杉ちゃんのWEB日記

国際山岳ガイド 杉坂 勉のブログ

2014-8-26~28 ジャンダルム縦走

2014-08-29 09:22:46 | ガイド山行記録
8月は天候に振り回されっぱなしの毎日。この週予定の穂高、ジャンダルムも大いに振り回されました。
予定では順当に新穂高からロープウェーで西穂山荘に入り、翌日奥穂まで縦走するというものでしたが、天気予報によると予定している日程の最終日(28日)以外は何ともパッとしない様子。それではと思い切って予定を変更し、26日上高地から入山して2日目に穂高岳山荘に入り、最終日の28日に一気に西穂まで縦走して下山するという形にしました。
P8270001
予報通り(悪い天気は予報通りになる・・・)26日は土砂降り。雨の中を横尾山荘めざし黙々と行進。山荘直前では親離れしたばかりの子熊にも遭遇。このところよく目撃されているようです。
さて翌27日は朝6時に横尾山荘を出発。涸沢からザイテングラードを経由して、穂高岳山荘へ入りました。この日はとりあえず雨具は着ないうちに山荘へ入れました。



P8280005
いよいよ最終日の28日。朝3時に起床。外は濃いガスに包まれ視界はほぼ無し・・・。それでも朝食を済ませ準備を整えているうちに、いつの間にかガスは消えはじめ、視界も効いてきました。4時15分穂高岳山荘発、一路奥穂山頂を目指します。



P8280007 P8280009
寝起きの体と、冷たい風に悩まされながらも1時間ほどで奥穂に到着。5時に身支度をと整えいざ縦走へ。


P8280012 P8280014
今回は奥穂からの縦走なので、いきなり出だしが馬背の下り!昨夜までの雨とガスでまだぬれている岩はとても滑りやすく、緊張の連続でクライムダウンしました。これが前半の核心だったかな・・・




P8280021 P8280022
続くロバの耳も慎重に超え、いよいよジャンダルムへ。これは裏側から無難に登頂。ここまで約3時間。
コブの頭で小休止ののち、天狗のコルへの長い長い下りにかかります。ガレと鎖をこなし天狗のコルへ。前半の山場を終了。ここからは大小のアップダウンをうんざりするほど超えて西穂へ向かいます。



P8280028 P8280031
このまま天気は回復していくのかと思いきや、稜線は再びガスに覆われその全貌を望むことは出来ませんでした。そんな中ひたすらガレ場ののぼり下り、そしてクサリ場を越え天狗の頭、間ノ岳と通過していきます。




P8280037_2 P8280038
時折ガスの切れ間から西穂山頂が見え隠れする中、大きなピークをいくつも越えて、11時にようやく西穂高岳の山頂へ。振り返ればそこにいま越えてきた稜線が見えるはずですが、今は濃いガスの中・・・
あとは12個あるといわれる独標までの小さなピークを、いやというほど越えて午後3時30分西穂山荘へ。時間はかかりましたが、無事に今回の大イベントを終えることが出来ました。
イヤーこの縦走、本当に長大で一筋縄ではいかないなーと改めて実感させられました。でも悪いコンディションの中、無事にこなせたことは本当によかった。そしてお客さんには拍手です。よく頑張りました!!






2014-8-21~22 前穂北尾根

2014-08-23 15:12:30 | ガイド山行記録
広島では大変な事になっておりますね。一刻も早い救助活動を祈るばかりです・・・
そんな中ではありますが、8月後半戦の第二弾は前穂北尾根でした。
P8210001
入山は8月21日。このところ天気には振り回されっぱなしの毎日でしたが、この日は朝から稜線もきれいに望め、淡い期待の下での涸沢入山となりました。
予定では2泊3日の中で、北穂の東稜と前穂北尾根のセットの予定でしたが、明日の天気が読めないため、もし朝晴れていたら本命の前穂北尾根の1本に絞り、行動するということで就寝。



P8220003 P8220006
夜中に一度目を覚まし、外に出てみると満点の星空。これは期待が持てるか!
翌22日は3時に起床。相変わらずの満点の星空。これで前穂の北尾根に取り付くということで決定。4時に涸沢ヒュッテを出発。
5・6のコルへの登りでご来光。きれいに染まっていく穂高の山々を眺めながらのアプローチでした。



