ABCD手付けず事件ドウキヘン_i

「・・・窓から入って来てプレゼントなんてロマンチック！・・・」
　背後から会話の断片がＤの耳に飛がび込んできたと思ったら後ろの席のＣが
「・・・変なこと言って、ふざけないで！！・・・」
　聞き取れない部分もあるようだが、やや感情的になっている口調。Ｃの席に駄弁りに来ている隣クラスのＢが原因らしい。昼休みの後半、席に戻って読書をしていたＤはプレゼントだけでなく窓からって話に本へ集中できない感じに。
　聞き間違いかもしれなく盗み聞きみたいになるから、できるだけ聞かないつもりでＤはページをめくるが聞かないつもりの分だけかえって頭に残ってしまうらしい。
　それ故にプレゼントの贈り主が寮の玄関から入れないような部外者で、しかも異性！？などと些か思考の飛躍が起き、昼友にバイバイしてまで読もうとした小説の続きが入ってこない状況に陥ったＤ。やがて、
「話の続きは学校終わって、一緒に△数学しながらね！」
　そう言って、ＢはＣの席を離れ、隣のクラスに戻っていった。

　ＣとＤは寮生である。Ｂは自宅生。ＢとＣは昨年同じクラスで仲が良いのだろう。一方、ＢとＤは中間試験も近いこの時期になっても席が前後ろって程度の仲にとどまっている。また、試験も近いから部活動もほぼほぼ停止な期間に入り、Ｂの数学が得意なことは学年でも有名で今日の放課後、二人で一緒に勉強するのだろう。
　そこでもＢはＣのプライベートを追求しようというのだろうか。ページをあっちこっちさせながら推測するＤ。
　それにしても部屋の窓から贈り物を持って誰かが入って来るというのは、やはり現実味がないし、聞き間違いだったかもしれないと午後の授業に集中する（ことができなかった）Ｄであった。

　帰りのＨＲ後、振り返ったＤの目には既に席を離れ、小走りに教室を後にするＢの姿が映る。
　尋ね損ねたＤは放課後に図書館で休憩で読書をしながらテスト勉強をするつもりで鞄に入れてきた教科のことも忘れ、寮の窓からの侵入者について考えていたら寮の自分の部屋に帰っていた。
　それほど仲がいいわけではないからＨＲ直後の席にＢが居てもうまく尋ねられたか微妙だったが時間が経つに連れて余計に気になってきたのも事実。ひょっとしたら寮内のグループ学習室や食堂などにＢとＣがいるかもと数学I・ＡとII・Ｂの問題集を抱え、自室を出たＤだが寮内の数箇所を巡っても二人の姿はなかった。学校の図書室や解放されている教室など、またはＢの帰宅途中にあるカフェとかで勉強しているのかもしれない。

　本来、自習するつもりだった科目の一式もなかったので自室へ向かうＤ。戻りながら、仲の良し悪しはさておき、同じクラス（で席も前後）の寮生同士、名簿など調べることなく部屋番号くらいは知っている。Ｂの部屋があるフロアで部屋の前を通るくらい、おかしくないと思うと自然に足が向く。最寄りの角を曲がるとドアストッパーでわずかにドアが開いている。そのままＤは部屋の前を通過するとＢとＣの声が聞こえたのでバックで二、三歩戻りドアが少し開いてる部屋の前に止まった。

　広くないけど教材は一通り揃っているし、プライベートの話もするつもりなら寮生の部屋で一緒に勉強する妥当性に今更ながら気付くＤ。Ｂが随分急いで教室を後にしていたことも合点がいく。邪推の域を出ないついでにプライベートに適しているというなら、まさか、これから窓から誰かがって線もなくはないかもなんて考えも巡り始めるＤは・・・

・・・一方で（それほど仲良しでもない）クラスメイトの部屋の前に立っている不自然さも気になってテストも近くＢの数学が学年でもトップクラスは有名だし、仲が良くなくても勉強教えてってありかも・・・親しくないから部屋前で躊躇っている・・・昼休みの会話でＢがいるかもを知っている

・・・他方で断られる可能性大だし・・・ＯＫが出たところで広さやアウェ感や窓からの来訪者やら何かと煩わしそう・・・（だから断られて終わりかな？・・・）

・・・そもそも窓から誰かについてＤは好奇心・・・風紀的観点からルール違反の現行犯を・・・見てるだけなら共犯者か・・・とにかく糾弾するつもりはなく穏便に済ましたいと思っている

・・・窓から人なんて・・・冷静になると・・・立ち聞きなんて・・・立ち去るか・・・などなど時間としては一瞬だがもろもろについて△ごちゃまぜに考えていたら、ストッパーでわずかに開いたドアの向こうから例の内容らしきが（聞こえてきた）。
つづく

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