原発で使われた使用済み核燃料から、プルトニウムや燃え残ったウランを取り出し、再び燃料として利用することを「核燃料サイクル」と呼んでいます。
電力会社10社でつくる電気事業連合会によると、核燃料サイクルには3つの利点があるとしています。
電事連が主張する核燃サイクル3つの利点
日本のエネルギー・セキュリティを高める
日本はエネルギー自給率が極めて低く、エネルギー資源の約96%を海外からの輸入に依存しています。ウランも全量を海外からの輸入に頼っていますが、カナダやオーストラリアなど比較的政情の安定した国から輸入されており、埋蔵量も世界に分散されていることから、石油より供給の安定性にすぐれたエネルギー源です。原子燃料サイクルを確立することで、ウランを輸入する量が減少するため、供給安定性がさらに強化されます。
高レベル廃棄物の発生量を減少させる
使用済燃料を直接処分する場合(ワンス・スルー)は、使用済燃料全部を高レベル放射性廃棄物として処分しなければなりません。これに対し、再処理を行うと、高レベル放射性廃棄物の量を減らすことができ、放射能の影響度合いを10分の1程度に低減させることが可能となり、放射性廃棄物の処分に関する負担も軽減されます。
余剰プルトニウムをもたない
「原子力の利用は平和利用に限る」とする日本は、余剰のプルトニウムをもたないことを国際的に表明しています。原子力発電によって生成されたプルトニウムを再び原子燃料として利用する原子燃料サイクルは、プルトニウムの消費においても非常に大きな意義があります。
なお、核物質の核兵器への転用を防止するための国際的な条約として核不拡散条約(NPT)があり、国連の下部組織である国際原子力機関(IAEA)が、原子力発電所や再処理工場などの原子力施設の査察を実施し、原子力が平和目的以外に利用されていないかをチェックしています。
以上のように、当然のことながら、電気事業連合会のホームページには、いいこと尽くめのように書いてあります。
しかしながら、この「核燃料サイクル」は、1956年に国の原子力政策を定める、原子力長期計画で位置付けされてから、60年余り経つわけですが、いまだに実現の目処が立たっていません。
3つの利点への反論
まずは、「日本のエネルギー・セキュリティを高める」ですが、これは、再処理工場が稼動し、プルトニウムを混ぜたMOX燃料を作れるようになるとの前提で語られています。
現在、使用されているMOX燃料は、フランスやイギリスの工場で加工しています。それを遠路はるばる船で輸送しているのです。輸送中のテロや事故の危険性はどう考えているのでしょか。
また、今はスエズ運河を通って運んでいますが、反対周り、パナマ運河経由の航路は、周辺各国が核を輸送する船舶の通過を拒否しているので、すでにMOX燃料運搬船は通れなくなっています。スエズ運河も同じような事態になる可能性も当然あるはずです。アフリカの喜望峰や南アメリカのドレーク海峡、あるいは北極海を通って運ぶつもりなのでしょうか?
将来に渡って、核物質を船で輸送できるかどうかなど、それこそ、どうなるかわからないのではないでしょうか。原油や天然ガスの運搬より不確実です。
それよりもエネルギーの自給率やエネルギー・セキュリティを高めるのであれば、再生可能エネルギーを活用すべきです。風力、太陽光のエネルギーを利用すれば、燃料の輸送の必要がありません。核燃料サイクルの事業に兆単位のお金をかけるのであれば、そのお金を再生可能エネルギーの利用の促進や技術開発にかけるべきです。すでに原子力エネルギーは、人類の歴史の中で過渡期のエネルギーという位置づけになっています。それよりも、将来、世界のエネルギーの主力となる再生可能エネルギーの技術に力を入れるほうが、世界に貢献できます。
つぎに「高レベル廃棄物の発生量を減少させる」ですが、これは大きなウソです。あたかもMOX燃料が永久に再利用できるかのように書かれています。確かに再処理工場でプルトニウムを取り出すときにでる高レベル廃棄物の量は、使用済み核燃料よりも少なくなりますが、MOX燃料に加工すると、使用済み核燃料と同じ量のMOX燃料ができるわけで、このMOX燃料を使用すれば、使用済み核燃料よりもさらに危険な使用済みMOX燃料となります。このMOX燃料の再処理はまだ研究中で、まだ実用化できるかどうかもわかりません。そのまま全てが高レベル廃棄物となるかもしれません。仮に再処理できたとしても一度か二度しかできないといわれています。
3つ目の「余剰プルトニウムをもたない」ですが、これは本末転倒もはなはだしい理由付けです。そもそも再処理をしなければ、プルトニウムは発生しないわけで、使用済み核燃料をそのまま処分するだけで、本来、なんの問題もないのです。再処理してプルトニウムを取り出しておきながら、そのプルトニウムを持っていると国際的な批判を浴びるからと言う理由で、MOX燃料に加工して使わなければいけないとは・・・プルトニウムの消費には大きな意義があるとは・・とんでもない考え方です。プルトニウムには不純物を混ぜ、核兵器として使用できないようにして、管理していけばいいだけです。
2014年7月19日 「脱原発四日市市民の集い」2014年度第3回原発シンポジウム 園田淳
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