経済学の限界に<合成の誤謬>という問題があります。
経済物理学はこの合成の誤謬やインフレ・デフレといった経済現象の普遍的な問題の理論的な解となる数少ない方法だと考えられます。
いわゆるニューアカとかポストモダンといわれる言説の中では<ダブルバインド>などとしてフォーカスされたものと同じ問題です。哲学や論理学では“クレタ島人の嘘つき”などとしてギリシャ哲学の昔から最もラジカルな難問として取り上げられてきました。ニューアカでは“パラドキシカル・ジャンプ”などという解が提出されましたが…。
自然現象の多くはフラクタルなのですから、
それらに対して平均や標準偏差を考えることには、
そもそも意味がないのです。
(3章 市場原理 ベキ分布を考える)
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経済物理学の発見 (光文社新書) 著:高安 秀樹 , 他
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本書の指摘以外にも「平均」や「標準偏差」という数理的なものには問題があります。数理・数値は目安になりますが、その適用範囲はきわめて限定されるもの。しかも毎日変化するものでもあり、また視点や位相によってその属性もまったく異なるものになります。電磁波が光粒子であるとともにエネルギーの波動であるように、位相によりまったく異なり、その解釈も全然違ってきます。現象は科学的であるほど異なる見解や解釈があるということです。しかし経済学は全般的に抽象の度合いが高すぎ、特定の変化や数値だけに依拠して全体を解釈できるという誤解や誤認のうえにある場合がほとんどです。価値論(剰余価値など)の系列は別ですが…。
不安定な状態が、
超過需要状態と超過供給状態の境目である
自由市場の本来の姿であると考えるのです。
相転移のちょうど境目には、臨界点という特別な名前が付いています。
また、臨界点で見られるゆらぎには、後述するベキ分布のような
特有の数理的な特性が普遍的に見出されることが知られており、
臨界ゆらぎ、とよおばれています。
(2章 エコノフィジックスのツール 市場の相転移)
ベキ分布にしたがう現象を語る時に最も重要な意味を持つのは、
数としてはごくわずかなのですが、大きな破片です。
(3章 市場原理 ベキ分布を考える)
「大きな破片」というのは社会や市場でいえば大きなトレンドのことであり、それを注視することが大切だということになります。ただしこの「大きな」ということは単にマクロということとは異なるので、その注意が必要…。
市場はモノゴトを媒介にした人間関係ですが、それは個体と個体との関係に還元できると考えたのはマルクスだけではなく心理学や現象学の特徴でした。すぐれた経済学者の多くのが人為的事象の専門家であった事実が示すものは重要でしょう。
経済物理学の全般あるいはその一部はサンタフェ研究所での研究はもちろん、エンジニア系の企業やヘッジ・ファンドなどでリアルに行使されてることもあり、今後のさらなる発展が期待されています。
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