)
He's there, the Phantom of the Opera... 彼、ファントムがそこにいるんだわ
(クリスティーンは発声練習を始め、次第にキーを上げていく。怪人はクリスティーンを鼓舞・激励するかのように声をかけ続ける。)
PHANTOM:(怪人)
Sing. Sing... Sing for me! 歌え。歌え... 私のために歌うのだ。
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※ 第4場で使われるこの曲はミュージカルのタイトル曲となっているが、途中で2回ほど微妙に曲のキーが変わっている。音楽理論的にはキーを変えるのは簡単なようだが、雰囲気を高揚させる効果が感じられる。
(クリスティーンのキーが最高に達したところで、第4場が終了。切れ目なく第5場が始まって、怪人が自分の音楽に対する思いを語り始める。)
※ 文字で見る台本では、第4場と第5場の切り替わりが分かるが、実際の公演(通常公演でも、この特別公演でも)では舞台の暗転もなければ時間的空白もないので全く分からない。
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(クリスティーンが手紙を読んでいると、舞台上手の階段からアンドレ、フィルマンがそれぞれの妻を伴って高笑いしながら現れる。シャニュイ(ラウル)も彼らと一緒に登場。)
ANDRÉ:(アンドレ)
A tour de force! There’s no other way to describe it! すばらしい! 他に言いようがない。
FIRMIN:(フィルマン)
What a relief! Not a single refund! ほっとした。1枚の払い戻しもない!
MME. FIRMIN:(マダム・フィルマン)
Greedy. あさましい。
ANDRÉ:(アンドレ、フィルマンに)
Richard, I think we've made quite a discovery in Miss Daaé. リチャード、クリスティーン・ダーエは掘り出し物だと思う。
※リチャードは英語読みの名前。登場人物はフランス人であるから、フランス語読みのリシャールにすべきだが、リチャードと聞こえるのは俳優(ガレス・スヌーク)が間違ったのだと思われる。
FIRMIN (フィルマン、ラウルにクリスティーンの居場所を示して)
※ハー・マジェスティー劇場では舞台上にクリスティーンの楽屋セットがあるが、記念公演では舞台上に化粧台があり、クリスティーンがそこにいる。
Here we are, Monsieur le Vicomte. こちらです、子爵。
RAOUL:(ラウル)
Gentlemen, if you wouldn't mind. This is one visit I should prefer to make unaccompanied.
皆さん。できれば私一人で彼女を尋ねたい。
(ラウルはクリスティーンへお祝いをするつもりなのか、手に一輪のバラを持っている)
ANDRÉ:(アンドレ)
As you wish, Monsieur. どうぞ、そのように。
FIRMIN:(フィルマン、ラウル以外の者に)
They appear to have met before. 彼ら(ラウルとクリスティーン)は以前会ったことがあるようだ。
(ラウルはクリスティーンの傍に行く)
RAOUL:(ラウル)
Christine Daaé, where is your scarf? クリスティーン・ダーエ、君のスカーフはどこかな。
CHRISTINE:(クリスティーン)
Monsieur? どちら様ですか。
RAO UL:(ラウル)
You can't have lost it. After all the trouble I took. I was just fourteen and soaked to the skin...
失くしてはいないはず。あの時は大変だったよ。僕はちょうど14歳で、ずぶ濡れになったんだからね。
CHRISTINE:(クリスティーン)
Because you had run into the sea to fetch my scarf. Oh, Raoul. So, it is you!
ということは、あなたが私のスカーフを取りに海に入って行ったわけね。あぁ、ラウル、あなたなのね。
RAOUL:(ラウル)
Christine. クリスティーン!(と言って彼はバラを渡す。)
※第3場のこの場面で、ラウルとクリステシーンが幼なじみで、時を隔てて再会したことが分かる。そして二人の共通の思い出が語られていく。
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"LITTLE LOTTE"
※クリスティーンの父が話していたロッテの物語の一節を二人で思い出している場面。
RAOUL:(ラウル)
'Little Lotte let her mind wander.' 「かわいいロッテはあれこれと空想した。」
CHRISTINE:(クリスティーン)
You remember that, too... あなたもそれを覚えているのね。
RAOUL:(ラウル)
'...little Lotte thought: Am I fonder of dolls...' 「…かわいいロッテは思った:私が好きなのは人形かしら…」
BOTH:(二人で)
'...or of goblins, of shoes... 「…それともお化け、靴…」
CHRISTINE:(クリスティーン)
'...or of riddles, of frocks...' 「それともなぞなぞ、フロック(コート)かしら」
RAOUL:(ラウル)
Those picnics in the attic... '...or of chocolates.' あの屋根裏でのピクニック…「それともチョコレート。」
※ピクニックとは本来食事をする場所以外で食事をすること。必ずしも屋外や芝生の上とは限らない。
CHRISTINE:(クリスティーン)
Father playing the violin. お父さんがヴァイオリンを弾いて
RAOUL:(ラウル)
As we read to each other dark stories of the North お互いに北の国の物語を読んだ。
CHRISTINE:(クリスティーン)
'No - what I love best, Lotte said, is when I'm asleep in my bed, and the Angel of Music sings songs in my head!'
