居酒屋黙示録 新章 暖簾を繋ぐ刻

旧き善き銭湯を訪れ、立ち飲みを巡り、居酒屋で思う。

岡山県倉敷市児島下津井 大黒湯

2015-11-14 11:28:21 | 銭湯
特に詳しくは書かないが、しばらく岡山での仕事となる。
毎年恒例と云う程ではないが、かなり以前からあることなので慣れたものである。
が、岡山で銭湯を巡ってはいなかった。
まっちゃんさんの関西の激渋銭湯、ナカムラさんの風呂屋の煙突など見ると岡山の銭湯も良さげな所がかなり廃業してしまっている。
結構、痛恨だが仕方あるまい。
という訳でこの際行ける所は行っておくかなと。

普段から岡山に居る訳ではないし、今迄岡山の銭湯を本気でピックアップしたことはなかった。
そんなこんなで初めて試みて見た。
先ずはゼンリンの地図ソフトでタウンページ検索を掛けると21件ヒットする。
ポイント打って、個人のホームページ等で廃業情報などが有るとこはマークを変えておく。
これは近くに行ったら建物の写真だけでも撮れれば良いかなと思っての事である。
タウンページでヒットしなかった個人のページの情報をマークしてグーグルで検索し廃業情報等がないか確認。
そこで今迄、岡山浴場共同組合のページを見たことないなと気付き、開いてみると岡山、倉敷の周辺で10軒の銭湯がまだ登録されていた。
清心温泉は不定期の営業だからか共同組合に入っていないのか等と、一つ々々確認していくと瀬戸大橋周辺で下津井の大黒湯という銭湯が登録されている。
?下津井の銭湯って休業してるとか聞いたような気がしたんだけどなあ、とまっちゃんさんの関西の激渋銭湯を見ると八千代湯があり休業中とのこと。
えっ!?下津井に銭湯って2軒あったの!?
住所を見るとすぐそばだが確かに別の銭湯だ。
ぐぐってみたが浴場組合のホームページと倉敷の情報を多く発信している個人のブログ以外にこれと云った情報が出てこない。
これは行ってこの目で確かめねばなるまい。

岡山での生活は寮の様なところに住む事になるのだが、期間が長いため自分の通勤用の2種原付を持ってきている。
流石に広島からはるばる乗って来る時は結構大変だが、有ると無いとで行動範囲がまるで違ってくるので重宝している。
土日は部屋でのんびりしてるのが普通だが、何か新しい宝を発見したような気分で銭湯に行く気満々だったが土曜日は生憎の雨。
日曜日は晴れ間が出たが、大黒湯は日曜日休みなのであった。
まあ買い出しがてらに場所だけでも見に行くかとバイクに跨がり走り出した。
児島の下津井地区は瀬戸大橋の岡山側のたもとの部分、児島の方から行くと県道をずっと進めばたどり着く。
しかしその道は鷲羽山のある半島をぐるっと廻る道でかなりぐねぐねと曲がってる上、昨日までの雨で濡れた落ち葉が道に残る。
以前濡れ落ち葉のせいで肩の骨をぶち折った身からすれば、トラウマ物の様相。
慎重に走りぬけ、瀬戸大橋の下をくぐり抜けようやく下津井地区に足を踏み入れた。
先ずは大黒湯の位置を確認、ホームページの写真と煙突を頼りに程なく見つけた。
良いな、町の雰囲気からして良い。
とりあえず場所は押さえたので田之浦地区から吹上地区へ移動、といっても350メートル程だ。
休業中の八千代湯も見ておこうと町を散策すると、何か雰囲気の良い神社がある。
近くへ行ってみると四柱神社とあり、かなり急な階段が続いている。
いつも通りコンバット越前の台詞を吐いて、階段を登る。
数えながら登ると108段、社殿の前に着き御賽銭を出そうとポケットに手をやると小銭が一枚もない。
それどころかいつも後ろのポケットに入れている財布すら無い。
よく考えると部屋を出るときに財布を持った記憶がなかった。
しまった、帰りに買い出しするはずが只の銭湯見学ツアーになっちまった。
まあ仕方あるまい。
帰り道は瀬戸大橋の下のトンネルをくぐり児島の方へ抜ける道を見つけ、距離も大幅に短くなることが分かった。
児島の市街地から細い川沿いに北上、もう一軒の昭和湯の位置も確認。
ここも良い風情で銭湯部分の横にある母屋も立派な日本家屋だ。
銭湯と母屋が横に隣り合ってるのはあまり見ない作りだな。

とりあえず買い出しもできないので寮に戻り昼飯。
パスタ茹でてレトルトのソースで簡単に済ます。
雲は低いが天気は持ちそうなので、買い出しと風呂に行く事にする。
100均で日用品を買い足した後、宇野港近くのたまの湯に行く。
最近めっきり行く回数が減ったスーパー銭湯だが、たまには良い。
普通土日は1700円だが今日はある筋から入浴券を貰ってたので、ただで入れまーす。
フロントでタオルと館内着を受け取って浴場へ向かう。
かなり広い敷地に建ててあり、休憩室も多く食事ができる所もあるので浴場までかなり距離がある。
身体を流し露天風呂でしばらく湯に漬かった後、館内着を着て休憩室へ。
ここはちょっとした図書コーナーがあり、漫画も少しあるので時間潰しには良い。
大きく振りかぶっては21巻までしかないので、前回来たときから増えてない。
うーむ、続き物は随時更新していって欲しいなあ。
他に何か読んでないのをと探すと夏目友人帳があるな。
どんな話かも知らなかったがとりあえず1巻を手に取った。
うん、面白いわ、これ。
5冊程一気に読んだ所で外が大分暗くなったので、もう一度風呂を浴びて帰る事にした。

