務のよしなしごと

ハンプトン・コート宮殿の人々(完成時期未定)
「オペラ座の怪人」勝手に解説
住んでいる近辺の紹介

「オペラ座の怪人」第1幕 第8場 -2

2021-07-31 | 趣味

※当ブログのシステム設定により、行途中でのスペースが意図したとおりに表示されないことがあります。英語の台詞や歌詞及び和訳ではおかしな表示が現れることになりますが、ご容赦ください。

支配人たちとシャニュイ子爵=ラウルが届いた手紙について話をしているところに、カルロッタとピアンジが大そうな剣幕で部屋に入って来る。カルロッタもまた手紙を手にしている。

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CARLOTTA:(カルロッタ)
Where is he?      彼はどこなの?

ANDRÉ: (アンドレ)
Ah, Welcome back!       あぁ、お帰りなさい。

CARLOTTA:(カルロッタ)
Your precious patron - where is he?       あなた方の大事なパトロン、彼はどこなの?

RAOUL:(ラウル)
What is it now!       今度は何だ!

CARLOTTA (to RAOUL):
I have your letter - a letter which I rather resent!       あなたの手紙よ。私が憤慨しているのは。

FIRMIN:(フィルマン、ラウルに)
Did you send it?       あなたが出したのですか。

RAOUL:(ラウル)
Of course not!       もちろん、出していない。

ANDRÉ:(アンドレ)
As if he would!       彼ならやりそう。

CARLOTTA:(カルロッタ)
You didn't send it?       出していないですって?

RAOUL:(ラウル)
Of course not!       もちろん、出していない。

FIRMIN:(フィルマン、カルロッタに)
What's going on...!      どうしたというのですか。

CARLOTTA:(カルロッタ、ラウルに)
You dare to tell me that this is not the letter you sent?!       これはあなたが出した手紙じゃないって言うの?

RAOUL:(ラウル)
And what is it that I'm meant to have sent?       で、私が出したとされるものはどんなものなんだ?

(ラウルはカルロッタから手紙を取り上げる。カルロッタはラウルが出していないと言い張るので、では誰が・・・という表情で右隣にいるピアンジを見る。ピアンジは彼の右隣にいるアンドレを・・・、アンドレは右隣のフィルマンを次々に見る。フィルマンは右隣の・・・人物がいないので右下の床を見る。ここで客席から小さな笑いが起こる。ラウルは取り上げた手紙を読み始める。)

'Your days at the Opera Populaire are numbered. Christine Daaé will be singing on your behalf tonight.
「お前のオペラ座での実績は過去のものになった。クリスティーン・ダーエが今夜お前の代わりに(主役で)歌う。
Be prepared for a great misfortune, should you attempt to take her place,'
もし彼女の役を取り上げようとするなら、大きな災いに備えておくがいい。」

※クリスティーンが主役を務める(と怪人が言っている)出し物は、「イル・ムート」というオペラ。初演からクリスティーンが主役を務めるよう怪人が示唆しているのである。「イル・ムート」はロイド・ウェバーがこのミュージカル「オペラ座の怪人」の中で使うためにモーツアルトの「フィガロの結婚」をモチーフに作った架空のオペラ(ウィキペディアより)であり、もちろん一つのものとして完結したものではない。

ANDRÉ/FIRMIN:(アンドレとフィルマン)
Far too many notes for my taste - and most of them about Christine! All we've heard since we came is Miss Daaé's name...
手に負えないほど多くの手紙だ。そしてほとんどがクリスティーンについて。我々がここに来てから耳にするのはダーエさんの名前ばかり。

(ここでマダム・ジリーが娘のメグを連れて登場。)

GIRY:(マダム・ジリー)
Miss Daaé has returned.       ダーエさんが戻りました。

FIRMIN:(フィルマン)
In which case I think our meeting is adjourned.       そういうことなら我々の話は中断ということに。

ANDRÉ:(アンドレ)
Where precisely is she now?       彼女は今どこに?

