多摩蘭坂 ふたたび

初めて一人暮らししたのは１９のとき。18年前。大学入学時だった。
右も左もわからない広島という土地で、ひとりぼっちだった。
一日中、エルビスコステロの"Blood and Chocolate"をかけていた。当時はカセットテープで。
そして今、ずっと「多摩蘭坂」を口ずさんでいる。

　　夜に腰掛けてた　　中途半端な夢は
　　電話のベルで　　　覚まされた
　　無口になった僕は　相応しく暮らしてる
　　言い忘れたこと　　あるけれど

　　多摩蘭坂を　登りきる手前の
　　坂の途中の　家を借りて住んでる
　　だけどどうも苦手さ　こんな夜は

　　お月様覗いてる　　君の口に似てる
　　キスしておくれよ　窓から

一眠りして目が覚めたら、外はもう暗くなっていた。段ボール箱に囲まれていた。
頭の中でずっと「多摩蘭坂」が流れている。
中途半端な夢のことを思うと涙が出た。