「いいえ、私が一番好きなのは」とロッテが言った。「ベッドで寝ていると私の頭の中で音楽の天使が歌を歌う時なの。」
BOTH:(二人で)
'...the Angel of Music sings songs in my head!' 「…音楽の天使が私の頭の中で歌を歌うの。」
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(クリスティーンは父のことを語り始める。)
CHRISTINE:(クリスティーン)
Father said 'When I'm in heaven, child, I will send the Angel of Music to you'. Well, father is dead, Raoul, and I have been visited by the Angel of Music.
お父さんは言ってたの、「私が天国人行ったなら、お前のところに音楽の天使を行かせよう。」ってね。そう、ラウル、お父さんは死んでしまって、音楽の天使が私のところに来ているの。
RAO UL:(ラウル)
No doubt of it - And now we'll go to supper! それは間違いない。では、今から食事に行こう。
※ラウルはクリスティーンの歌のうまさを認め、音楽の天使について語ろうとする彼女に生半可に合わせている。すぐにでも彼女と食事に出たいのである。
CHRISTINE:(クリスティーン)
No, Raoul, the Angel of Music is very strict. だめよ、ラウル、音楽の天使はとても厳しいの。
RAOUL:(ラウル)
I shan't keep you up late! 遅くならないようにするよ。
CHRISTINE:(クリスティーン)
No, Raoul... だめよ、ラウル。
RAOUL:(ラウル)
You must change. I must get my hat. Two minutes - Little Lotte.
君は変わらなければ。帽子を取って来るよ。2分待って、かわいいロッテ。
(と言ってラウルは足早に立ち去る。)
CHRISTINE:(クリスティーン)
Raoul! ラウル(呼びかけたが彼は戻らない) Things have changed, Raoul. いろいろ変わってしまったわ、ラウル。
(ここで突然、怪人の声が聞こえる)
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PHANTOM'S VOICE:(怪人の声)
(怪人はまずラウルに悪態をつく。クリスティーンが怪人に対して声をかけると、怪人は彼女を誘うように呼び掛ける。)
Insolent boy! This slave of fashion, basking in your glory! 無礼な奴だ! この気取り屋め、自惚れやがって!
Ignorant fool! This brave young suitor, sharing in my triumph! 無知な愚か者め! 私が勝ち取ったものに近づくなんて!
CHRISTINE:(クリスティーン)
Angel! I hear you! Speak - I listen… stay by my side, guide me! エンジェル!聞こえるわ。 話して、聞くから…傍にいて導いて!
Angel, my soul was weak- forgive me... enter at last, Master!
エンジェル、私の心は弱かった。許してください…先生!私のところに来てください。
PHANTOM'S VOICE:(怪人の声)
Flattering child, you shall know me, see why in shadow I hide!
私に憧れを抱くお前は私を知り、なぜ私が陰に隠れているかわかるだろう。
Look at your face in the mirror - I am there inside! 鏡で自分の顔を見ろ。私はその中にいる。
(鏡の中に怪人の顔が現れる。)
CHRISTINE:(クリスティーン、鏡の中の怪人に向かって)
Angel of Music! Guide and guardian! Grant to me your glory!
音楽の天使! 指導者そして保護者!あなたの栄光を私にください。
Angel of Music! Hide no longer! Come to me, strange angel...
音楽の天使! 不思議な天使、もう隠れていないで、私の所に来てください。
PHANTOM'S VOICE:(怪人の声)
I am your Angel... Come to me: Angel of Music...
私はお前の天使だ。私のところに来なさい、音楽の天使
I am your Angel of Music… Come to me: Angel of Music...
