野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

奥武蔵へようこそ 平成29年9月3日 残暑の奥武蔵 ウノタワから武甲山

2017年09月07日 | 奥武蔵へようこそ
(横倉沢の小滝)
9月に入って最初の日曜日。長雨と涼しい日が続いた8月が終わると暑さと共に太陽も戻ってきた。台風の影響もそれほど受けることなく、一日天気が安定しそうだとの予報を聞いて、4か月ぶりに山歩きに行くことにした。当初はちょっと遠出をしようかとも思っていたのだが、だいぶ体力も落ちているだろうと考え、歩き慣れたウノタワから武甲山のルートにした。すべて一般かつ既踏のルートではあるが、夏場に歩くのは初めてで、その点で楽しみである。

西武池袋線に乗り、入間市駅を過ぎると奥武蔵の山が一瞬だけ一望できる。夏場は霞んで薄らとしか見えないことが多いのだが、今日は明瞭に見える。これまで残暑の奥武蔵というと大抵曇天が多かった(平成24年9月1日かまど山から大高山平成24年9月16日加治丘陵平成26年9月15日嵐山町から物見山を歩く)ので、今日は望外の展望も期待できそうだ。飯能駅からは約2年ぶりに湯ノ沢行きの国際興業バスに乗る。席が埋まる程度の混み具合で比較的若い世代が多い。もう山歩きは中高年のレジャーから脱却して国民的なレジャーとなったのだなと感じる。さわらびの湯で大半を降ろし、名郷で降りたのはボクを入れて7,8人といった程度。珍しく他の人たちがのんびりと準備していたので、最初に出発する。

民家が立ち並ぶ名郷集落に入ると冴えた青空が迎えてくれる。所沢を出る頃には感じたまとわりつくような湿った空気もここでは感じない。むしろ長袖シャツを羽織っていても肌寒さを感じるくらいだ。この涼しさがどこまで続いてくれるだろうか。集落を過ぎると名栗川沿いに大鳩園のキャンプ場が広がる。色とりどりのテントが並び、かなり人も多い。普段夏場にこの林道を歩くのは避けているので、こんなに人出が多いのはGWの頃に歩いたとき以来だ。

(快晴の名郷地区)

大場戸橋のある分岐で妻坂峠方面へと入る。もう一方の鳥首峠へはしばらく歩いていない。白岩にあったJFEミネラルの工場が廃止になったそうだが、どんな様子になっているのだろうか。名栗川(山中入)沿いに付けられた林道は背丈の高い樹木に覆われ、残暑の強い日差しを遮ってくれる。眼下を流れる川は夏の長雨の影響なのか水量が豊富で、ドウドウという轟音を立てている。涼しげというよりは少々不安を感じさせるほどだ。山中地区手前のヘアピンカーブでいつものように水を汲む。1.5リットルを汲むとやはり重い。それでもこの長い林道を大量の水を背負って歩くよりは余程良い。

(名栗川(山中入) 水量は豊富)

ヘアピンカーブを過ぎると分岐のある山中地区だ。左に入ると杉木立の中に住居跡の石垣がある。今では杉が育って住居跡は完全に日陰の中にあるが、人が住んでいた頃はどうやって日差しを確保していたのだろうか。山中からウノタワの登山口までは無数の細い沢が流れ込んでいる。水量の少ない時期でもそれなりの流れがあったのだが、今日は普段涸れ沢なのではと思うような急な所からも流れ出している。砂防ダムをいくつかのヘアピンカーブで越えるとようやくウノタワの登山口に着く。

(山中地区付近 鬱蒼とした杉林で涼しい)


(林道脇の小さな滝 2年前に歩いたときもこの小滝はあった)

まずは横倉沢(ナギノ入)の左岸を登っていく。少し進むと踏み跡は右岸を行く。当然渡渉が必要となるのだが、前回歩いたときは流れが細く、それほど問題にはならなかった。ところが今日は思ったよりも増水しており、靴を濡らさなければ渡ることができない。幸い防水の効いた靴だったので、中まで濡れることはなかった。沢沿いの道は落葉樹の木陰が涼しく、急坂もそれほど気にはならない。登るにつれて流れは細くなり、苔生した石が目立つようになる。前回歩いたときに何故こんなにも苔が多いのだろうかと疑問に思ったのだが、今日歩いてみて合点がいった。沢沿いで常に適量の水分が得られ、それでいて木陰が適度な日光を与えてくれる。また傾斜がそれなりに急で落ち葉が溜まりにくいのも苔の生育に適しているのだろう。

