「メジャーの打法」~ブログ編

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「F」の発音

2008年11月27日 | どうでもいい話
 外国選手の名前や外来語をカナ書きするときは、結構迷う。

 「現地の発音になるべく忠実に・・・」というのが基本だろうが、Sergioをブラジル出身ならセルジオ、スペイン出身ならセルヒオと書くとなると厄介だ。ラテン系の選手がアメリカで活躍するばあい、「現地」とはどこのことを言うのだろう。綴りの影響も無視できない。Caminitiをケマネッティと書かれたときは「誰のことか?」と思った。やはりカミニティのほうが通りがいい。
 ・・・で最近は結局、「自分はどう発音するか」に重きを置くようになった。Cobb、Gehrigは一時カッブ、ゲーリッグと書いていたのを、カップ、ゲーリックにもどした。「V」も下唇を噛むわけではないから、エヴァンスなどとは書かない。「Fa・・・」や「Ti」はマチマチだ。coffeeはコーヒーだが、Philliesはフィリーズ、teaはティーだが、Athleticsはアスレチックス・・・てな具合。

 MXテレビのアナウンサー上田万由子が「ファ・・・」を発音するときに下唇を噛んでいたのにはたまげた。英語ができるところを見せたつもりかもしれないが、言語学者・大野晋によれば「昔の日本人はハヒフヘホをファフィフフェフォと発音していた」というから、音韻論的には先祖返りなんだよ、マユマユ。ロック歌手なんかが英語っぽい日本語で歌うのも、せいぜいダサカッコイイどまり、ってことだ。

 大野晋の話には「なぜ昔の日本人の発音がわかるのか?」についての説明がなく、聞いたときから疑問に思っていた。この際だから調べてみたところ、『日本語はいかにして成立したか』(中公文庫)p153-155に明快な説明があった。以下はその引用。


 こういう古い時代の発音をどうして知るかであるが、昔の発音に関する文献は意外に多いものである。たとえばハヒフヘホの音である。今日の発音では、これをhahihuhehoと発音するが、四、五百年前にはこの発音は今と違っていた。室町時代末期に来朝して、キリスト教を広めた宣教師たちがローマ字で日本語を表記した文献では、応答の言葉をAàとかHàとか書いている。これは、アア、ハアという感動詞で、今日の発音と同じと思われる。ところが「花」とか「人」とかはfana、fitoと書いている。そして、コリヤードの『日本文典』(一六三二年刊)には、ハヒフヘホの子音について「歯と唇とは完全にではないが幾分重ね合わせて閉じられる」と書いてある。また、「hとfとの中間音であって」と書いている。他には有名な後柏原天皇の「なぞだて」がある。
はゝには二たびあひたれどもちゝには一度もあはず


 この謎々の答えは、「唇」で、それは「母(はは)」という発音では、唇は二度合うけれども、「父(ちち)」という発音では、唇は一度も合うことがないというのがそのこころである。つまり、当時のハの音は、現在とは違って、口笛を吹くときのように、上下の唇を近づけて発する「F」という音に近い子音を持っていた。そのことがこのなぞによって知られる。・・・(中略)・・・ これらの資料を見ると、ハの音に限らず、当時のハ行の発音の仕方が、今日とは相違してFaFiFuFeFoファフィフフェフォのような音であったことが理解される。



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