野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

奥武蔵へようこそ 平成28年12月25日 正丸駅から浦山口駅 ~武川岳と大持山~

2016年12月30日 | 奥武蔵へようこそ
(スゲ沢分岐を過ぎた辺り)

今年は山が最も美しい秋に歩くことができなかった。そこで日の短い時期ではあるが、久しぶりに長めのルートを歩いてみたい。長めのルートなら歩き慣れた所が良いだろうと武川岳から小持山への縦走を計画した。未踏区間となっている名栗げんきプラザから武川岳の間と遭難事故を起こして以来使っていなかった武甲山の巻き道(シラジクボ~長者屋敷の頭)を歩く予定だ。

始発電車で正丸駅に降りると周囲はまだ夜明け前。ヘッドランプの準備に10分ほど手間取っている間に一緒に降りた人たちは皆出発してしまったようだ。意外に朝早くから出かける人が多い。暗い大蔵山集落の車道を進むと長岩峠・伊豆ヶ岳方面と正丸峠方面の分岐である馬頭さまに着く。当初直接長岩峠へ向かう予定だったが、久しぶりの山歩きなので、傾斜が緩い正丸峠経由の道を選ぶことにする。

(正丸駅)

集落の終点から杉林の暗い道を行く。馬頭さまでヘッドランプは仕舞っていたのだが、特に問題なく歩ける明るさにはなっている。芦沢沿いにつけられた踏み跡は流れが緩やかなこともあってかよく整備されている。両岸は切り立った崖になっていて、お昼頃なら渓谷美も楽しめそうだ。但しボクがここを歩くのはいつも朝早くか夕方で谷に陽が射しこんでいるのを見たことはない。砂防ダムを過ぎ、頭上に白いガードレールが見えてくれると正丸峠は近い。最後の急な木段を登りきれば奥村茶屋の建つ正丸峠に着く。朝のうちは曇るとの予報だったが、茶屋の脇からは都心のビル群がよく見える。

(峠道に入る)


(奥村茶屋脇からの眺め)

茶屋裏から尾根伝いに長岩峠を目指す。終始緩やかな尾根道で鈍った体にはちょうど良い。あとは陽が上がってもう少し暖かくなれば歩くのも楽なのだが。やがてベンチのある小広いピークに着く。小高山(720)だ。雑木林に覆われており、冬枯れの時期限定で蔦岩山から二子山までの眺めが得られる。ここは西風の直撃を受けるので休まずに名栗げんきプラザを目指す。

(緩やかな尾根道を行く)


(小高山頂上)


(小高山からの眺め 左端は蔦岩山 中央右寄りに二子山 その右の鉄塔の建つ山が甲仁田山)

小高山から下った鞍部が長岩峠だ。地形図を見ると名栗げんきプラザへは沢沿いに下っているが、実際には西に延びる尾根を下っていく。栂らしき二本の樹が立つツガの木台までは比較的緩やかな道だ。栂は常緑樹だが、周囲は明るい。ここを過ぎると怖さすら感じる急坂の下りとなる。永井谷林道へ下れば県道53号(青梅秩父)線に出る。名栗から秩父へ抜ける車道で大型ダンプトラックが意外と多く行き交う。山伏峠方面へ進むとすぐに名栗げんきプラザの入口に着く。

(長岩峠)


(ツガの木台 奥に見えるのは蔦岩山)

敷地内の車道を進むと左手に薪を置く小屋掛けが見えてくる。その裏手が武川岳への道だ。山道を上がろうとすると駐車場にクルマを停めた男性が声を掛けてくる。どうやらここの職員さんだったようで、武川岳への道を教えてくれた。名栗げんきプラザの建物裏手に回るとそこからはジグザグに上がっていく。尾根に上がると展望台まで広い道が続く。北側が雑木林になっているので、新緑か紅葉の頃が美しいかもしれない。前方に大岩が見えてくるとベンチが置かれた展望台に着く。伊豆ヶ岳と古御岳が覗ける程度であまり大きな展望ではない。ここまで休みなく歩いてきたので、お茶を飲んで一息つく。

(名栗げんきプラザ)


(ここから展望台への道に入る)


(展望台)


(伊豆ヶ岳と古御岳)