(ウノタワへ向けて横倉沢を登る)

ハシリドコロの看板がある沢の分岐を左に入り、更に傾斜の増した道を登っていく。道の側では緑に色付いた岩の間を小さな滝が幾筋もの白い流れを作って落ちていく。引きで見れば大したことのない景色なのかもしれないが、流れに手が触れられるほどに近寄れることでそのミクロな美しさを体験することができる。それがこのルートの醍醐味だ。沢を離れると急な尾根の登りとなる。ここも木陰で日差しが遮られ、思ったよりも暑くはない。ただ沢沿いに比べると谷を吹き下ろす風が無い分だけ暑く感じる。

(ハシリドコロの看板がある沢の分岐 苔生した石が多い)


(踏み跡のすぐそばに流れがあり、小滝に触れることもできる)


(尾根道に入ると更に急な斜面に感じる)

しばらく我慢して尾根道を登っていくと一旦尾根に入ってから小さくなっていた沢の音が不意に大きくなる。前回伏流でもあるのだろうと推測したのだが、実際は下で流れる沢の音が谷を反響して聞こえてくるだけだったようだ。そして沢音が大きくなると左手に苔生した大量の石が現れる。この苔庭はウノタワ直登ルートの大きな見せ場の一つだ。中高年のご夫婦だろうか、夫らしき男性が熱心に写真を撮っている。確かにここは離れがたい景色ではある。



(苔庭)

苔庭を過ぎると道は左へと進路を変え、トラバース気味に登っていく。傾斜が緩むとウノタワの北の縁に出る。前回は縁の上を辿っていったが、今日はそのまま縁を乗り越してウノタワへと入る。ウノタワの窪地に下りると地面は芝と苔に覆われ、周りを囲む木々も緑一色である。紅葉と冬枯れの時期以外は訪れたことがなかったので、何度も訪れている所であるのに新鮮な心持がした。

(このルートは一貫して落葉樹が美しい)


(ウノタワへ下りる)


(ウノタワ パノラマ撮影でも広さは伝わりにくい)

ウノタワから大持山へ、まずは急な登りが待ち受ける。ここはいつも苦労させられる所なのだが、落葉していない夏場は踏み跡が明瞭で意外と歩きやすい。ここを登りきると東に開けた展望スペースがあり、葉が生い茂る夏場でも前武川岳と伊豆ヶ岳・古御岳を望むことができる。展望地から先、横倉山までは落葉樹の森が続く。狭い範囲ではあるが、奥武蔵の中でも最も紅葉が綺麗な所だ。今日のような夏場は鬱蒼とした木々が日陰を作り、暑さに苦しめられることはない。森林浴を楽しみながら進むと山頂標識が付けられた横倉山(1197)に着く。

(ウノタワ上の展望スペースから 中央は伊豆ヶ岳と古御岳)


(穏やかな尾根道 秋は紅葉の名所だ)




(秋は足元のアセビ?が良いアクセントになる)


(横倉山 プレートがなければ山頂とはわからない)

横倉山からやや大きく下り、大持山の肩に向けて急坂に取り付く。今日一番の厳しい登りだ。傾斜が急なのでついつい足元ばかり見ていると見慣れない花を見かける。小さな花びらがラッパ状で紫と白のツートンになっている。花は全く詳しくないのだが、ネットの情報によるとママコナという種類の花らしい。花に慰められながら登っていくと右手が開けてきて大持山の肩に出る。東に大きな展望が開け、武川岳から蕨山辺りまでが見渡せる。気温が上がり、湿度も高くなってきたのか、あまり遠望は利かない。それでも夏場にこれだけ見えれば十分だろう。落葉樹と檜に挟まれた尾根道を行くと大持山(1294.1)頂上に着く。南西が少し開けた山頂なので、日差しがよくてかなり暑い。夏場は休憩に適しているとは言い難い。

(ママコナという花らしい)


(大持山の肩が見えてきた)




(大持山の肩からの眺め)


(大持山の肩から頂上へ向かって 穏やかな尾根道はここまで)