GIRY:(マダム・ジリー)
I thought it best that she went home...      彼女には帰宅してもらうのが一番だと考えました。

MEG:(メグ)
She needed rest.       体を休めることが彼女には必要なの。

RAOUL:(ラウル)
May I see her?       彼女に会えるだろうか。

GIRY:(マダム・ジリー) No, Monsieur, she will see no-one.      いいえ、彼女は誰にも会わないでしょう。

(これを聞いたカルロッタは主役は自分が・・・と思ったのか・・・)

CARLOTTA:(カルロッタ)
Will she sing? Will she sing?       彼女は歌うの?

(マダム・ジリーはこれには答えず・・・)

GIRY:(マダム・ジリー)
Here, I have a note...       ここに手紙を持ってきました。

RAOUL/CARLOTTA/ANDRÉ:(ラウル、カルロッタ、アンドレ)
Let me see it!       それを見せて。

(カルロッタたちが手紙を取り上げようとすると、マダム・ジリーはそうはさせまいと手紙を右手で頭上に上げる。彼女の後ろにいたフィルマンがタイミングよくそれを取り上げる。)

FIRMIN:(フィルマン、手紙をマダム・ジリーから取り上げて)
Please!       静かに!

(フィルマンは手紙を読み始める。)

FIRMIN:(フィルマン)
'Gentlemen, I have now sent you several notes of the most amiable nature, detailing how my theatre is to be run.
「皆さん、最も友好的な表現を使って私の劇場がどのように運営されるべきかいくつか手紙を差し上げてきましたが、
You have not followed my instructions. I shall give you one last chance...'
あなた方は私の指示に従ってはくれませんでした。最後のチャンスを与えることにしよう。」

(徐々に怪人の声がフィルマンの声に重なっていく。)

PHANTOM'S VOICE:(怪人の声)
Christine Daaé has returned to you, and I am anxious her career should progress.
「クリスティーン・ダーエがお前たちのところに戻った。で、私は彼女のキャリアが積まれていくことを願っている。
In the new production of' Il Muto', you will therefore cast Carlotta as the pageboy, and put Miss Daaé in the role of Countess.
新作「イル・ムート」で、お前たちはカルロッタを小姓役にし、クリスティーンを伯爵夫人役にするように。
The role which Miss Daaé plays calls for charm and appeal. The role of the Pageboy is silent - which makes my casting, in a word, ideal.
クリスティーンの役は魅力と表現力が求められる。小姓役はセリフがない。私の配役は一言で言えば理想的である。
I shall watch the performance from my normal seat in Box Five, which will be kept empty for me.
私はいつもの5番ボックス席から見ることにしよう。そこは私のために空けておくように。
Should these commands be ignored, a disaster beyond your imagination will occur.
これらの要求が無視されるならお前たちの想像を超える災難が起こるであろう。

FIRMIN:(怪人の声に重なっていたフィルマンの声が徐々に大きくなり、手紙を読み終える)
I remain, gentlemen, your obedient servant, O.G.'
お前たちの従順なる僕(しもべ)、O.G.(Opera Ghost = オペラ座の怪人)」
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「オペラ座の怪人」第1幕 第8場 -1

2021-07-27 | 趣味

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舞台が明るくなると軽快な旋律のBGMが始まり、場面は支配人の部屋。中央の机で上機嫌のフィルマンが高笑いをしながら新聞を読んでいる。カルロッタは役を降りたまま、クリスティーンは怪人に連れ去られて行方不明のままである。

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"NOTES"

