光と影のつづれ織り

写真で綴る雑記帳

風間サチコ 2017年以降の四つの展覧会を回顧 #3 「不死山トビ子(復活)」 (無人島プロダクション『移殖』展 )、「風間サチコ(バベル)展」(『東京計画2019 vol.2』 ) 

2019年09月24日 | アート 現代美術

 風間サチコシリーズ3回目(ラスト)は、 

2019年3/28,29  無人島プロダクション『移殖』展から 「不死山トビ子(復活)」

 東京の江東区清澄白河にあった無人島プロダクションのギャラリーが、立ち退き移転となり、二日間開いた

お別れ展示会の作品の一つです。

 キャプションでも概要は分かりますが、より詳しくは風間サチコさんのブロブ

版画と版木を組み合わせて、水面に映った逆さ富士のようにみせる・・・アイデアが面白い!


                                                      キャプションの右横に写っているのは版木の側面。




次は、「風間サチコ(バベル)展」(『東京計画2019 vol.2』) ・・・・ギャラリーαM

2019年6月1日(土)、展示初日の晩に、風間サチコさんとキュレータの藪前知子さんのアーティストトークに行ってきました。

が風間サチコさん、右がキュレータの藪前知子さん(東京都現代美術館 学芸員)

 バックの壁面に《バベル》右側と、その下絵 左側


 

 

この展示の企画意図や、作品構想などは、 風間サチコさん、藪前知子さんのメッセージに詳しいので、チラシからスキャンして載せました。 ↓




戦前に作られた、東京の臨海都市構想 ”紀元2600年記念日本万国博覧会会場図” を説明する風間サチコさん。

 


 雑誌Newtonの、臨海副都心構想の記事を説明する風間サチコさん。  古い資料などいろいろ持っているんですね。

 

 


 

 

余談ですが、キュレータの藪前知子さんの胸のブローチには、”丙”の文字が!

風間サチコさんの黒い服は、いつものとおりですが、キュレータの藪前知子さんも、黒で合わせ、ブローチデザインも

ディスリンピックに関連させて、”丙”のイニシャルを使うなど、気を使ってますね。

ちなみに、藪前さんは、「山口小夜子 未来を着る人」展(2015年)のキュレータでもありました。

また、トーク中に、藪前さんが”近代の超克”という言葉を使ったのですが、風間さんは、近代の彫刻と受け取り、、暫く

やり取りがありました。 藪前さんが気がつき、説明していましたが、思想や芸術関係の言葉は、ときどき高尚な漢字語

が出てきて、わかりずらいところがありますね。




作品を観ていきましょう。

《バベル》 2019 和紙、油性インク 130×181


↓下絵。 このマンション群は、風間サチコさんが23年前の新聞の折込チラシを切り抜いてコラージュしたもの。

当時、制作するには手がかかりすぎると思って、制作しなかったが、今回のテーマをもらい、制作したとのこと。

当時の判断は正しくて、マンションのタイル一つ一つ彫るのは、とても大変だったようだ。




小品群です。

左上 :《脱腸構築》2015 AP:リノカット:和紙、油性インク                                                          右:《バベル(ロゴ)2019 AP:リノカット:和紙、油性インク
左下:《ディスりんピック》2015 AP:リノカット:和紙、油性インク




《点景H.L(新宿中央公園》2008 和紙、墨汁

平成のバブル崩壊後、ホームレスが寝起きするようになった新宿中央公園。(現在はいない模様)

都庁ビル、カラス、高射砲?枯れ木の枝が不穏な雰囲気を醸している。 でも、カラスの表情がかわいい。



《ディスリンピック2680》も展示されていましたが、柱が邪魔して全景は撮れませんでした。

 



《ディスリンピック2680》の中央部分、作家本人の解説を引用。

”規則正しい肉体鍛錬により、国家の未来を担う「母性の保護」に勤しむことを誓う巨大モニュメント『ディスリンポス山』には
煉獄のごとき(変な体操の)修行によって心身をステージアップさせ、山頂の地上の楽園=民族の花園を目指す少女たちの彫刻
が見える。民族の花園には国際優生学学会、ユージェニクスのシンボルツリーがそびえ立ち、民族浄化と国民の健全を祝福している。

 



縁起絵巻ふうの 《青丹記》2019 青焼きコピー用紙 各25.7×36.4

解説は、風間サチコさんのブログ「窓外の黒化粧」をどうぞ


参考までに、フジTV本社ビルの画像です。

フジテレビ 入社式 僕らの音楽 SMAP ゆず E-girls 谷村新司 さだまさしに関連した画像-01

 

トークの中で、風間サチコさんが、第1回TCAA賞を受賞したことが披露されたので、簡単に紹介。

”東京都とトーキョーアーツアンドスペース(公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館)は、昨年創設したTokyo Contemporary Art Award(TCAA)の第1回受賞者に
風間サチコと下道基行のふたりを選出したと発表した。
TCAAは、海外での展開も含め、更なる飛躍とポテンシャルが期待できる国内の中堅アーティストを対象とする新たな現代美術の賞。アーティストのキャリアにとって最適な時期に
最善の支援内容を提供する必要性を重視し、受賞者には、賞金300万円のほか、海外での制作活動支援、東京都現代美術館での成果・受賞展の機会、日英表記のモノグラフの作成など
3年間にわたる継続的な支援が提供される。”

