「たにぬねの」のブログ

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textotext_14_ロケットとエレベータ_ii

2021-03-21 15:37:50 | texto
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超高度エレベータの展望

 その頃、展望フロアでは静止軌道をはるかに超える高さが想定される超高度エレベータのプレゼンが行われていた。壇上のエレベータ研究者は最新ケーブルサンプルのロールを演台に置き、静止衛星と地上を繋いでも問題ない軽くて丈夫な強度を実現したと強く語った。そのまま質疑応答に入ると昨日の主役であるリユースロケットを操縦してきた宇宙飛行士が挙手していたから、司会者は反射的に指名してしまう。
「あなたが開発した新素材で作ったケーブルが軽くて丈夫なことは、大変よくわかりました。だからといって、静止衛星にケーブルをつないで、どうなるの?あなたも今、使っているマウスは無線でしょ。」
 尋ねた宇宙飛行士は冗談をいったつもりではなかったが会場で若干の笑いが起こる。
「仰る通り。」
と答えたエレベータ研究者は無線のプレゼン用の端末を操作しているポインター兼マウスを挙げ、言葉を続ける。

「しかし、今でも研究室のパソコンなど端末には有線ケーブルのマウスもよく使うんですよ。端末本体から電気が供給されますし、メモリー付きマウスだとやっぱり有線のがセキュリティ上、安心ですし、」
 会場を見渡しながら一息ついてから、
「同様に静止衛星もケーブルで繋げば、電気の供給もできますし、逆に太陽電池で発電した電気を地上に送ることもできる。他にも・・・・・・・」
 通信も有線であれば大量の情報を暗号化しないで送受信できる、などなど即効性ある利点を述べ、さらにケーブルを上下できる簡単な昇降機を付ければ、人工衛星のメンテナンスや衛星の寿命が来た時の回収など直接的なケアが低コストできることを強調し、静止軌道を超える超高度エレベータ開発の有用性を冷静に熱弁。
「何も静止衛星を有線化することにメリットがないなんて質問をしてないわ。新素材の強度も、とても軽くて丈夫で素晴らしいです。それでもコストが見合うのかって、お尋ねしてるわけ。」

 地上から静止軌道まで36000㎞もあるわけで本格的なエレベータの構造でなく数本のケーブルを繋ぐだけでもコストは相当のものだ。ビジネスでも採算がとれるようにするため身も心も削ってるロケット開発者兼宇宙飛行士の気持ちは収まらず、
「静止衛星と地上を繋ぐだけじゃなくて、静止軌道の外側にもバランスをとるために長いケーブルを伸ばさなくちゃいけないのよね、確か。単純に計算しても・・・・・・・」
 語気を荒げ加速された早口でその後もしゃべり続け、超高度エレベータ実用化の予算は青天井になりかねないことを強調。
 相手のペースに合わせて、こちらも頭に血が上ってはダメだと心に言い聞かせながら
「外側のケーブルにも太陽電池やカタパルトなど有用な・・・・・・」
などと聞かれた内容の順番で丁寧に答えるつもりでいたが低コストで物質を輸送できる仕組みであるカタパルトという単語を口にしてしまったことで我慢できなくなった。
「そもそも燃料を燃やして推進する以上、ロケットだってコストもかかれば環境にも優しくないんだよ!。それにリユース率なんて何パーセント?。とにかく、あなたが昨日操縦してきたロケットに、このロール100巻き分のサンプルを急遽、運んでもらったから、昨日のロケットの着陸のような素晴らしいパフォーマンスをしたいと考えています。」

 とりあえず、オープニングセレモニーに訪れている有力なスポンサー候補へサンプルだけでも配りまくろうと大量に運んでもらったわけだが昨日の見事なリユースロケットの着陸パフォーマンスをみせられたショックとただ今の悪意を感じる問いかけにノープランに関わらず勢いで余分なことを口走ったエレベータ研究者、後の祭りである。一方、サンプルを運ぶことは北米超大国を発つ直前に上同士で決まったことだったらしく、宇宙飛行士は着陸後に超高度エレベータ開発関連のモノを知らずに運ばされたことを知ったこともあって感情的になったようだが反省はしていない感じだ。
 熱くなっている飛行士と研究者の遣り取りは完結していないが司会者が他の質問者を指名。険悪になりかけた雰囲気も以降の質問者が気を使ったのか昨今の超高度エレベータ事情をフォローする感じになる。サンプルを使った現実的でエンターテイメント要素たっぷりなパフォーマンスの提案も飛び出し、勢いも大切かもしれないと立ち直りをみせるエレベータ研究者。
iiiへつづく

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