FIRMIN:(フィルマン)
'Mystery after gala night,' it says, 'Mystery of soprano's flight!' 
「初演後の謎」、「ソプラノの失踪」だそうだ。
'Mystified,' baffled Sûreté say, 'we are mystified - we suspect foul play!' 
「不思議だ」保安当局は困惑し「謎だらけの事件」と言っている
Bad news on soprano scene - first Carlotta, now Christine!  
ソプラノに関しては悪いニュース、最初はカルロッタで次がクリスティーン
Still, at least the seats get sold - gossip's worth its weight in gold...    しかし、席は売れてゴシップの重さは金の重さと同じ価値
Diva tenders resignation.  Cover does a moonlight flit             歌姫は辞任、代役は夜逃げ
Half your cast disappears, but the crowd still cheers!        役者は半分去ったが、それでも観客は喝采する
Opera!      To hell with Gluck and Handel –          オペラ様々だ! グルックやヘンデルと一緒に地獄まで
Have a scandal and you’re sure to have hit         スキャンダルがあればヒット間違いなし

(そこへアンドレがあたふたと登場。)

ANDRÉ:(アンドレ)
Damnable!  Will they all walk out!           ひどい!皆出て行くのか?
This is damnable!                                     これはひどい!

FIRMIN: (フィルマン)
André, please don't shout...  It's publicity!        アンドレ、喚かないでくれ。これは宣伝だ。
And the take is vast!  Free publicity!                 実入りは大きい。しかも無料の宣伝だ。

ANDRÉ:(アンドレ)
But we have no cast...               しかし、役者がいない。

FIRMIN:(フィルマン)
But André, have you seen the queue?  Oh, it seems you got one, too.
でも、アンドレ、列を見ただろう。おや、君にも(手紙が)来てるみたいだ。

(アンドレは、最初、怪人から来たものとは気づかず手紙を読みだす。)

ANDRÉ:(アンドレ)
'Dear André, what a charming gala!  Christine enjoyed a great success.
「親愛なるアンドレ、初演は素晴らしかった!クリスティーンは大成功を収めた。
We were hardly bereft when Carlotta left –
カルロッタが去っても気にならない。
Otherwise, the chorus was entrancing, but the dancing was a lamentable mess!'
コーラスは魅力的だったが、踊りは嘆かわしいほどバラバラだった。」

FIRMIN:(フィルマン、自分宛ての手紙を読む。)
'Dear Firmin, just a brief reminder: my salary has not been paid.
「親愛なるフィルマン、ほんのお知らせだが、私の給料がまだ支払われていいない。
Send it care of the ghost, by return of post - P.T.O.:
幽霊宛てに郵送してほしい。裏に続く。
No-one likes a debtor, so it's better if my orders are obeyed!'
誰も借金は好きじゃないから、私の要求どおりにした方がいい。」

FIRMIN/ANDRÉ:(フィルマンとアンドレ)
Who would have the gall to send this?      Someone with a puerile brain!
こんな厚かましい手紙を送るのは誰だ?子供じみたやつだ!

FIRMIN: (フィルマン、2通の手紙を見て) 
These are both signed 'O.G.'...         2通とも O.G.とサインがある。

ANDRÉ:(アンドレ)
Who the hell is he?           一体彼は誰なんだ?

BOTH: (二人、すぐに気づいて)
Opera Ghost!     オペラ座の幽霊(怪人)だ!

FIRMIN: (フィルマン、興味なさげに)
It's really not amusing!       全く興味をそそるものじゃない!

ANDRÉ:(アンドレ)
Hle's abusing our position!       彼は私たちの立場を犯している。

FIRMIN:(フィルマン)
In addition, he wants money!       その上、給料まで要求している!

ANDRÉ:(アンドレ)
He's a funny sort of spectre...       幽霊にしては面白いやつだ。

BOTH:(二人)
…to expect a large retainer!       分け前を多く望むとは!
Nothing plainer - he is clearly quite insane!       何を言っているのか。彼は明らかにとんでもない気違いだ!

(シャニュイ子爵=ラウルが部屋に入って来る。彼はほんの少しの時間クリスティーンと離れた時に楽屋から姿を消した彼女の行方が気がかりで探している最中である。彼は自分に届いた手紙を手にしている。)

RAOUL:(ラウル)
Where is she?       彼女はどこだ?

