ポルトガルのえんとつブログ

画家の夫と1990年からポルトガルに住み続け、見たり聞いたり感じたことや旅などのエッセイです。

150. ボルバと ヴィラ・ヴィソウザで起きたトラジェリア

2018-12-01 | エッセイ

国道255号線で突然の災害。道路が大幅に崩れ落ちた。

そこは大理石の大規模砕石現場。元々はオリーヴ畑だったが、その下に広大な大理石が埋蔵されているのが発見されて、次々に掘り進められた。

私たちがそこを通りかかった時は遠くに白い山が見えて、不思議に思ったものだが、近くに来て初めて、それが大理石の積み上げられたものだと判った。露天掘りの鉱山だ。

 その当時住んでいた家は、確か200年ほど前に建てられたという古い家で、窓の飾りや台所など、全てがアンティックな作りだった。古い家と言っても高級な造りではなく、どちらかというと庶民の家で、階段などもずり落ちそうなガタガタの木造りだった。借りた部屋はひろく、天井も高かったが、その天井の一角には緑色の大きな染みが広がり、雨が降ると水滴がキラキラと落ちてきた。 

台所は南向きで明るかった。そこには巨大な煙突があり、その下にガスコンロがあった。その横に流しがあり、それは大理石作りだった。日本では大理石というと、美術館で見る彫像などしか思い浮かばない高級イメージだったが、こんな古い家のしかも台所の流しが大理石で作られているとは驚いた。

その後、町の反対側の丘の上に建つ団地に移り住んだ。そこも庶民の住む町だが、アパートの入口から階段、そして部屋のヴェランダや窓枠までほとんどが大理石の化粧石が使われている。

 

アレンテージョ地方のヴィラ・ヴィソウザを訪れた時、ふと足元を見ると、歩道の石畳がピンク色の大理石だった。なんと贅沢な、と思ったが、町の外を走っていると、遠くに白い山が目に入って来た。それは大理石の屑石を積み上げてできた山だった。偶然、大理石の露天掘りをしている場所に来たのだった。

採石場は国道255号線に沿ってあちこちにある。道路脇には石を切り出した後が見られる。それは下に下に掘って行くから、道路から何十メートルもの深さになって、そんな下の方で大型機械で更に石を切り出している。その底には雨水がたまり続け、緑色のプールのようになっている。道路から見下ろすと、目がくらみそうなほどだ。

 

 

 

2014年に訪れた時の写真

 

これは今回の事故が起きる以前、4年前の2014年5月14日にMUZVITが撮影したもの。

 今回道路崩落の事故が起きたのは、国道255号線、ヴィラ・ヴィソウザとボルバを結ぶ線だった。その国道は4年前から一般車両は通行禁止になっているそうだ。しかしその以前は私たちも何度も通行した国道だと思うとぞっとする。

ニュースの画面を見ると、道の両側から砕石し、丁度道路の幅だけ残して、両側を切り取っている。まるで川の上に掛かる一本の橋の様だ。その一部が崩れ落ちた。まるで大規模ながけ崩れの様に、下の緑のプールに向かってなだれ落ちている。

 

今回の事故現場のニュース画面

 

 犠牲者は5人。二人の遺体はすぐに発見されたが、残りの3人はまだ見つかっていない。たぶんクルマ2台が巻き込まれたようだ。

底に溜まった水を大きなホースで汲み上げて、水中には数人のダイバーが潜り、水面からは水底を調べるため、ソナーが導入されているが、発見はされていない。

 

水底で捜査するダイバーたち。

 

冷え込む夜にも捜索が続く

 

ポルトガルはこのごろ国中が観光ブームで、不動産を買い求める人が多い。あのマドンナもトロイアにある広大な牧場を購入したとか、ハリウッド女優のスカーレット・ヨハンソンもリスボンの中心に家を買ったとか、ニュースが流れる。もちろん一般の外国人も全国的に不動産を購入しているらしい。新築物件やリフォーム物件でも、ふんだんに大理石の建材が使われている。

大理石の需要は大幅に増えているだろう。採石業者は大忙し。

そんな中で今回の事故は起きたのではないだろうか。

MUZ 01/12/2018

 

 

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