子供というものは、自分が一番大好きなものを親が理解してくれる
ことを、一番喜ぶ。
俺の親父はそのことをこの世で一番分かっている「親」だ。
俺が中学生のとき、YMOにはまっていたとき、遠巻きにYMOを聴いて、
そのすばらしさを彼なりの言葉で語ることがあった。
戸川純は一瞬の表情の変化がすごい女優だ、などと語ることもあった。
子供にとっては、一番身近な大人であるところの「親」に、自分の
世界を理解されたことが、とてもとてもうれしいものだ。
多分、親父はそのことを十分わかっていて、わざといじわるを
することもあった。俺がはまっているものについて、まったく
興味を示さないこともよくあった。しかも、それは、わかりやすい
ぐらいに、「わざと」興味を示していない。明らかにわざと。
そして、60を超えた親父は、最近、ヨウジヤマモトにはまっている。
はまっている、というほどでもないが、そのすばらしさを
思い知らされているようだ。いや、思い知らされているふりをして、
俺を喜ばせようとしているだけなのかもしれない。
とにかく、たまに電話で話すときには、必ずヨウジの話題が
出てくるのだ。
そして、そんな親父を見て、俺はいつもうれしくなっている。
38歳にもなって、子供のころの気持ちで。親が自分と同じものに
興味を持っていることのよろこび。
子供のままの心で。純粋な心で。