務のよしなしごと

ハンプトン・コート宮殿の人々(完成時期未定)
「オペラ座の怪人」勝手に解説
住んでいる近辺の紹介

ハンプトン・コート宮殿の人々 — はじめに

2021-10-06 | うんちく・小ネタ

人々の話に進む前に・・・ハンプトン・コート宮殿とは

ロンドンの南西約20km、テムズ川沿いの赤レンガの大きな宮殿。

ロンドンの中心部からだと交通状況によって車で約1時間から2時間で到着。ウォータール駅からは直通列車で1時間弱。他に地下鉄と鉄道を乗り継いでロンドン市内からは1時間から1時間20分で行ける。ロンドン・パスという観光パス(英国国外でのみ入手可能)を購入すればいちいち入場料を払わなくてもいいし、ロンドン市内の公共交通機関のプリペイドカード(Vistor's Oyster Card)が使える範囲内でもある。

16世紀初め、大司教であったトーマス・ウルジーが大規模な改築を始め、後にヘンリー8世に献上した。ウルジーに関する展示はとても少なく、その時代に関する展示はほとんどヘンリー8世に関するものである。建物は基本的にルネサンス様式とされるが、素人でも2つの外観の違いが分かる。それはヘンリー8世の時代のものと、メアリー2世とウィリアム3世の共同統治時代(17世紀末)に大改修されたものである。

16世紀初めの様式
西側 West Gate

 

17世紀末の様式
南側ファサード

 

17世紀末の様式
東側ファサード

画像:ウィキペディア        

上の画像は宮殿西側の West Gate と 南側そして東側から見たファサードである。観光客は West Gate 手前約150mの所にある門から入り、すぐ左手の平屋の建物で入場手続きをし、West Gate 開口部から入る。

建物は時代ごとに大きく3つの区分で公開されている。入場手続きの際に地図が貰えるのでそれを見ながら進んで行けばいい。
まず、ウルジーとヘンリー8世の時代(1514年頃 - 1547)であるが、この区分には主に次の展示が含まれている。
①若かりし頃のヘンリー8世の資料
②大ホール
③謁見室
④顧問会議室
⑤ヘンリー8世の台所という名の調理場
等である。ヘンリー8世後はしばらく王宮として使われず、次に王宮として使われるのは約150年後であった。

王宮としての次の時代は、名誉革命後のメアリー2世とウィリアム3世の時代(1689 - 1702)で、建築家のクリストファー・レンの設計による大改修が行われた。この区分には次の展示がある。ヘンリー8世に関する展示と比べると規模が小さく数が少ないが見ごたえがある。
①王の階段
②王の衛兵室
③寝室(権勢と財力を示すためのもの)
④ガーデンテラスと呼ばれる長い廊下
等である。ウィリアム3世の次の君主、アン女王はほとんどここに住まず、ロンドン市内のセント・ジェームズ宮殿に住んだ。

王宮としての最後の時代は、ウィリアム3世の崩御(1702)後、アン女王時代の12年間の空白を経てやってきた。ハノーバー朝初代ジョージ1世から2世の時代(1714 - 1760)である。この時代に関する展示は次のものがある。
①女王の階段(メアリー2世のための階段だが、事情があってこの時代区分に属している。)
②女王の衛兵室
③公開食堂
③寝室(権勢と財力を示すためのもの)
④女王のギャラリー
等である。関心の向けどころにもよるが、ジョージ2世夫妻と息子のフレデリック皇太子との確執に関する説明もあって、面白い。

ジョージ2世崩御後、この宮殿は王宮として使われず、1838年に大ホールの復旧工事が終わるとビクトリア女王によって一般開放されて今日に至る。

ハンプトン・コート宮殿の見どころは建物だけではなく、周囲の庭なども一見の価値がある。詳しくは二宮孝嗣氏の記事を参照されたい。

① ハノーバー朝時代の展示を見た後、階段を下り Fountain Court と反対側の東側ファサードへ出て正面が Great Fountain Garden である。ウィリアム3世とメアリー2世の時代に造成されたものでイチイの大木が整然と並んでいる。

②東側ファサードを背に右側の角を曲がり南側に行くと次に見えてくるのが Privy Garden である。フランス庭園の様式による左右対称の幾何学的なつくりが特徴。

③南側を西に向かって進むと右手壁の脇に小さな Knot Garden が現れる。これも幾何学模様のつくりになっている。

④Knot Garden から西にほんの少し行った左手、生け垣の間から見えてくるのが2つの庭から成る Pond Gardens である。手前の庭がその奥の Banqueting House (今でも使われていいるが、一般には非公開)と共に絵葉書に使われるほど美しく、これも幾何学的なつくりの庭。隣に進むとこれも幾何学的なつくりで、花が主体ではなく低い灌木を切りそろえた庭が見える。これら2つの庭はヘンリー8世の時代には養殖用の池で、後に埋め立てられたのでサンクン・ガーデン(Sunken Gardens)とも言う。ポンド・ガーデンの近く(向かい側)には珍しい植物を植えていた温室のような機能を持ったオランジェリーがある。

⑤更に進むと、庭ではないが、世界最古のブドウの木がある大きな温室 Vineyard (又は Great Vine)がある。良く手入れがされていて、1768年に植えられた木が今でも実をつける。その実は8月末から9月にかけて宮殿内の売店で売られている。

ハンプトン・コート宮殿の北側にも多くの庭や施設がある。ヘンリー8世時代から使われてきた Royal Tennis Court、庭師養成のための 20th Century Garden、迷路のある遊び場でもあった Wilderness、ヘンリー8世も参加して馬上槍試合が行われた Tiltyard の一部、後にその会場を分割して設けられた、Magic Garden、kitchen Garden、Rose Garden がある。

この宮殿の所有者である王に関する話題の規模から勝手に順位づけると、1位がヘンリー8世と周囲の人々、2位がジョージ2世と彼に関係する人々、3位がウィリアム3世とメアリー2世になろう。予定としては、時代順に、ヘンリー8世、ウィリアム3世とメアリー2世、ジョージ2世という具合に進めて行きたい。



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