マーク・ノップラーのサントラの楽しみ方


 お世話さまです。VKです。みなさま、この夏はいかがお過ごしでしたでしょうか? ぼくは夏になると決まってSFを読みたくなるんですけど、今年もSF三昧、細かく言うとアイザック・アシモフ三昧の夏でした。今年は、主に短編を読みあさりましたが、やっぱりこのオジサンの話しはめちゃめちゃおもしろい! 彼の豊富な知識と鋭いユーモア感覚には本当に感服します。
 また、その一方、アシモフ作品で驚愕するのは、彼の“原子力”についてのアイロニーが、奇しくも震災後のいまの日本、そして世界への痛烈なメッセージになっていること。彼の予見性というか、先見性にもギョッとさせられるばかりです。
 ともあれ、あの震災から半年。東日本の復興はまだまだ容易ではありませんが、あらためて自分のできることを頑張らないといかんなと強く思うこの初秋です。

マーク・ノップラーのサントラの楽しみ方

VK石井

 先日、映画『ローカル・ヒーロー/夢に生きた男』を観ました。1983年の映画、なにをいまさら感がありますが、ようやくの初鑑賞です。そのタイトルから「ちょっと小難しい文芸作品なんじゃないの?」とずっと思ってたんですけど、でもいざ観てみると「文芸作品の気配がありながらもアングラ的、ヘンな笑いもある奇妙で不思議な映画」という印象。初めのうちはそのテーマも重厚そうで、ヒューマニズムを追求するような気配なのに、物語が進行するにつれいろいろなものが軽い雰囲気で、ヘンな笑いを絡めながらなんとなく収束していくんですね。ま、この“なんとなく”の過程をガッチリと理解できれば感動的な映画なのかもなぁとは思うんですけど、ぼくにはとにかくこの“なんとなく”が、単純に“なんとなく”としか感じられませんで……。登場人物の心の動きがドラマチックに示されているわけではなく、実に淡々と、より写実的に描写されている人々の心の葛藤、そんな機微を捉えきれない自分に問題があるんでしょう、きっと。


DVD『ローカル・ヒーロー 夢に生きた男』


 さて、気になりながらずっと観ていなかったこの映画。長年気になっていたのは、映画の音楽を担当しているのがマーク・ノップラーだったからです。映画公開当時の1983年というと、自らのバンド、ダイアー・ストレイツが『ラヴ・オーヴァー・ゴールド』をリリースした直後の時期。『ブラザーズ・イン・アームス』で世界的な大ヒットを飛ばす前ですが、本国イギリスではその哀感ただようシアトリカルな曲で人気の絶頂にあったのがそのころ。そんなタイミングでのノップラー初のソロ活動がこのサントラ・アルバムで、「ダイアー・ストレイツの、まるで映像が浮かんでくるかのような曲を作るあのノップラーが、本気で映像作品のために音楽を作っちゃった!」などと、個人的には大騒ぎしていたものです。いまさらながら観た映画の方にはなかなか引き込まれなかった自分ですが、このサントラを久しぶりに部屋の奥から引っ張り出して聴いてみるとこれがまたいまになってハマリまくり。これ、聴きながらバーボンでも呑むとたまらんのです。まさしく大人の嗜みです。

 ところで、ノップラーさんはダイアー・ストレイツの活動を止めて以来、音楽浪人のようにいろいろなセッションに顔を出したり、それこそこの『ローカル・ヒーロー/夢に生きた男』を皮切りに映画音楽の世界でも活躍するようになっていきました。調べてみると、リリース枚数はなんと自身のソロ作より映画のサントラの方が多いんですね。映画に対して実に意欲的なノップラーさんですが、ただ、彼が音楽を手掛けた映画はなかなかヒットに恵まれないという、なんとも切ない部分もあるんですけど……(日本公開さえしてない作品もあるし……)。