ANDRÉ:(アンドレ)
You mean Carlotta?       カルロッタのことですか?

RAOUL:(ラウル)
I mean Miss Daaé - where is she?       ダーエさんだよ。どこにいる?

FIRMIN:(フィルマン)
Well, how should we know!       いやはや、知る由もありません。

RAOUL:(ラウル)
I want an answer - I take it that you sent me this note!       答えろ!お前たちがこの手紙を送ったんだな。

FIRMIN:(フィルマン)
What’s all this nonsense!       全くナンセンスです。

ANDRÉ:(アンドレ)
Of course not!       もちろん私たちじゃありません。

FIRMIN:(フィルマン)
Don't look at us!       私たちを見ないでください。

RAOUL:(ラウル)
She's not with you, then?       では、彼女はお前たちと一緒じゃないんだな。

FIRMIN:(フィルマン)
Of course not!       もちろん違います!

ANDRÉ:(アンドレ)
We're in the dark...       私たちも見当がつかないのです。

RAOUL:(ラウル)
Monsieur, don't argue - Isn't this the letter you wrote!       口論は止めよう。これはお前たちが書いた手紙じゃないんだな。

FIRMIN:(フィルマン)
And what is it that we're meant to have wrote? Written?       私たちが書いたとされる手紙はどんなものですか。
(※ここでフィルマンは興奮していたので文法上の間違いを犯す。written と言うべきところを wrote と言ってしまい、あわてて言い直したのがこの場面である。)

ANDRÉ:(アンドレ、ラウルに届いた手紙を見せてもらい読み上げる。)
'Do not fear for Miss Daaé. The Angel of Music has her under his wing.
「ダーエさんについては心配無用。音楽の天使が彼女を彼の翼で包んでいる。
Make no attempt to see her again:       彼女に会おうとしないほうが良い。」
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RAOUL:(ラウル)
If you didn't write it, who did?       お前たちがこれを書いていないとしたら、誰が書いたのだ?

(そこへカルロッタとピアンジが大そうな剣幕で支配人室へ入って来る。)


「オペラ座の怪人」第1幕 第7場

2021-07-27 | 趣味

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舞台中央へと向かう階段が左右両側に配置されている。暗がりの中、両方向から十数名のバレリーナたちが、彼女たちの姿がようやく見える程度に明るいスポットライトを浴びながら落ち着かない様子で降りてくる。オーケストラピットと同じ高さに設置された舞台天井の渡り通路を大道具主任のブケが絞首刑に使う輪をしつらえたロープを持って下手から現れる。彼はバレリーナ達の上まで来ると、その輪を彼女たちの方へ垂らし声を出して脅す。

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"MAGICAL LASSO"

BUQUET:(ブケ)
Like yellow parchment is his skin…       彼の肌は黄色い羊皮の紙のようで
A great black hole served as the nose that never grew…       鼻は大きく黒い穴だった
You must be always on your guard, or he will catch you with his magical lasso!       常に気を付けていないと魔法の投げ縄に捕まるぞ

(と言ってブケはロープの輪を自分の首に掛ける。バレリーナ達は驚いて逃げ出す。すると、下手から渡り通路の上をブケの方へマダム・ジリーが近づいて忠告する。)

GIRY:(マダム・ジリー)
Those who speak of what they know find, too late, that prudent silence is wise.
知っていることを口に出す者は思慮深い沈黙が賢さだと後になって気づく
Joseph Buquet, hold your tongue - he will burn you with the heat of his eyes...
ジョゼフ・ブケ、口に気を付けないと彼に焼かれてしまうことになる
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マダム・ジリーの忠告を意に介さない様子のブケは、薄笑いの声を小さく出しながら上手へと通路を歩いて行く。舞台が暗くなり両側の階段が除かれ、第8場へと続く。