私はお前の音楽の天使だ。私のところに来なさい、音楽の天使
(怪人の顔が怪人に替わりクリスティーンに手を差し延べる。クリスティーンは怪人に誘われるまま鏡の中に入って行き、二人は中に消える。)
※怪人は自分をクリスティーンの音楽の天使だと名乗り、同時に彼女を音楽の天使と呼んでいる。怪人にとって彼女は音楽を教える相手ばかりでなく、この後明らかになってくる彼自身の音楽を体現する天使として考えていることがここで示唆される。
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(戻ってきたラウルが、クリスティーンに贈ったバラが落ちているのを見つけるが、彼女はそこにいない。)
RAOUL:(ラウルが彼女の名を呼ぶ。)
Christine! クリスティーン!
(舞台が暗くなり第3場が終了。その後すぐに第4場になる。)
※当ブログのシステム設定により、行途中でのスペースが意図したとおりに表示されないことがあります。英語の台詞や歌詞及び和訳ではおかしな表示が現れることになりますが、ご容赦ください。
再び舞台が明るくなると、観客はクリスティーンを後ろから見ることになる。彼女は舞台の奥の幕に投影された観客に向かって深々と身を屈め拍手喝采に応えている。(※オーケストラが配置されている階の下側に白い幕と思われるものが吊るされ、実際の客席をステージ側から撮った映像がその幕に投影されていて、客席の拍手喝采が「ハンニバル」を見ている観衆として使われている。ハー・マジェスティーズではこの観衆は背景幕に絵として描かれている。)
舞台奥の幕が両側から閉じられるとバレリーナたちがクリスティーンに駆け寄り興奮して口々に賞賛のことばを掛ける。そこへマダム・ジリーが来て、杖で床を突く。
GIRY: (マダム・ジリー、クリスティーンに)
Yes, you did well. He will be pleased. そう、あなたはよくやりました。彼も喜ぶでしょう。
(そしてバレリーナたちに)
And you! You were a disgrace! Such ronds dejambe! Such temps de cuisse ! Come, we rehearse. Now!
で、お前たち! 恥ずかしいわ! あのロン・ドゥ・ジャンブ!あのタン・ドゥ・キュイス!来なさい。今から練習します。
(バレリーナたちがバレーの練習をし始め、クリスティーンは自分の楽屋へ向かおうとしたところで声がどこからともなく聞こえてくる。クリスティーンが困惑したように辺りを見回すとメグ・ジリーが彼女に声を掛ける。)
PHANTOM'S VOICE:(怪人の声)
Brava, brava, bravissima... ブラボー、ブラボー、最高だ
※イタリア語の bravo は男性に対して、brava は女性に対して使う言葉で、それぞれ最上級が bravissimo, bravissima。ゆえに正確には「ブラバー、ブラバー、最高だ」にしなければならない。
MEG:(メグ)
Christine, Christine クリスティーン、クリスティーン
PHANTOM'S VOICE:(怪人の声)
Christine... クリスティーン…
MEG:(メグ)
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Where in the world have you been hiding? Really, you were perfect!
一体どこに隠れていたの? 本当、あなたは完璧だったわ
I only wish I knew your secrets Who is this new tutor!
あなたの秘密を知りたいの (※学校で習う仮定法過去の典型ですね)先生は誰なの?
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(クリスティーン、少しの間辺りを見回し、そしてメグに向き直って…)
CHRISTINE: (クリスティーン)
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Father once spoke of an angel... I used to dream he'd appear...
お父さんはかつて天使について話してた… 私は彼が現れると夢見たわ
Now as I sing, I can sense him... And I know he's here
今、私が歌うと彼を感じることができるの…彼がここにいるって分かるの
(そして舞台上に置かれた化粧台の方へ急ぎ、メグは彼女の後を追う。クリスティーンは化粧台のところで衣装係から舞台衣装を外してもらい白いガウンを着ながら話=歌を続ける。※ハー・マジェスティーズではクリスティーンが使う楽屋が設置されていて化粧台はその部屋にある。)
Here in this room he calls me softly... Somewhere inside... hiding...
この部屋で彼は優しく私を呼ぶの… この中のどこかに隠れていて…
Somehow, I know he's always with me... He - the unseen genius...
