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【 蛸 グ ラ フ 】

八方手詰まり。

-Jan Svankmajer

2005-11-01 00:23:10 | ■Culture
ヤン・シュヴァンクマイエルの世界に行ってきました。いくつかの短編はDVDで観てたんですが長編の「悦楽共犯者」をまだ観てなかったので。シュヴァンクマイエルはオブジェに肉体を与えて、生理的嫌悪感すら匂い立たせる映像作家として知られる人で作品どれをとっても鮮烈です。ある意味、真の「アニメーション」の求道者。
あと、タルコフスキーの映画なんかもそうですが、寂然とした美しい風景と孤独でちょっと気鬱入ってる文芸的な作風が共産圏作品には通底してる気がして興味深いです。笑えるポイントもたくさんあると思うんですが、検閲制度やら冷戦時代の背景からかずいぶんひねくれてるように感じますね。

漫画のキャラというのは所詮絵に過ぎないわけで、ペラな絵にいかに身体性を持たせナマっぽくできないか色々考えるわけですが、そういう演出手法を探るときシュヴァンクマイエルの作品はかなりの刺激になります。命をもたない物体が呼吸し、湯気を上げて贓物や体液を撒き散らし、暴力を持って他者を喰らい、殺される。肉体のリアリティとか生存のダイナミズムの表現は単純な現実の模写である必要はないこと(逆説的に人間もまた単なる物体ではないのかということ)を端的に教えてくれるわけです。

お目当ての悦楽共犯者は、何人かの男女がそれぞれに病的な快楽、充足を求めて奇怪な行動を重ね、微妙な”共犯”関係となる様が80分執拗に描かれていくという物でした。冒頭からしてエロ本を物色する禿頭青年と中年店主の粘っこい視線で速攻椅子を蹴って映画館をおん出たくなるイヤな気分にたたき込んでくれます。出てくる奴らみんなヘンタイさんばかりなわけですが、お気に入りはきちゃなくて一等エロい郵便屋。就寝のシーンはたぶん途中笑いが凍り付くこと請け合いでしょう。僕は吐きそうになりました。

とってもいい映画でしたが、白目むくほどあんなに没頭してて、こちとら見てるだけなんですよ。自分だけ愉しみやがってあいつらほんとサイアクですね。

らくがきは前回エントリのキャベツ畑つながりで「オテサーネク」。
…辞書を引くとキャベツには女性性器の暗喩の意味もあるそうで。それを踏まえると、切り株から赤子になったオテサーネクがキャベツを食って腹痛を起こし、お婆さんにクワで腹を割られて中からオテサーネクに食われた人々が出てくるという原作民話の展開はまた味わい深く感じます。

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2minus #00/シュヴァンクマイエル
ヤン・シュヴァンクマイエルの食卓

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1 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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シュワンクマイエル展 (ozaki)
2006-05-26 14:35:32
ご無沙汰です。

先日シュヴァンクマイエル展に行きました。展示の目玉は『悦楽共犯者』に登場した自慰機械で、書店の店主がメンテを続けているかのような「現役ぶり」に驚かされました。付属のモニタに映る映像も全く同じです。

細部を見ようと機械に近づいたとたん、激しく音を立てて作動するのには腰を抜かしました。足早に展示室を出て行った妻と子供たちはきっとこれにやられたのでしょう。



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