『Local Hero : Mark Knopfler』


 個人的に『ローカル・ヒーロー/夢に生きた男』でノップラー熱が再燃したこともあって、最近はマーク・ノップラーが手掛けた映画のサントラ盤ばかり聴いています。ケルティックだったり、ヒルビリーだったり、その映画の主題に合わせたであろう音作りは実に器用。自分が観ていない映画でさえも映像のイメージが拡がってくるのは、ダイアー・ストレイツからの作風そのまんまです。これ、やはりバーボンをひっかけながらイメージしながら聴くと、脳内シアターに映像がボンヤリと浮かび上がってきます。
 ん~、でも、ほろ酔い状態のままあれこれ脳内イメージしていると、これが不思議なことにどうしてもホラーっぽいストーリーになっちゃうのはなぜなんでしょう? 

 例えばこんなことをイメージしてみます。
“年老いた男女が、人生の疲れを抱えながら故郷の港町に戻ってみると、そこで待っていたのは幼少期の二人がよーく見ていた××だった……”
 またそれとは別にこんなことをイメージしてみます。
“寂れた街にやってきた一人の旅人が、その街で一番古いパブに行ってみると「おまえはおれの息子じゃないのか?」と見知らぬ男に声をかけられ、しかしよく見るとその男は記憶の彼方にある××だった……”

 ノップラーさんの音楽を聴きながらイメージするのは人生のほろ苦さだったり、切なさだったり、苦難だったり、そんなハードボイルドな映像が浮かんできそうなもんですが、ぼくの場合はなぜかホラー。上の例えの××に入る言葉、みんな「ゾンビ」になっちゃうんです。いったんゾンビがイメージされると、そのあとは次々とゾンビばっかり出てきて、ノップラーさんの音楽はみるみるうちにゴブリンみたいに聴こえてきちゃう。ケルティック・ゾンビやヒルビリー・ゾンビだらけの脳内シアターですよ。マーク・ノップラー=ゾンビだなんてイメージ、自分にはまったくないんですけど、ついつい酒が進むとこんなことになっちゃう。今度は呑まずにちゃんと、真剣に聴かないといかんなぁと思う今日このごろであったりします。 ノップラーさん、こんな聴き方してごめんなさい……。

 でもね、ゾンビばっかり出てくる脳内シアターってのも、実は結構おもしろいもんですよ。どんな音楽を聴きながらでも、イメージさえ膨らませれば対応可能です。秋の夜長の過ごし方として、みなさんもぜひお試しを。

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 最近、友人からまた「あのブログ、更新しないの?」と言われました。「あの人、書く書くとか言いながらぜんっぜん書かないでしょ。そもそもあの人、やる気あんの?」とか。彼が言っている「あの人」が誰を指しているのかはわかりませんし、もちろん辻口さんのことを言っているわけではないはずです。だって辻口さんはやる気の塊の男ですからね! だからこう答えておきました。「辻口さんは時節をたいへん意識されるお方だから、秋のブログの構想を温めておられるはず。秋といえば枯れ葉だろ、つまり次のエントリーはイヴ・モンタンになるぞ」と。楽しみにお待ちしておりますよ、イヴ・モンタン。

*  *  *  *  *

 書く書くと言いながら全然書くつもりのない辻口です。何度か会ったことのあるVK石井より一度も会ったことがないそのご友人の方が私のことをお分かりというのも、どんなもんでしょうか。今度メシでもご一緒しませんか? テレビでサッカー見ながらお酒なんかもいかがでしょう。ついでにVK石井もぜひ。
 でも何か書きたいという気持ちはあるのです。この間、ハード・ロックやAOR好きのはずの友人に、チャック・プロフェットが如何に素晴らしいかという説教を延々と聞かされる……そんな夢を見ました。現実のヤツは間違いなく知らないだろうし、むしろ熱く語ってやりたいぐらいなのですが。なんで正座させられてたんだオレ……、そんな話を書こうかと思っていたのに、数行で終わっちゃったよん★
 というわけで近刊です↓。そのうち自分でも何か書いて更新したいと思いますので、時々覗いてみてください。


フュージョン・ミュージシャン150人の仕事



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