(大持山頂上)

大持山から小持山の間は小さなアップダウンのある岩尾根で、歩き慣れているとはいえ、やはり緊張を強いられる所はある。初めて歩く人はできるだけ巻いていったほうが良いだろう。巻き道を行ったとしても展望の良い岩場の上に出られるように道が付けられている。但し途中にある雨乞岩は西側へ張り出しているので、特に小持山から来た場合に見落としてしまう人が多いようだ。雨乞岩からの奥多摩・両神山方面の眺めも相変わらず良い。武甲山を見渡せる展望地を過ぎると二か所岩場があるが、これらも巻くことで安全に通過できる。やがて開けた岩場の小平地が見えてくればそこが小持山(1273)頂上である。アカヤシオなどの灌木類が多い山頂ではあるが、大持山に比べると日陰の部分が大きい。ザックを下ろして麦茶を摂っていると同年代の男性がやってくる。男性は一の鳥居にクルマを置いて武甲山からの周回コースを歩いているという。クルマがあれば周回コースがやっぱり良いのだろうね。でも山中からウノタワのルートも捨てがたいのだ。





(アップダウンが多く、岩がちな尾根)


(展望の良い岩場から 左の平たい山が武川岳 その手前に妻坂峠)


(雨乞岩 うっかりすると見落としてしまう)




(雨乞岩からの眺め)


(雨乞岩を過ぎると武甲山が姿を現す)




(これらの岩は巻くことが可能 でも上の岩場は巻き道を見落としがち)


(小持山頂上)

小持山から北へまずは急な下りが続く。普段歩いている冬場は道が凍結していることもあって歩き難い所なのだが、夏場も決して楽な道のりではない。難しい岩場は巻き道が設けられているのだが、小持山から下りてくるとどうしても分岐を見逃して岩場を下ることになってしまう。傾斜の緩やかな防火帯へ下りてくると武甲山への登り返しが途端に面倒になる。防火帯の登りは暑そうだし、かといってシラジクボから巻き道を行っては前回と同じで芸がないようにも感じる。

(小持山からの武甲山)


(小持山からしばらくは急な岩尾根が続く)




(シラジクボ付近の防火帯)

日差しが照り付けるシラジクボへ下り、武甲山への道を見上げると、意外にも踏み跡部分は木陰が多そうだ。計画通り、武甲山へ登るとしよう。シラジクボから武甲山への登りはそれほど傾斜が急な訳ではないのだが、標高差は200メートル近くあるため、楽な道のりでもない。踏み跡は傾斜が比較的緩い所では真直ぐに付けられ、木陰も多い。逆に傾斜が急な所では九十九折に付けられているので日なたの部分を歩かざるえないときもある。冬場歩いたときは山頂に近づくにつれてバイケイソウの葉が目立っていたのだが、夏場は他の草の勢いが強く、結局武甲山の肩に着くまでバイケイソウの姿を見ることはできなかった。

(シラジクボ ベンチなどはなく、また狭いので、休憩には適さない)




(武甲山頂上へ向かって広い防火帯を登る 意外と日陰は多い)

浦山口・一の鳥居方面との分岐になっている武甲山の肩から山頂へかけては鬱蒼とした檜の林だ。登山者によってあちこち踏み固められて錯綜した踏み跡を辿るとベンチやトイレ、休憩舎が設置された広場に出る。ここまで来ると流石に人が多い。余計な装飾の無い武甲山御嶽神社の奥社を過ぎると山頂にある展望台への道が延びる。二つの展望台があるのだが、東の展望台は狭いので、今回も西にある展望台にだけ寄っていく。滑りやすい岩場を越えるとフェンスの向こうに北側の展望が大きく開ける。山頂は両展望台の間に挟まれたフェンスの中にあり、入ることができないので、ボクはここを事実上の武甲山頂上(1304)としている。中国からの観光客だろうか、とにかく騒々しい。学生時代、中国語を学んでいた友人から中国語を習うと声が大きくなるとよく言われたものだ。確かに皆声が大きい。ただ昨今言われているようなマナーの悪さを感じることはない。日本人が山頂標識で写真撮影をしていれば空くまで待っているし、ゴミをあたりかまわず捨てたりしているわけでもない。結局外国人観光客の問題というのは一部の人間の悪目立ちであったり、文化の違いに起因することが大きいのだろう。