さすがですね。 海外での制作・・・うーん面白そう、期待。

トークの後は、パーティがあったのですが、帰りの時間が迫っていたため、泣く泣く会場を後にしました。

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風間サチコ 2017年以降の四つの展覧会を回顧 #2 「ディスリンピア2680」(原爆の図丸木美術館)

2019年09月19日 | アート 現代美術

風間サチコさんのシリーズ2回目は、風間サチコ展「ディスリンピア2680」です。

展覧会のチラシです。

 

2018年4月28日(土)展覧会オープンの日、オープニングトークに間に合うよう、東松山市の”原爆の図丸木美術館”に行ってきました。

会場に入ると、正面にディスリンピア2680》が(下の写真) 縦2.4m,横6.4mの作品から、圧倒的なオーラ! 

なお、作品の石柱部分などに、ブルーの色ムラが見えますが、デジタルカメラ撮影時に稀に現れる光の干渉によるものです。 

 


トーク開始直前、椅子に座ったお二人。(右が風間サチコさん、左が丸木美術館学芸員の岡村幸宜さん)

実は、ディスリンピア2680》は、トーク開始30分前に展示が完成(午前9時のオープンには間に合わなかった)

風間サチコさんは、前日は美術館で徹夜の制作をされたとのこと。(涙ぐましい奮闘が彼女のブログ、窓外の黒化粧に載っています)

写真では穏やかな表情をされていて、疲れは窺えないのですが、達成感でハイ状態だったようです。

 

 


途中、作品解説をする風間サチコさん。 ところで、彼女のファッションでパンツの白黒デザイン・・・自作かな?と一瞬思いましたが違うでしょうね。 

作品解説は、風間サチコさんのブログ”窓外の黒化粧”(解説コーナ(1)解説コーナ(2)解説コーナ(3)を是非ご覧ください。

<作品の概要>

「ディスリンピック2680」は優生思想によって統制されたとある国のとある都市=ディスリンピアにて、近未来2680年(西暦2020年)に開催予定の

国際体育大会である。今作ではその民族の祭典ディスリンピックの開幕式典の様子が描かれている。・・・・解説からの抜粋

 


私は、当日聴いた解説を帰宅後、プリントアウトした写真にメモしました。 ブログ記事化するにあたり、デジタルペンで再作成したのが↓です。


 


左下は人間大砲、優秀な遺伝子を持つ精子を発射したところ。 国家秩序と栄光を象徴する太陽(=卵子)に向かって一直線。

その太陽って、殻を割って落ちた卵の黄身・・・こういうパロディが面白い。




内容に気を取られますが、テクニックも見てみましょう。 人間大砲の部分をアップしました。 

砲身に細かい掠り傷が施され、金属の質感や、明暗の差をうまく作っています。 私も今回、記事を作るときに気が付きました。

風間さんは、木版作家ですが、版は1回しか刷らないそうです。 うーん、確かに、こんなに微細なディテールを刷るのは大変でしょうから、分かります。




右側は、優生思想でダメな人間たちの処理場で、ギリシャ悲劇の子殺しを題材にしたものなど、悲惨なテーマの

図ですが、風間サチコさんの絵には、おぞましさが感じられないのが、不思議な美点だと思います。

(この丸木美術館では、風間サチコ展のあと、原爆の図などを見たのですが、むごさを感じました。)


石柱上部の葉模様レリーフの中に顔が描かれていて、風間サチコさんは、プーチン大統領の顔といわれたのですが、拡大してみても、よく分かりませんでした。




他の作品

ロサンゼルスオリンピックの馬術競技の金メダリストで、のちに硫黄島で戦死した西竹一(男爵であり、バロン西ともいわれる)と

近代オリンピックの象徴ともいえる近代5種競技のイメージを合体した《決闘!硫黄島(近代5種麿参上)》

硫黄島では、戦車連隊長だった西中佐、風間サチコは、愛馬ウラヌス号を機械化し、戦車部隊のマークだった丸に縦矢をつけて表現している。




会場には、下絵も展示されていました。








見終わって、美術館の外観を撮ってみました。

原爆の図丸木美術館は、画家の丸木位里・丸木俊夫妻が、共同制作《原爆の図》を、誰でもいつでも

ここにさえ来れば見ることができるようにという思いを込めて建てた美術館です。

そういえば、8月に東京国立近代美術館の小企画展

「解放され行く人間性 女性アーティストによる作品を中心に」

観てきましたが、テーマ作品が、奥様の丸木俊の作品でした。

 



東京国立近代美術館の公式サイトから引用。

丸木俊(赤松俊子)《解放され行く人間性》 1947年 

迫力ありますね。



美術館のすぐ横を、都幾川が流れています。 落ち着く風景です。




その横には、かってアトリエなどに利用していた流流庵

ここから歩いて帰途に就きましたが、最寄りの東武東上線「つきのわ駅」まで、2.5キロ。

少し交通不便な場所ですが、景色がいいところでもありました。

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