「オペラ座の怪人」第1幕 第6場

2021-07-22 | 趣味

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暗闇から突然激しいオルガンの音が聞こえると同時にそれを演奏している怪人がライトに照らされ、ボートの中で寝ているクリスティーンや怪人の部屋全体も見えるようになる。オルガンの音は20秒弱で終わり、その後、怪人とクリスティーンの中間あたりに置かれた猿の人形付きのオルゴール(プロローグでシャニュイ子爵=ラウルが落札したもの)がメロディーを奏でる(このメロディーは後の第2幕第1場で使われる「マスカレード(仮面舞踏会)」という曲ののメロディー)。

ボートの中で眠っていたクリスティーンが目を覚ます。そして昨夜のことを思い返す。

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"I REMEMBER / STRANGER THAN YOU DREAMT IT"

CHRISTINE:(クリスティーン)
I remember there was mist, swirling mist upon a vast, glassy lake...
霧が大きなガラスのような湖に渦巻くように出ていたのを覚えている
There were candles all around, and on the lake, there was a boat…
ろうそくが辺り一帯に灯っていて湖の上にはボートがあった
And in the boat, there was a man.
ボートの中には男の人がいた

(ここでクリスティーンはオルガンを机代わりにして一心に作曲に取り組んでいる怪人を目にする。そして気づかれないままに怪人に近づく。)

Who was that shape in the shadows?       影の中の姿は誰だったのかしら
Whose is that face in the mask?       仮面の下にあるその顔は誰なのかしら

(そして、とうとう彼女は怪人の仮面を外す。怪人は悲鳴を上げ、手で顔を隠す。)

PHANTOM:(怪人)
Damn you! You little prying Pandora!       くそー! 詮索好きのパンドラめ!
You little demon - is this what you wanted to see!       お前は悪魔だ -- お前が見たかったものはこれか

(右手で顔を隠しながら怪人は逃げるクリスティーンを追いかけて突き飛ばす。クリスティーンはその場にうつぶせに 倒れる。)

Curse you! You little lying Delilah!       呪ってやる お前は嘘つきのデリラだ
You little viper - now you cannot ever be free!       お前は毒蛇でもう自由になることはできない
Damn you... Curse you...       くそー! 呪ってやる

(恐ろしさに頭を抱えて立ち上がれないでいるクリスティーンに向かって怪人は罵りの言葉を吐き、彼女からやや離れたところに膝まづく。そして徐々に息が整ってくると、自分のことについて強い語気で話しながらクリスティーンに近づこうとする。)

Stranger than you dreamt it       思っていたよりも醜いだろう
Can you even dare to look or bear to think of me       あえて私を見る、あるいは私のことを考えることができるだろうか
This loathsome gargoyle, who burns in hell,       地獄で焼かれた顔の怪物を・・・
But secretly yearns for heaven, secretly... secretly...       しかし、密かに天国に憧れているのだ

(クリスティーンは上半身を起こし、顔を怪人の方に少し向けながら聞く。この頃になると怪人の激しい怒りは影を潜め、説得の口調になる。一瞬クリスティーンは怪人に対する哀れみのような表情を見せるが恐ろしさも消せないでいる。怪人はクリスティーンに四つん這いのような格好で近づくがクリスティーンは下半身を引きずったまま後ずさりをする。)

But, Christine. クリスティーン
Fear can turn to love - you'll learn to see,       恐れは愛へと変わることもあるーーお前は分かるだろう
To find the man behind the monster,       怪物の裏側にいる男が、
This repulsive carcass, who seems a beast,       野獣のように見えるおぞましい男が
But secretly dreams of beauty, secretly… secretly…      密かに美しさを夢見ていることを

(上半身を起こしたままでクリスティーンは恐れと同情の入り混じった表情を怪人へと向ける。)