さて、大黒湯へは翌々日、仕事が終わり寮に戻り速攻着替える。
財布忘れないように確認、バイクで行くので湯冷めしないようにオーバーパンツやネックウォーマーも準備していざ出発。
車も多い時間帯だし、まあ3、40分て所かな。
幸い流れは良く、6時前には下津井地区に着くことが出来た。
おっ、やってるやってる。
先ずは暖簾の掛かった外観の写真を一枚。
うーん、不審だよな、俺。

ドア開けて中に入る。
番台のおかあさんに410円払い靴を脱ぐ。
番台横と入口側壁に下足棚が有るが、トレッキングシューズが入らなかったので、三和土の隅に寄せておいた。
三和土から脱衣場までの段差が高く40センチ位あるだろうか。
三和土からは見上げる番台も、脱衣場からだとかなり低い位置に見える。
板張りの脱衣場は綺麗に掃除されていて、埃など見当たらない。
幅二間奥行が長く四間位。
ロッカーキター!
外壁側に4段8列木製で漢数字番号入り、しかも鍵は内側の落とし込みタイプ。
尾道の日の出湯、因島の紅梅湯にあるらしいが実際見るのは初めてだ。
右端の2列は後から作り足されたようでニスの色も明るい。
ロッカー脇に三段のシンプルな棚が作られ常連さんの洗面器が何個か置かれている。
その下に火鉢が置かれているが、灰は入ってないから現役では無さそうだ。
服を脱ぎながら周囲を観察、年期物のマッサージ椅子が一脚。
銘板に高松の住所が記されていた。
先客もいるがロッカーの鍵は掛けないで、そのまま入るのがここの流儀のようだ。
他には仕切壁の浴室側に神棚があるくらいのシンプルな脱衣場だ。
浴室へのガラス戸脇に営業時間の貼り紙があり、水金日が休みで営業時間は17時30分から19時30分。
危ねぇー、ちょっと遅くなったら間に合わねえ可能性が大だった。
とりあえず間に合って良かったわ。
さて浴室へ。
自然石床キター!
岡山倉敷周辺の銭湯には多いと聞いていたが久しぶりの対面だ。
長方形の自然石を浴室縦方向に並べ、自然石同士の間隙は市松に配したタイルで埋められている。
それにしても目立つのは浴室内の傾斜。
浴槽のある仕切壁の奥を一番高くして、外壁入口側が低いのだが高低差は40センチ以上あるだろうか。
広さは幅二間奥行四間。
外壁側に6個、仕切壁に4個カランがあるが高低差が大きいせいか入口側半分だけに配置されている。
シャワーは無い。
外壁側のカランは上方に石鹸置きが10センチ程でピンクの細かいタイル、洗面器台部分は少し洗面器がはみ出す位短いが転げ落ちる程ではない。
仕切壁のカランは石鹸置きが15センチ程で青いタイルだ。
先客が5人程いたが誰一人としてカランを使っておらず、皆浴槽周囲で身体を洗っている。
外壁側カランの下手で身体を流し髭を剃るが、剃刀の切れが悪くなっていてかなり痛い。
そろそろ換え時なのだが、最近のT字は刃の数ばかり増えて滑らかに剃れるのは良いのだが、鼻の下など逆剃りしたい所が剃り難くてしょうがない。
今普段使いはシックのFXのデッドストックだが、これが無くなったらどうしようかな。
カランから出る湯は熱く、湯三分の一水三分の二で調度良くなる位。
浴槽は仕切り壁沿いに一間四方程、角は丸く切ってある。
奥の壁までくっついておらず80センチほど空いているのは、浴槽周囲で身体を流す人が多いためだろう。
中は段差ありの構造だがちょっと複雑。
仕切り壁側は水深10センチ程の段、しかも一番奥側は更に浅く謎の四角い段差。
腰掛けの段が他三方にあり、更に深い部分に少し浅く段を作ってある。
ここまで複雑な形は中々無いと思う。
腰掛けより一段低い段に座ると調度良い深さだ。
天井も結構複雑、外壁側一間は白ペンキで低く中央二間は水色ペンキで高く作ってあるが湯気抜きの窓が有るわけではない。
湯気抜きは浴槽の真上に一間四方更に高く切ってあり、暗くて良く見えないが波板で覆われてるようだ。
浴槽に浸かりながら改めて見ると、やはりこの高低差は凄い。
一番奥の浴槽に近い所は殆ど浴槽の水面と同じ高さに床があるレベル。
外壁の奥と入口側では、目測だが大判タイル4枚位高低差があるのが良くわかる。
湯温は調度良い。
じっくりと観察してから上がる。
身体を拭いてズボンまで穿いた所でメモをとり、汗が引いた所で暇する。
湯冷めしないように持って行ったオーバーパンツだが穿かなくても大丈夫のようだ。
風呂で余りにも満足してしまったので帰ってから何か作って食う気が起きそうになく、帰り際にスーパーに寄り道。
半額ハンターと化し、スパゲッティと鶏唐揚などを買って帰りました。
いやはや、堪能した。
これほどの銭湯がまだ残っているとは岡山侮りがたし。
こっちでの仕事の間に何軒いけるかな。

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