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テキサスとサルサ、そして環境工学

テキサス大学留学中のあれこれ+卒業後の環境コンサル生活@MDのあれこれ

留学まとめ2-2 予習・復習・課題

2008年07月27日 | 留学を振り返る
プロジェクトワークの重要性が高いことも授業の大切な要素の一つでした。特にグループワークではディスカッションを通して、授業で学んだ理論を実践を通して理解し深め合うという意図を持つのですが、意外とうまく機能していたというのが印象です。

要は、学生達に数人ずつのグループを作らせて、課題を与えるというものです。シンプルなものは、Literature Reviewに関するもので、少し難解な論文を与えられて、この研究内容や結果に対する議論を展開しなさいというもの。特に実験結果から論文中で導かれている考察が妥当かどうかなどの議論が主でした。

一番大変だったのは、Water Resources Planning and Managementという、水資源の管理や計画に関する授業でのグループプロジェクトでした。個人でもグループでもいいから、水資源に関することをやりなさいとだけ言われ、スケジュールと成果の発表方法だけ示されました。流れ的には、

1) グループを作り、大まかなプロジェクトの内容を決める。
2) 中間試験前後までに、1ページ程度のプロポーザルを作成し、WEBページとして提出
3) 学期末に、まとめたプロジェクトをグループごとに発表。
4) 期末試験前後までに、最終レポートを完成させて、WEBページとして提出

といった本格的なものでした。

僕は友達の留学生グループ(メキシコ2人、フランス1人、南米一人)の5人でチームを組みました。留学生同士でチームを組んでいる時点で、レポートや発表における英語のハンディは否めません。それにはめげずに、テーマをメキシコからテキサスに流れ込むRio Brabo川の水資源計画に焦点を定め、授業の合間を縫ってはコンピュータラボに集まってああだこうだやっていました。途中で盛り上がってきて、3連休を使って、車で8時間程度かけて、Big Bend国立公園内にある、Rio Bravo川がメキシコとテキサスの境でRio Grandeにまさに流れ込む地点(写真=テキサス側から臨むRio Grande - Big Bend National Parkにて)までみんなで遊びにいったりと、まあいろいろやりました。

結局、スペイン語の読めるメキシコ人が降雨量、流量、ダム貯水量データをメキシコのWEBからダウンロード、GISを扱える僕が流域や流路の確定、もう一人のメキシコ人が専門知識を活かして降雨―流出量関係のモデル化を担当し、最終的に授業で習ったGAMSという非線形問題を解いてくれるソフトを使って、諸条件を満たしつつ複数のダムの貯水量を最大にするためのダム放流量計画を作成するという、大雑把ではあったけれども、かなり面白いプロジェクトに仕上げることが出来ました。

今思えば、こういった授業のプロジェクトワーク、特にグループワークがうまく機能する理由が二つほど思いつきます。

一つは、授業を受講する生徒が多様であること。留学生もいればアメリカ人もいる。実験室系の人もいればシミュレーション系の人もいる。修士もいれば博士もいる。社会人経験のある人もいれば無い人も。こういった多様性が、ディスカッション等でうまくダイナミズムをもたらす場合が多かったと思います。

もう一つは、グループ作成から最終発表にいたる流れがうまく管理されていたことにあります。WEBを作ったことがあろうがなかろうが、まずプロポーザルを中間試験あたりでWEBにて提出させる。プロポーザル通りに最終レポートが作成されたかどうかたぶんあまり重要ではなくて、でもそのプロポーザルの提出を利用して、学生達にそこまでに一度、ある程度の議論をさせておくというのが味噌だったんだと思います。それによって、最後の最後に重い腰を上げてみたものの、時既に遅しで沈没するグループをある程度防ぐことが出来るのでしょう。

このようなプロジェクトワークにプラスして、毎週の宿題提出、中間と期末試験があるので、一つの授業をこなすのにかかるエネルギーは、半端ではありません。それだけに終えた後の充実度は大変な授業ほど大きい、といえます。



留学まとめ2-1 予習・復習・課題

2008年07月26日 | 留学を振り返る
授業の要素を大まかに分けると、1)予習、2)宿題、3)テスト、4)プロジェクト(グループあるいは個人ワーク)となります。特徴としては、学生にとって授業一つにかかる時間とエネルギーがとても大きいこと、そしてグループワークが多くその重要性が高いことの2点が挙げられます。

留学して、1年目は秋学期と春学期とも授業を3つずつ取ったのですが、これは本当にきつかったです。どれくらいきつかったかというと、実際に研究に支障をきたす程でした。ですから研究がメインの大学院で、授業にそこまでのエネルギーや時間をかけるべきではないという考え方もとてもよく分ります。それでも、授業には自己満足だけではない、確かな価値がありました。