Oh, Christine… No.       ああ、クリスティーン。いや、だめだ。

(怪人は自分の思いを告げたことを後悔したのか、思いが届かないと諦めているのか、このように彼女の名を呼んで話を終える。
クリスティーンの表情は恐れから悲しみと哀れみが混在したものへと変わっていて、彼女は身近に落ちていた怪人の仮面を拾い上げ彼に渡す。
怪人は受け取り再びそれで顔を隠すとクリスティーンの手を取り、次のように言いながら彼女を部屋から連れ出す。)

Come, we must return – those two fools who run the theatre will be missing you.
戻らなければならない -- 劇場経営のあの2人のバカがお前を探しているだろうから。
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二人が上手に去る途中で照明がフェードアウトして第6場が終了する。暗い中、短い時間でセットが入れ替えられ第7場へと続く。


「オペラ座の怪人」第1幕 第5場

2021-07-20 | 趣味

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(怪人に鼓舞・激励されるかのようにクリスティーンは発声練習をし、最高音に達する。怪人はパイプオルガンを演奏しながら自分の気持ちを激しく吐露し始める。)

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"INTRO TO THE MUSIC OF THE NIGHT"

PHANTOM:(怪人)
I have brought you to the seat of sweet music's throne...       お前を甘美なる音楽の王座へと連れてきた
To this kingdom where all must pay homage to music... music...       全てのものが音楽へ敬意を払わなばならないこの王国へと

(怪人はオルガンから手を放し、クリスティーンを指さし・・・)

You have come here, for one purpose, and one alone...       お前はここに、一つの目的のため一人でやってきた
Since the moment I first heard you sing,       初めてお前が歌うのを聞いてから
I have needed you with me, to serve me to sing, for my music, my music
私はお前が私の傍で、私に仕え、私の音楽のために歌うのを必要としていた
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(ここで、怪人の口調が激しいものから説明するような、あるいは説得するようなものに変化する。)

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"THE MUSIC OF THE NIGHT"

PHANTOM:(怪人)
Night-time sharpens, heightens each sensation…       夜はそれぞれの感覚を研ぎ澄まし高める
Darkness stirs and wakes imagination...       闇が想像をかき回し目覚めさせる
Silently the senses abandon their defences...       静かに感覚は防御を捨てる
Slowly, gently night unfurls its splendour...       ゆっくりと優しく夜はその素晴らしさを広げる

(怪人はオルガンから離れ、クリスティーに近づく。)

Grasp it, Sense it - tremulous and tender...       優しく震えるそれを掴み、それを感じるのだ
Turn your face away from the garish light of day,       けばけばしい昼の光から顔を背け
Turn your thoughts away from cold, unfeeling light,       冷たく感覚のない光から思いを遠ざけ
And listen to the music of the night...       そして夜の音楽に耳を傾けるのだ
Close your eyes and surrender to your darkest dreams!       目を閉じ、暗闇にある夢に身を委ねるのだ
Purge your thoughts of the life you knew before!       これまでの世界に対する思いを清めるのだ
Close your eyes, let your spirit start to soar!       目を閉じ、魂を高く舞い上がらせるのだ
And you'll live as you've never lived before".       そうすれば永遠の命を持つだろう

Softly, deftly, music shall surround you...       そっと、そして巧みに音楽はお前を囲む
Feel it, hear it, closing in around you...       それを感じ、それを聞き、自分の周りに閉じ込めるのだ
Open up your mind, let your fantasies unwind in this darkness       心を開き、この闇の中で空想を解き放つのだ
Which you know you cannot fight –       その闇は抗うことのできない
The darkness of the music of the night...       夜の音楽の闇なのだ

(クリスティーンは怪人の説得を聞きながらも、仮面の下にある素顔が気になり、それを取ろうとするが怪人にかわされる。怪人は更に自分の音楽に対する、そしてクリスティーンに対する思いを語り続ける。)