展望台から先は緩やかな登りが続く。前方が開けてくると地形図にも描かれている林道に出る。向かいの斜面に道標が立ち、急斜面に土留めの木段が設置されている。ここから小ピークまでは九十九折を只管上がっていく。急斜面を登りきって小ピークを越えればしばらくは緩い尾根道となる。しかし見晴台のある909のピークへ向かって今日一番の厳しい道が待ち受ける。尾根の南側斜面をトラバースしながら上がっていくのだ。エアリアマップには難路を示す破線で描かれ、荒廃ぎみとすら書かれている。踏み跡の幅が狭いだけでなく、落ち葉で隠されていることが惑わせる原因となっている。何とか尾根に上がっても見晴台までは依然として急斜面が続く。ここをこなせば古びた道標が立つ見晴台に出る。見晴台といっても南側は少し開けている程度だ。手前に見えている尾根が山伏峠から前武川岳までのものとすると奥のやや尖った山は橋小屋の頭辺りだろうか。

(林道に出る)


(危険なトラバース 落ち葉で踏み跡がわかりにくい)


(見晴台)


(手前右は前武川岳 手前の尾根の鞍部の上に見えるのは橋小屋の頭辺りだと思うのだが)

見晴台のピークを過ぎれば武川岳までは緩やかな登り坂だ。標高差140メートルを距離1.1キロメートルかけて登ればよいので、平均斜度は7度くらいしかない。見晴台のピークから登り返した最初の小ピークが大栗沢ルートとの分岐である。道標が立ち、大栗沢ルートも見たところしっかりとしているようだ。ここを越えると武川岳まで冬枯れた雑木林の尾根が続く。ここも新緑か紅葉の頃が良いのだろう。但し冬枯れの道も山頂までの距離が測りやすいので、その点での利点は大きい。根元から倒れた大木を見送ると見慣れた武川岳(1051.7)に着く。60過ぎくらいの男性が一人いるだけで、珍しく静かな山頂だ。男性に話しかけると正丸駅から長岩峠を越えて、大栗沢林道を遡って武川岳に来たという。ボクと同じ電車で来たことになるからなかなかの健脚なのだろう。

(武川岳の周辺はこうした露岩が多い)


(大栗沢分岐 なお地形図に描かれているやや東寄りのジグザグの線は廃道になっている)


(蔦岩山が見える)


(緩やかな尾根道 葉の茂っている頃に歩いてみたいねぇ)


露岩の小ピーク


(あの奥が山頂だ)


(根元から倒れた大木)


(武川岳)

少しだけ休憩を取った程度で出発する。先はまだ長く、全体の3分の1を終えた程度なので急がないと下山する前に暗くなってしまう。雑木林の尾根を下っていき、二又の尾根は左に入る。妻坂峠へ下る手前はかなりの急坂だが、南東側が開けた斜面で大持山・小持山・武甲山を見渡せる。通い慣れた妻坂峠へと下ってくるとここ数年の雑然とした雰囲気がなくなり、以前のような静けさを取り戻していた。どうやら台風で倒れた倒木を綺麗に撤去してくれたようだ。峠に立つお地蔵様もきっとお喜びのことだろう。冬枯れの時期ということもあり、秩父側を見やると武甲山の脇から秩父の街を少しだけ望むことができる。写真を撮っていると同年代くらいのご夫婦が秩父側からやって来た。一の鳥居にクルマを置いて周回ルートを歩く人は年々多くなっているように感じる。今日は珍しく峠にいても風が無いのでついゆっくりとしてしまう。

(まずは雑木林の下り 右に見えるのは武甲山)


(ここにも露岩)


(妻坂峠手前の急斜面)


(急斜面からの眺め 大持山から武甲山までが見渡せる)


(妻坂峠 落ち着いた雰囲気を取り戻していた)


(峠のお地蔵様)


(峠から武甲山を見上げる)


(冬枯れの時期は秩父の街も見える)

ご夫婦が出発したところを見届けてこちらも歩き出す。最初こそ緩やかだが、すぐに道の中央に砂袋が埋められた急坂となる。500メートルほどの距離で標高差200メートルを上がってしまう所で、斜度は先ほどの見晴台から武川岳までのルートの3倍以上もある。大持山へ上がるルートはいくつかあるが一般ルートとしてはここが一番きついのではないだろうか。横倉林道からウノタワへ上がるルートも急斜面が続く。しかしここのように尾根を直登するのではなく、九十九折が続くので、地形図上で想像するよりはずっと楽なのだ。それに比べると九十九折がなく、歩き難い急斜面を真直ぐ登るこのルートはかなりきつい。時計の高度計を見ながらじっくり下っていると先行者に追いつく。但し先ほどのご夫婦ではなく、もっと年上の男性である。ボクよりもずっと前に妻坂峠を出発したのだろう。

(まずは緩やかな道 でもすぐに急になる)


(写真ではわかりにくがかなりの急斜面 中央に砂袋が詰められている)