ふと、彼がいつも私と一緒にいると気づくの… 彼は見えない天才よ
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※この辺りのバレリーナ(映像では少ししか見えないが)、クリスティーン、メグ、衣装係それぞれの所作や表情、演技のタイミングは、当然ではあろうが、さすがプロと思わせるものがある。
MEG:(メグ、不安げに)
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I watched your face from the shadows Distant through all the applause
陰であなたの顔を見たわ 拍手喝采の遠くからね
I hear your voice in the darkness Yet, the words aren’t yours
闇の中であなたの声を聞いたわ でも、言葉はあなたのじゃなかった
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CHRISTINE:(クリスティーン、高揚して)
Angel of Music! Guide and guardian! Grant to me your glory!
音楽の天使、指導者そして保護者 あなたの栄光を私にください!
MEG :(メグ、自分自身に) Who is this angel! This... 天使って誰なの?この…
BOTH:(二重唱)
Angel of Music! Hide no longer! Secret and strange angel...
音楽の天使! もう隠れていないで! 未知で不思議な天使…
CHRISTINE:(クリスティーン)
He's with me, even now... 彼は今でも私と一緒にいるわ
MEG:(メグ)
Your hands are cold... あなたの手冷たいわ
CHRISTINE:(クリスティーン)
All around me. 私の周りに
MEG:(メグ)
Your face, Christine, it's white... クリスティーン、あなたの顔、白いわ
CHRISTINE:(クリスティーン)
It frightens me... 怖い
MEG:(メグ)
Don't be frightened... 怖がらないで
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(ここで、マダム・ジリーが練習を抜け出したメグを見つけて、杖で床を突く。メグたちは驚いてマダム・ジリーを見る。)
GIRY:(マダム・ジリー)
Meg Giry. Are you a dancer? Then come and practise.
メグ・ジリー。あなたはダンサーでしょ。だったら来て練習しなさい。
※自分の子に姓名をすべて使って呼びかけるのは、これから説教をする、これから叱るという前触れ。
(メグが去った後、マダム・ジリーはクリスティーンに手紙を渡す。)
GIRY:(マダム・ジリー)
My dear, I was asked to give you this. これをあなたに渡すように言われたわ。
(クリスティーンは手紙を受け取り、読み始める。)
CHRISTINE:(クリスティーン)
'A red scarf, the attic... Little Lotte. ... ' 「赤いスカーフ、屋根裏部屋… 小さなロッテ…」
※手紙に書いてあったのは、クリスティーンが幼少の頃に体験したことに関連するものである。ロッテというのはドイツ語系の女児の名前シャーロットを短くした名=ニックネームである。クリスティーンの父が幼い彼女とラウルに様々な物語を聞かせていたが、その中にロッテの物語というものがあって、それに因んでラウルは彼女を Little Lotte と呼んでいた。
※当ブログのシステム設定により、行途中でのスペースが意図したとおりに表示されないことがあります。英語の台詞や歌詞及び和訳ではおかしな表示が現れることになりますが、ご容赦ください。
また、英語学習者のために、英語の構造や語感をやや残した和訳にしました。日本語にない、日本語らしくない言い回しが多く出てくることになります。プロの翻訳家の和訳を楽しみたい方は是非ロンドンでの25周年記念公演のDVDを手に入れてください。
(メグ・ジリーからカルロッタが使っていたステージ用ストールを渡されたクリスティーンはレイエのピアノ伴奏に合わせて、「ハンニバル」第3幕でエリサが歌うアリアをおずおずと歌い出す。)
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"THINK OF ME"
CHRISTINE:(クリスティーン)
Think of me, think of me fondly, When we've said goodbye. さよならを言った後は私のことを深く思ってね
(ここでクリスティーンは逃げ出したい素振りを見せる。気合を入れるため、マダム・ジリーが杖で床を突く。クリスティーンは気を取り直して続ける。)
Remember me every so often Promise me you'll try. いつも私を思い出し、そうするって約束してね
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FIRMIN:(フィルマン、歌の途中でアンドレに向かって)
André, this is doing nothing for my nerves. アンドレ、何も心に響かない。
ANDRÉ:(アンドレ)
Don't fret, Firmin. いらいらするな、フィルマン。
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CHRISTINE:(歌の続き)
On that day, that not so distant day When you are far away and free そう遠くないあの日、あなたは去って行った
If you ever find a moment Spare a thought for me 合間を見て、私のことも考えてね
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REYER:(レイエ)
Madame! Monsieur! 皆さん、(彼女の歌をお聞きください)。
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(舞台がやや暗くなり、その間クリスティーンは、衣装係から衣装を着せられ、マダム・ジリーから身振りの指導、レイエからスコアを見せられ歌の指導を受ける様子が演じられる。そして舞台が再び明るくなり、マダム・ジリーとレイエが舞台端へ去ると、彼女が「ハンニバル」の初公演で主役として第3幕でのアリアを歌う場面に変わっている。)