Let your mind start a journey through a strange, new world!       お前の心を不思議で新しい世界へ旅立たせるのだ
Leave all thoughts of the world you knew before!       以前いた世界への思いを全て手放し
Let your soul take you where you long to be!       お前の魂がいたいと思ってきた場所へと行かせるのだ
Only then can you belong to me...       そうすることでお前は私のものになる

(怪人はクリスティーンの後ろから彼女の左肩越しに前の方へと左腕を伸ばし、半ば気を失いかけているクリスティーンの頭を抱くような恰好になる。クリスティーンは目を閉じ、頭を怪人の左肩に預ける。怪人はなおも語り続ける。)

Floating, falling, sweet intoxication!       浮いたり、沈んだり、甘美な陶酔
Touch me, trust me, savour each sensation!       私に触れ、私を信じ、それぞれの感覚を味わうのだ

(クリスティーンは頭を怪人の左肩に預けながら無意識のうちに右手を仮面へと伸ばすが、怪人は彼女の手首をつかみ仮面を外させまいとする。この動きがあってクリスティーンは目を開けた状態になる。怪人はクリスティーンの手を取りながらなおも彼女への説得を続ける。)

Let the dream begin, let your darker side give in       夢を始めさせ、お前の影の部分を降伏させるのだ
To the power of the music that I write –       私が書く音楽の力へと
The power of the music of the night...       夜の音楽の力へと

(クリスティーンは怪人の手に促されるように顔を遠くへと向け夢見るような表情を見せる。怪人が後ろから彼女の左側に回り込み、右手で彼女の左腕を掴むとクリスティーンは気を失い倒れ掛かる。怪人は彼女を抱きかかえボートへと運びそこに寝せる。そして舞台の中央で最後の一人語りをする。)

You alone can make my song take flight       お前だけが私の歌を飛び立たせることができるのだ
- help me make the music of the night...       夜の音楽を作る助けとなってほしい
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怪人を照らしているスポットライトがフェードアウトし、舞台は燭台の光だけが見える状態になって第5場の終了。クリスティーンはボートで寝ている状態のまま、怪人はオルガンの位置へと移動することで第6場へと続く。

※ハー・マジェスティー劇場等で行われる公演では、クリスティーンが気を失う場面は次のようになっている。
"THE MUSIC OF THE NIGHT" の最終部分で怪人は次のことばを語りながら、クリスティーンをパイプオルガンの反対側(下手側)にあるダストカバーの掛かった鏡の前へとゆっくり連れて行く。
Let the dream begin, let your darker side give in 夢を始めさせ、お前の影の部分を降伏させるのだ
To the power of the music that I write – 私が書く音楽の力へと
The power of the music of the night... 夜の音楽の力へと
ここで、怪人はダストカバーを外す。すると鏡の中にはウェディングドレスを着たクリスティーン(もちろん別な人物が演じている)が現れる。クリスティーンが鏡に近づくと、鏡の中の人物が突然両手を差し延べ、クリスティーンは驚いて気を失う。
※このような演出で、どのような形でクリスティーンを自分のものにするかという怪人の願望が我々聴衆にはっきりと示される。

※また、怪人が歌う "THE MUSIC OF THE NIGHT" には別な歌詞がある(次の下線部が25周年記念公演とは違う部分)。
Slowly, gently, night unfurls its splendour
Grasp it, sense it, tremulous and tender
Hearing is believing, music is deceiving
Hard as lightning, soft as candle light
Dare you trust the music of the night

Close your eyes for your eyes will only tell the truth
And the truth isn't what you want to see
In the dark it is easy to pretend
That the truth is what it ought to be

Softly, deftly, music shall caress you
Hear it, feel it, secretly possess you
Open up you mind, let your fantasies unwind
In this darkness which you know you cannot fight
The darkness of the music of the night

Close your eyes, start a journey
Through a strange, new world
Leave all thoughts of the world you knew before
Cloe your eyes and let music set you free
Only the can you belong to me