P8220008
5・6のコルで登攀準備。6時少しまえに登攀開始。このところの雨で少し緩みがちの踏み跡をたどりまずは5峰へ。



P8220013 P8220014
ゆっくり慎重に5峰、そしてスタカットでのクライミングを交え4峰を通過。



P8220021
3・4のコルでは大休止。ここから始まる核心部への準備を整えながら、しばらくぶりの360度の大パノラマを堪能。



P8220024 P8220028
さていよいよ3峰のクライミングに突入。スタカットクライミングで1ピッチずつ慎重に超えていきました。



P8220030 P8220034
次々に現れるフェース、スラブ、チムニーと変化に富んだ3峰のクライミングを超えていきます。



P8220037 P8220039
2峰での懸垂下降を終えるとあとは前穂山頂への岩稜帯を残すのみ。



P8220041
9時20分に前穂へ登頂。ここでも360度の大パノラマを堪能。わずかなチャンスを与えてくれたことに感謝。
あとは急な重太郎新道の下りです。事故の多いこの道も慎重に下って行きました。



P8220042
上高地へ下山してきて改めて穂高の山々を遠望。今季初めて雨具を使うことなく行動できた2日間でした。
今年の夏の天気は本当に極端です。大雨で大変なところもある傍らで、今日のような恵まれた日も・・・
これからの日本はこんな気象状況の連続となるのでしょうか?何とも複雑な気持ちの今日この頃です。





2014-8-18~20 北穂~奥穂縦走

2014-08-20 21:27:47 | ガイド山行記録
お盆も過ぎ、気が付けば8月も後半戦に突入。
とは言え天気は毎日不安定。そんな中後半戦第一弾は、穂高の縦走です。
P8180001
週末までの天候不順をやり過ごし、18日月曜日に上高地から入山。



P8180002
このところの天気のせいか、とても静かな上高地。雨上がりの光景も幻想的でとてもきれいでした。
夕立の来そうな気配のなか、何とかぬれずに涸沢へ到着。翌日の行動に備えました。


P8190007 P8190008
あけて19日は天気予報とは裏腹に、朝からどんよりと怪しげな空模様。とりあえず6時に涸沢ヒュッテを出発。すると間もなく雨模様。そして本降りに・・・
南稜取り付きの長い鎖は一応ロープを装着。ぬれたスラブを慎重にこなしました。



P8190017
北穂には10時少し前に到着。大休止ののち奥穂への縦走路へ。




P8190020 P8190019
すっかり雨模様の縦走路は、飛騨側からの風もありルートはすでにびちょびちょ・・・ロープを付けての慎重な縦走と相成りました。そしてあたりはすっかりガスに包まれ雄大な景色こそ望むことはかないませんでしたが、それでもなんとなく幻想的というか神々しいというか、これはこれでいい感じでした。



P8190022 P8190031
多少時間はかけましたが、無事に涸沢岳へ。この日の難所はクリヤーできました。
穂高岳山荘もこの天気のせいで比較的すきすき。朝までぐっすりと休むことが出来ました。



P8200033
最終日の20日もあたりは朝からガスに包まれ、この素晴らしい全貌は白いベールの中・・・
この日も6時に小屋を出発。一応渋滞気味の鎖場を超えて奥穂の山頂へ。



P8200035 P8200038
なんとなく晴れそうなんだけどなーという期待もむなしく、奥穂山頂は相変わらずの視界ゼロ・・・
記念撮影もそこそこに吊り尾根をたどって一路紀美子平へ。



P8200041 P8200043
この日は稜線の風も強く、体感温度も低く感じられます。下の松本が36℃なんてとても信じられない!
それでも時折ガスが切れ始め、乗鞍や遠く富士山までも遠望できるまでに天気は回復。



P8200044 P8200046
重太郎新道もゆっくり着実に下降を続け、11時30分に岳沢ヒュッテに到着。代位休止ののち、今回の縦走をかみしめながら上高地へと下って行きました。



P8200048
今回のお客さんは、これが初めての穂高。たいへん頑張りました!!