(武甲山の肩 分岐としても重要)


(武甲山御嶽神社)


(武甲山の第二展望台)


(展望台からの眺め)

広場に戻り、30分ほどかけて昼食を取ってから下山に取り掛かる。武甲山の肩から長者屋敷尾根へ向かってトラバースを繰り返しながら下っていく。明るいカラマツ林を抜け、急斜面を下りきると展望の得られる植林帯に出る。登山者が多く、追い抜いたり追い抜かれたりと忙しい。植林帯を過ぎると再び急な下り。ここを慎重に下れば小平地である長者屋敷ノ頭だ。以前はよくここで休憩を取り、水場へ寄って行ったものだが、湧き水が砂っぽくなってからは水場へ寄らなくなってしまった。今日も休憩を取らずに下っていく。サクラ・カラマツが植えられた急な尾根を下りきると比較的傾斜が緩い長い坂となる。北側は下草が生えた広い落葉樹林帯で、これを横目にゆっくりと下っていくのも悪くない。

(カラマツ林を下る 短い区間だが美しい)


(植林帯から両神山を望む)


(長者屋敷ノ頭)


(カラマツと桜が植えられた長者屋敷尾根)


(尾根から広い落葉樹林帯を見下ろす)

立入禁止のロープが張られているのが見えてきたら杉林の九十九折に差し掛かる。下っているときはとにかく単調で長く感じる所なのだが、実際は200メートルの標高差を20分ほどで下ってしまえるのだから、かなり歩きやすい部類と言える。下りきった所が長者屋敷登り口で橋立川と伊勢岩の滝が近くにある。滝の見える所で休憩を取った後はノンストップで橋立川沿いに付けられた長い林道を下っていく。大持山も武甲山ももう少し林道歩きが短いと歩きやすくなるんだろうけれどねぇ…。浦山口駅から電車に乗り込むところで普段なら旅は終わりなのだが、今日はまだもう一つ楽しみが残っている。それは西武秩父駅に併設された温泉施設「祭の湯」がオープンしたことだ。御花畑駅から西武秩父駅への連絡通路を歩いていくと以前仲見世通りがあった所には黒いシックな建物の温泉施設が建ち、売店や飲食店はより駅に近いほうへと移動された。温泉には入らなかったので詳細はわからないが、飲食店街はショッピングモールにあるようなフードコートに変わり、売店は場所が集約されて秩父駅の地場産業センターの雰囲気に近くなった。仲見世時代もお客は多かったが、通りが無くなった分、混雑度はかなり増したようにも感じた。今日はお土産を買うことしかできなかったので、次はのんびり温泉に浸かることを誓いつつ、飯能駅行きの電車に乗り込んだ。

(伊勢岩の滝)


(橋立川 やはり水量が多かった)


(橋立地区 いずれは橋立堂や鍾乳洞も紹介したいところ)


(西武秩父駅 右手奥が祭の湯)

DATA:
飯能駅(国際興業バス)名郷8:10→8:23大場戸橋→8:54山中地区→9:17ウノタワ入口→9:43苔庭→10:02ウノタワ→10:32横倉山→10:50大持山→11:06雨乞岩→11:27小持山→12:02シラジクボ→12:34武甲山13:09→13:34長者屋敷ノ頭→14:09長者屋敷登り口(伊勢岩の滝)→14:49橋立地区(橋立堂)→15:00浦山口駅

地形図 正丸峠 原市場 秩父

トイレ 名郷バス停 武甲山頂直下(但し冬季は使えません)

水場 山中地区手前ヘアピンカーブ(但し水質は保証できません

交通機関 
西武池袋線 小手指~飯能 240円
国際興業バス 飯能駅北口~名郷 810円
秩父鉄道秩父線 浦山口~御花畑 240円
西武秩父・池袋線 西武秩父~小手指 500円

シラジクボからのエスケープとしては持山寺跡ルートと武甲山の巻き道が使えます。持山寺跡ルートは踏み跡が明瞭で安全性は高めですが、ダンプが行き交う長い林道歩きを強いられます。武甲山の巻き道は道が不明瞭で崩壊している所がありますが、浦山口駅へ出るのに便利です。

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