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CHRISTINE:(歌の続き)
And though it’s clear Though it was always clear 決してあり得ないとはっきり分かっているし
That this was never meant to be If you happen to remember いつも分かっていたことだけど 思い出すことがあったら
Stop and think of me 立ち止まって私のことを考えてね
Think of August when the world was green 緑で一杯だった8月のことを思い出して
Don’t think about the way things might have been こうだったかもしれないとは考えないでね
Think of me, think of me waking Silent and resigned 目覚めていても言葉に出さずおとなしくしている私のことを考えてね
Imagine me trying too hard To put you from my mind あなたを心から遠ざけようと努力している私を想像してね
Think of me Please say you’ll think of me 私を思っていると、私のことを思っていると言ってね
Whatever else you choose to do There will never be a day あなたが何をしようと
When I won’t think of you 私があなたを思わない日はないでしょう
(「ハンニバル」の初演でクリスティーンが舞台で歌っているのをフィルマン夫妻、アンドレ夫妻と共にボックス席から見ていたシャニュイ子爵=ラウルは彼女が昔別れた幼馴染みであることに気づく。)
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RAOUL:(ラウル)
Can it be! Can it be Christine! Brava! Brava! あれはクリスティーンだ! すばらしい!
※フィルマン夫人はラウルと同じく感激して拍手しようとするが、気難しいフィルマンにたしなめられる。台詞はないが二人のこのやりとりや表情が面白い。また、アンドレの二人を見る呆れたような表情も面白い。台詞がなくてもさすがにプロの役者だと感心させられる。アンドレ夫人は動画の中では見えないが、後の場面で台詞なしで出演している。
Long ago, it seems so long ago How young and innocent we were 今ではずっと昔のようだが、二人は若くて無邪気だった
She may not remember me But I remember her 彼女は覚えてないかもしれないが、僕は彼女を覚えている
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CHRISTINE:(クリスティーン)
Flowers fade The fruits of summer fade 花は色あせ 夏の果実も朽ちる
They have their seasons, so do we 季節があるように 私たちにも輝く時があるわ
But please promise me でも約束して
That sometimes you will think Of me (think と of の間にカデンツァを入れて)時々私のことを考えるって
※この歌を歌う際にクリスティーンはラウルのことを思っているかどうかは分からないが、ミュージカルの作者がガストン・ルルーの原作を基に彼女とラウルの間柄にこの歌をオーバーラップさせることにより二人が再開後に親密さを増していく伏線として設定していると考えられる。劇中劇のエリサとハンニバル、そしてミュージカル自体の中のクリスティーンとラウル、二組のカップルが、お互いに離れている時期があって再び会うという複雑な設定が見事に絡み合った場面が最初から設定されており、このミュージカルの難しさと面白さが同時に現れている部分でもある。
#################### ("THINK OF ME" の終了)
大きな拍手とともにクリスティーンが舞台上で床に伏せると舞台が暗くなり「ハンニバル」初演が成功したことが暗示される。
以上で第1幕第1場の終了。
※"THINK OF ME" の歌詞は1986年の初演でサラ・ブライトマンが歌っていたものとは若干違っている。因みにオリジナルの歌詞は以下のとおり(途中の他の出演者の台詞等は削除しクリステーンとラウルが歌う部分だけを抜粋)。
CHRISTINE
Think of me, think of me fondly When we've said goodbye.
Remember me once in a while Please promise me you'll try.
When you find that, once again, you long to take your heart back and be free
If you ever find a moment Spare a thought for me
We never said Our love was evergreen
Or as unchanging as the sea But If you can still remember
Stop and think of me Think of all the thing we shared and seen
Don’t think about the things which might have been
Think of me, think of me waking Silent and resigned
Imagine me trying too hard To put you from my mind
Recall those days Look back on all those times
Think of all the things we’ll never do There will never be a day
When I won’t think of you
RAOUL
Can it be! Can it be Christine!
Bravo!
What a change! You’re really not a bit the gawkish girl that once you were
She may not remember me But I remember her
CHRISTINE
We never said Our love was evergreen
Or as unchanging as the sea But please promise me
That sometimes you will think (Cadenza) Of me