標高が1050メートルを超える辺りに小ピークがあり、尾根が左へと曲がる。ここからは傾斜が緩み、フラットな尾根となるので一息入れる人も多い。今日も小ピークを越えた所で中高年のグループが休憩を取っていた。どうやら先ほど追いついた男性はこのグループに所属していたようだ。このグループを避けて少し先にある苔生した岩にザックを置いて一息入れる。すると先ほどのグループがボクを追い抜いていく。あの男性は相変わらず置いていかれている。男性が通り過ぎたところでこちらも出発する。この先、大持山の肩直前までは急な所がない。雑木林の多い所なので、新緑か紅葉の頃がお薦めだが、冬枯れの今も大持山から武甲山までの尾根を木の間越しに見ることができて悪くない。

(急斜面が終わればこうした緩やかな斜面が続く)


(大持山から武甲山)

大持山の肩直下のやや急な斜面でグループに追いつく。話を聞くと山梨から来たそうで、一の鳥居からの周回ルートを予定しているという。山梨の山はこの時期雪が多いのに比べるとこの辺りは雪が少ないので初心者が多い自分たちのグループには都合が良いとのことであった。そのままグループの後ろ付いていって大持山の肩に着く。相変わらず眺めが良く、奥武蔵の主要ピークはもちろん、遠く筑波山やスカイツリーなども肉眼が確認することができた。山梨のパーティもこの眺めには驚いたようだった。筑波山とスカイツリーは奥武蔵の山からはお馴染の存在であっても山梨の山からは望むことが難しいから当然のことなのかもしれない。ここで山梨のパーティとは別れて、カップラーメンを作って早めの昼食を取る。妻坂峠でも感じたようにここでも珍しく風が無い。しかも太陽が上がってきて暖かい陽だまりとなり、昼食を取るにはちょうど良かったのだ。

(大持山の肩から 奥に薄らと筑波山が見える)




(大持山の肩からのパノラマ)

昼食が終わり、時間を確認するとちょうど11時半を過ぎた辺り。武甲山へ寄り道するのは難しいが、予定通り浦山口へ下ることはできそうだ。冬枯れの尾根を登っていくとそれほど時間も掛からずに大持山(1294.1)頂上に到着。山梨のパーティはここで昼食を取っていた。この後彼らと会うことはなかったので、おそらくここでゆっくりとしていったのだろう。時間確認のための写真だけ撮って先を急ぐ。小持山へはそれほど大きなアップダウンもなく、また距離も短いのだが、尾根上に大岩が何度か立ちはだかるため、意外に時間がかかる。武川岳や二子山を望む眺めの良い岩を越えていくとこの尾根で一番の眺めが得られる雨乞岩に着く。目の前に見える奥多摩方面の山はもちろん、両神山や更に奥の八ヶ岳・浅間山の雪を頂いた姿を見られるのは真冬の今に限られる。

(大持山頂上から奥多摩方面の眺め)




(こうした岩尾根が続く)


(武川岳 右奥に伊豆ヶ岳・古御岳)


(中央は二子山 奥は丸山などグリーンラインの尾根)


(雨乞岩)




(雨乞岩からのパノラマ)

雨乞岩を過ぎると武甲山の南斜面を見られる展望地が何か所かある。また小持山の手前には大岩が立ちはだかり、山慣れている人が歩いても飽きることはないだろう。頭上が開けたピークが見えてくると間もなく小持山(1273)に着く。周囲は比較的低い木ばかりだが、武甲山方面のみが開けている。ここでも一息つくが、訪れる人はいない。大持山と小持山の間ではすれ違った親子連れなどもいたが、真冬で12時を過ぎると浦山口方面からやって来る人はいないのだろう。

(尾根上から見える武甲山)


(大持山~小持山間で最も大きな露岩 越えても行けるし巻いても行ける)


(小持山頂上)


(小持山からの武甲山)

小持山の北側斜面は山頂から100メートル下くらいまでは急な岩尾根となっている。途中岩尾根を外れて巻き道になっている所もあるので、下山モードになって気を抜くわけにはいかない。緩やかな芝草の尾根になると武甲山との鞍部であるシラジクボに着く。踏み跡は武甲山・小持山と持山寺跡方面ははっきりとしているが、これから歩こうとする巻き道方面は不明瞭である。ただこのルートはエアリアでも実線で描かれているし、橋立川で遭難したときに使ったことがあるので、現在でも歩くことはできるはずだ。

(小持山直下の岩尾根 ここは左に巻き道がある)


(シラジクボ近くのフラットな尾根)


(シラジクボ 左に見える道標の裏手に巻き道が付いている)

