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タックの庭仕事 -黄昏人生残日録-

宇宙の森羅万象を常用漢字表に従って表現しようとする新聞社校閲部部長の愚

 ある新聞社の校閲部部長が、「ひとごと」は「人ごと」と表記するのが「記者ハンドブック」の決まりで、「他人事」は用いない、と書いている新聞記事を切り抜いて保存したのは2年以上も前のことである。

 今回たまたま、「他人事」の用例が目に付いたので、古い切り抜きがあることを思い出し、ブログ記事を投稿することにした。

 件の部長の拠り所は「記者ハンドブック」で、「人ごと」を使う理由の一つは、「他人」という漢字に対する「ひと」という読み方が常用漢字にないこと。もう一つは、「人」には「他人」という意味もあるということ。

 私は常々、常用漢字に付された読み方しか用いない新聞社の漢字仮名交じり表記を苦々しく思ってきた。常用漢字に固執する不自然な表記は、日本語の破壊であると思っている。宇宙の森羅万象を、単なる目安に過ぎない常用漢字表の定めで表記するなどという愚を許してはならない。

 二つ目の理由については、なるほど「人」という漢字に「他人」という語義があることは承知している。俗に「人の褌で相撲を取る」と言う。しかし、だからといって「他人事」を「人ごと」と置き換えてよいとはならない。現在「たにんごと」と誤読する向きもないではないが、「他人事」はいまだ歴とした生きた言葉であって、慣用は「記者ハンドブック」に優先する。

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