2014-8-3~6 北岳バットレス第四尾根

2014-08-06 19:55:34 | ガイド山行記録
 遅ればせながらいよいよ私も夏本番。これからシーズンに突入です。
まず第一弾は北岳バットレス。ここは2010年の大崩壊以来ちょっと足が遠のいていましたが、今年は縁あって再び訪れることとなりました。
 しかし今年は芦安から広河原までの林道が落石により通行止め。大きく迂回して奈良田からの入山となりました。

 4年ぶりの広河原はビジターセンターもリニューアルされており、雰囲気が少し変わりましたね。御池小屋は4年前と変わらない感じでしたが、スタッフの特に女の子たちがとても親切でてきぱきと働いており、とても好印象でした。今回は3泊もしたのでどうやら顔も覚えておいただいた様子。とてもお世話になりました。
 
 
P8050001
 さてさて話はクライミングに戻り、1日天候不順による停滞日をはさみ、入山3日目の5日。朝の4時に御池小屋を出発。綺麗なご来光を眺めながらサクサクとアプローチ。朝焼けの空は少しギラギラした感じで雲も多く、ちょっと気になりましたが視界はまずまず効いているので予定通り6時に5尾根の支稜に取り付き。



P8050005
 昨夜までの雨は夜半からの強風ですっかり吹き払われ、壁は乾いた状態。いいコンディションです。




P8050006
 5尾根支稜からさらにDガリーをつめ、横断バンドへ。崩壊地を緊張しながらトラバースし、順調に4尾根の通称下部岩壁へ。ここはまだ樹林帯の中なので岩も所々濡れており、ちょっとシビアなクライミングを強いられました。



P8050007 P8050009
 下部岩壁にちょっと手こずりながらも4尾根取り付きへ。小休止の後9時4尾根へ取り付き。この頃より少しガスが下へと降りて来たのが気になります。
 2ピッチ登る頃にはすっかりあたりはガスに包み込まれてしまいました。さらに右手のCがりーではひっきりなしに落石が・・・。そのうち1発はかなりの大きさの岩石が落下。ちょうどCガリー大滝の墜ち口に直撃!物凄い音とともに砕け散り、そのまま下部岩壁へ降り注いでいました。クワバラクワバラ。



P8050012 P8050014
 さてさてガスはいよいよ濃くなり、とうとう小雨が降り始める始末。濡れた岩はとてもスリッピー。緊張感抜群のクライミングを強いられることとなってしまいました。


P8050016
 4尾根5ピッチ目の核心部に来るころにはすっかり雨は本降り。岩はすでにびしょびしょ・・・。核心のピッチは出だしがかなりスリッピー。足を滑らせながらのシビアなクライミングでした!

P8050022
 懸垂下降からの続く2ピッチも、通常なら快適なスラブのクライミングを楽しめるはずが、びしょびしょに濡れた岩はかなり悪い。この日は慎重に足を置きながらの微妙なクライミング。
 途中ロープがスタックするアクシデントもありましたが無事に枯れ木テラスへ。ここで初めて崩壊地の様子を垣間見ることが出来たのですが、そのあまりの変わりようと、落ちて行ったであろう岩の堆積を考えると、なんかとても恐ろしいもを感じずにはいられませんでした。
 


P8050024 P8050028
 以前はここまでくれば後は易しいリッジにスラブをこなせば終わりだったのですが、今日はさらに崩壊地のトラバースと最後上部城塞のチムニーが待ち構えてます。トラバースも既にびしょびしょに濡れた状態なのでかなり緊張。最後のチムニーもフリクションを生かすことが出来ないので、かなり緊張もの。クラックにカムを突っ込みA0で突破しました。

12時20分、ちょっと時間はかかってしまいましたが、無事に登攀終了。今日のこのコンディションではまあ上出来かな。



P8050031
 大休止の後、あとはひたすら雨の中を北岳山頂へ。稜線はガスに包まれ展望は無し。。。13時30分、北岳山頂。記念撮影もそこそこに再びガスに包まれた縦走路を草滑りへ。16時白根御池の小屋へ無事に下山。やれやれ、今日のバットレスはつかれましたね!!



P8060032
 明けて翌日はうらやましいほどの晴天!まあ、昨日登れたからいいようなものの、もし登れてなかったら恨みつらみの言いたくなるような天気の中、広河原へ下山してきました。

 私自身5年ぶりとなる北岳バットレスでしたが、まだ4年前の大崩壊の爪痕が未だに残る壁を見てきました。私達の登攀中も大崩壊地やCカリーのあちこちからはひっきりなしに岩の崩れる音がしており、前述のとおり一度はかなりの大きさの岩が崩壊。なんか、いずれはあのマッチ箱さえ落ちてなくなるのでは・・・
 北岳バットレスは、もう以前のような初心者向けのお手軽なルートではなくなってしまったのだな、と思わずにはいられませんでした。
 今後Bガリー、Cガリーから取り付こうと考えている方、そこはまだまだ崩壊が進んでいます。くれぐれもご注意を!!