西側にある道標の裏から薄い踏み跡を進んでいく。名栗げんきプラザから武川岳を目指していたとき以上に踏み跡は薄いが、落ち葉が無い分だけわかりやすい。しかもつい最近も歩いた人がいるのか足跡も付いている。深い谷で鋭角に曲がるとようやく踏み幅が広くなる。その先はこのルートを歩く人が少なくなった原因である崩壊地があるのだが、現在はすっかり落ち着いて踏み跡ができている。975のピークへとつながる尾根の辺りは小平地になっていて、ゴミが散乱している。ここを過ぎると菅沢から長者屋敷の頭にかけて広い伐採地となっている。踏み跡はその伐採地の上を通るため、しばらく眺めの良い所を通ることになる。雨乞岩からの眺めにも似ているが、浅間山などはより近くに感じられる。

(巻き道 カラマツ林なのでまだ山頂からは離れていないことがわかる)


(かつての崩壊地 以前歩いたときは崩れそうな感じもしたが現在は薄ら踏み跡もできている)


(ここまで来れば踏み跡も明瞭に)


(いよいよここからは展望の良い所を通っていく)


(伐採地からの眺め 右手前の尾根が長者屋敷尾根 中央手前は高ワラビ尾根の城山辺りだろうか)


(伐採地脇を歩いていることがわかる)

朽ちかけた道標が立つ所がスゲ沢分岐。菅沢方面は荒れた伐採地でボクがかつて歩いたときも道は不明瞭だったが、今は下草なども繁茂しているようだ。長者屋敷の頭への道はここで寸断されているが、奥にピンクテープが見えるので、そこを目指していけば問題はない。西ノ手水と呼ばれる水場の手前は長者屋敷尾根の奥に秩父御嶽山や両神山を望む展望地で、植林した幼木が育つまではまだしばらくこの展望を楽しむことができそうだ。水場の辺りは道が崩壊しており、通過に最も気を遣う。水はやはり砂っぽくあまりここで水を汲みたいとは思わない。

(スゲ沢分岐)


(スゲ沢分岐の周辺は荒れていて踏み跡がない)




(西ノ手水付近からの眺め)

水場を過ぎれば長者屋敷の頭で、歩き慣れてもいるし、見慣れた景色でもある。先ほどまで歩いていた巻き道や小持山の眺めが得られる急な尾根を下りきると薄がまだ多く穂を付けた緩斜面となる。檜林を抜けていくと長い杉林の中の九十九折だ。飽きるほど下って長者屋敷登り口に下り立つ。橋立川へ下っていつものように沢の流れを楽しむ。「奥武蔵登山詳細図」によるとこの沢は伊勢岩の滝という名が付けられているという。台風の度に流される木の橋を渡り、滝を眼下に見るようになれば林道の終点だ。あとは橋立川沿いの長い林道を只管歩き、橋立の岩壁が見えてくれば浦山口駅は近い。不動名水近くの水場で手や顔を洗い、駅のホームに上がると休む間もなく電車がやって来た。

(長者屋敷の頭)


(伐採地上の白く見える辺りが巻き道)


(左が小持山)


(まだ薄が穂を付けていた)


(伊勢岩の滝というらしい 写真ではわからないが上部にも滝がある)

DATA:
正丸駅6:20→6:43馬頭さま→7:11正丸峠→7:28小高山→7:32長岩峠→7:51名栗げんきプラザ→8:06展望台→8:45見晴台(909のピーク)→8:57大栗沢分岐→9:20武川岳→9:49妻坂峠→11:03大持山の肩11:35→11:42大持山→11:55雨乞岩→12:20小持山→12:58シラジクボ→13:20スゲ沢分岐→13:35長者屋敷の頭→13:54杉林の九十九折→14:11長者屋敷登り口→15:05浦山口駅

地形図 正丸峠 秩父

本文中にもあるように名栗げんきプラザ上の展望台から909のピークまでは難路扱いです。転落の危険があるため、降雨・降雪後の登山はお勧めしません。
シラジクボから長者屋敷の頭への巻き道はシラジクボでの入口がわかりにくいことと西ノ手水付近の道が崩壊していることに気を付ければ浦山口方面へのエスケープとして十分利用できます。

参考として過去の記録
平成23年10月29日 武川岳と大持山 紅葉情報
平成24年4月30日 鳥首峠から武甲山
平成24年12月24日 鳥首峠から武甲山と持山寺跡
平成26年10月12日 妻坂峠を越えて武甲山
平成27年10月31日 ウノタワから大持山を経て浦山ダム

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