例えば、こんなことがありました。”Environmental Fluid Mechanics”という、水環境に関わる流体の授業を一年目に取ったのですが、ある回の講義で湖等における流体の長期振動について学んだ後、MATLAB(MathWorks社による数値解析ソフトウェア)を使用して、かくかくじかじかの条件の下、流体表面の時間変動を計算し、MATLAB等の視覚化ソフトを用いて、プロットしなさいという課題が突如出ました。授業で全くMATLABに触れていないにもかかわらず。この時は授業後、冷や汗が流れました。MATLABなんて使ったこともなかったからです。結局授業後生協に走って、MATLAB入門書を購入して、学科のLABで、友達と試しながら何とか仕上げました。

でもこの時MATLABに触れたおかげで、自分のシステムをモデリングする際に、視覚化も含めてMATLABでいけるなあというのがすっと思いつきました。その後、実際の研究でもMATLABを多用したことを考え合わせると、あの時の課題はありがたかったなあと思います。

このように、一見(または実際)未知な課題を学生に与えることで、新しい概念やソフトウェアに対する敷居を下げる役割を期待しています。このように、大学院の授業が、課題やプロジェクトを通して、知識の学習だけでなく、研究への橋渡し的な役割を果たしているなあというのがとてもいいところだと思います。

次回、続きとして「授業におけるグループワークの重要性」について触れてみたいと思います。


留学まとめ1 授業全般について

2008年05月15日 | 留学を振り返る
アメリカの大学院に留学してとても価値があったと思うことの一つに、質の高い授業を数多く受講できたことが挙げられます。こう言い切ってしまえば語弊があるかもしれませんが、その質の高さや雰囲気は、浪人時代に受講していた予備校の時の授業に似ていたというと分かりやすいかもしれません。あとが無いから必死な生徒と、そんな必死な生徒が求める質の高さに、それを上回るクオリティーで応える名物講師達。それに似た雰囲気やクオリティーが、UTの大学院には確かに存在しました。

UTで留学中に受けた授業に対する満足度が高い理由をいくつか挙げると、
1.一つの授業が、確立された分野をきちんとカバーしてくれる。
2.課題やクラスプロジェクトが大変な分、身につく。
3.他学科の授業も、取りやすい雰囲気にある。

日本の大学院の授業は、一つのクラスの時間が短いこともあると思いますが、先生の専門分野について、深く学ぶというのが主流だったように思います。だからなかなか自分の研究や興味のある分野に授業が結びついてくる感覚がもてませんでした。それに対してここUTでは、大学院の授業(1週間に1時間*3コマ、または1.5時間*2コマ)それぞれが、一つの分野をある程度浅いけれどもなるべくさらうというコンセプトでした。例えば、”Groundwater Pollution and Transport ”では、まず前半で地下水の水理をみっちりと、そして後半で有機系汚染物質の分配・流動を習いました。それでグループプロジェクトでは、USGSが開発して、アメリカで実務でも良く使われるTUFLOWを用いて、漏れ出した汚染物質が、近くの川に流れ込むまでの時間等をシミュレーションするという感じで、演習やディスカッションを通していろいろ学べました。また”Water Chemistry“、”Physical and Chemical Treatment”、”Hydrology”等々、その分野の本一冊を一つの授業がカバーしてくれるのは、学生にとって、かなりありがたい事でした。

また、課題やクラスプロジェクトは、半端ではない量が出されるケースが多いです。宿題を大量に出すことで有名な石油工学科のイラン人の先生が、工業数学の授業で、「数学者は定理から学ぶが、エンジニアは実例から学ぶんだ」と言いながら、容赦なく宿題を与え続けていたのは、未だに記憶に残っています。授業の比重をどこまで重くするのかという点で賛否両論あると思いますが、何歳になっても、時間も頭も使って受講した授業というのは身に付くし、講義ノートや読み込んだ教科書はやっぱり一生ものの財産です。

授業に対する満足度が高い理由のもうひとつに、取りたい授業をかなり自由に取れたことが挙げられます。これは、授業の選択権が自分にあるため、取る必要の無い授業を、例えば学科の基幹授業だからと取る必要が無いわけです。例えば、水資源・環境工学科に所属していながら、自分の研究分野に関係の無い「下水処理」や「環境微生物学」は受講しませんでした。逆に、自学科の興味のある授業をとり終えた後は、機械工学科の「非圧縮性流体力学」や土質工学の「リスク・決定・信頼度評価」、石油工学科の「数値解析」など、他学科の授業を積極的に受講しました。

他学科の授業を受講することが一般的にうまく機能する理由に、どの先生もある程度他学科の学生が受講しに来ることを見込んでいる点が挙げられます。最初の1,2回の授業で基本をさらい、それに積み上げる形で授業を進めてくれるので、いきなりチンプンカンプンという事態を避けることが出来ます。もちろん、他分野の授業をこなすのは至難の業なので、逃げ道も用意されています。これは、成績がつかない形で可否だけが記録に残るやり方で、僕も何度かお世話になりました。それでも、他分野の授業を、かなり一杯一杯でこなしていくことで、その分野の奥深さに触れたり、逆に気軽に踏み込んじゃいけない怖さみたいなものを体験できたのは貴重でした。