野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

地形図の話 ~尾根と谷~

2016年01月24日 | 地形図の話
平塚さんの本「地図の読み方」には「山は尾根と谷でできている」という題があります。地形図を読む上で最も大切なのはこの「山は尾根と谷でできている」ということを理解することです。山の地形には色々な要素がありますが、大きく分けて見れば尾根と谷で成り立っており、それ以外に山頂と鞍部も尾根と谷の関係を知る上で重要です。ほかにも窪地なんかがありますが、これはあくまでイレギュラーなものと考えて下さい。ここでは尾根と谷について平塚さんの本をざっくり簡略化して考えてみます。しっかりとした知識を身に付けたい人はとにかく平塚さんの本を読んでください。

1.尾根と谷

 まず山とは何か考えてみます。ウィキペディアなんかを見ると色々解説がありますが、ここでは地殻変動や火山活動によって地面が隆起した所を山とします。そして尾根も谷も、更には山頂も鞍部も山の一部です。
 
 つぎに尾根と谷の定義です。尾根と谷はそれぞれ、

 谷:水流や氷河などによって削られて低くなった(凹んだ)山の部分

 尾根:水流や氷河などによって削られて残った(相対的に)高くなった(出っ張った)山の部分

と考えられます。

 そして地形図上では

 谷:山頂・鞍部に向かって等高線が出っ張った部分

 尾根:山頂から外(下)に向かって等高線が出っ張った部分

で表現されます。奥武蔵のようななだらかで低い山が多いと尾根と谷の見極めが地形図上でしづらいことがあります。その際は山頂や鞍部まで辿って、どちら側に向かって等高線が出っ張っているかを確認しましょう。ボクが実地で見極めに迷った経験があるのは、雷電山から行風山へ向かった際ここの等高線の細い出っ張りが尾根なのか谷なのかという点です。結論を言ってしまうとここは谷です。出っ張っている方を見ていくと鞍部にぶつかります。なお逆に辿っていくと青い線(水線)が引かれていて雀川ダムへ流れ込んでいます。谷は水流が削った部分であり、下っていくと沢や川などの水の流れとなっていることが多くあります。そこでボクは山記事ではしばしば谷のことを沢あるいは沢地形と記しています。「奥武蔵へようこそ」などを読んだとき、沢と書いてあったら谷のことを指しています。

横倉林道からウノタワへの道を上がった所 このように周囲が高くなっている所を谷という なお中央の低い所に水の流れがある)


大持山の肩から山頂へ向かう所 周囲が低くなっている所を尾根という なお大持山と横倉山を結ぶ尾根なので、稜線でもある)

2.山頂と鞍部

 山を地形という観点から考えると尾根と谷でできているわけですが、では山頂あるいは鞍部は尾根あるいは谷とどんな関係にあるのでしょうか。まず山頂・鞍部の定義はそれぞれ

 山頂:尾根と谷が一点に集中する、山で一番高くなった部分

 鞍部:山頂と山頂をつなぐ尾根の中で一番低くなった部分(同時に谷が発する所でもある)

と考えられます。地形図上で表すと

 山頂:等高線で囲われた部分(但し地形図には表現されない山頂もある

 鞍部:尾根と尾根の出っ張りがぶつかる部分

となります。山頂に立つと踏み跡は通常尾根の上に付けられているので、山頂は尾根が集まってくる所であることは容易にわかります。同時に谷が集まっている所でもあるのですが、こちらはちょっとわかりづらいかもしれません。ただ尾根がある所は必然的に谷があるので、山頂は尾根と谷が集まる所となっているのです。なお山頂はピークとも云います。鞍部は山頂と山頂をつなぐ尾根で一番低くなった所で、この山頂と山頂をつなぐ尾根を稜線と云います。鞍部には尾根を横切る形で谷が両側にできあがります。鞍部は山頂と山頂をつなぐ尾根で一番低い所なので、尾根を越えるのに都合が良い場所とも云えます。そこで鞍部には峠道が作られることが多く、また鞍部のことをとも呼びます。なお英語読みからコルと呼ばれることもあります。
 
旧正丸峠 このように鞍部には峠道が越えていることが多い)

3.尾根・沢の特徴

 色々な特徴がありますが、覚えておけばよいのは、尾根は山頂から麓に向かって無数に分かれていく、ということです。逆に沢は麓から山頂・鞍部に向かって無数に分かれていきます。これは元々一本の尾根であったものが水流によって削られて複数の尾根となっていくという山の成り立ちと関係しています。そしてこの特徴を山歩きに応用すると、尾根は登るにつれて支尾根を吸収して一つの尾根となり、山頂へ到達します。逆に沢は下るにつれて枝沢が合流し、やがて一本の川になります。つまり尾根は登りだと一本道となり、沢は下りだと一本道になります。尾根は登りのほうが簡単で、沢は下りのほうが簡単だと言われるのはこのためです。そしてコンパスを使う場面が多いのは圧倒的に尾根は下り、沢は登りとなります。

ウノタワへ向かう谷と大持山へ向かう谷が分かれる所 このように谷は登るにつれて枝沢を分けていく なお正面の谷は大持山へ、左下の看板側はウノタワへ向かう)

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (奥武蔵の山人)
2016-01-27 19:50:41
こんばんは

とても分かりやすく上手な説明の展開、
ありがとうございます。
自分が行ったことのある
ウノタワ、大持山近辺は
なるほど そうだったのですねと
納得しました。
等高線と現地の写真の組み合わせも
良いですね!!
返信する
コメントありがとうございます (tokoro)
2016-01-27 20:15:12
山人さん、いつもお世話になっております。

>とても分かりやすく上手な説明の展開
自分としてはちょっと簡略化しすぎたのでは?
とも思ったのですが、
ニュアンスが伝わっているようでちょっと安心しました。

>自分が行ったことのあるウノタワ、大持山近辺は
ウノタワを選んだのは本当に偶然でして、
実は普段登りに沢を通らないので、適当な写真が無かったんですよね。
でも山人さんには馴染みのある所でちょうど良かったと思います。
返信する

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