富士フィルムスクエアでの緑川洋一の展覧会を観た後、時間があったので国立新美術館で開催されていた「マティス 自由なフォルム」展も観てきました。なお、会場のセクション1から3迄は撮影禁止のためネットでの写真を使いました。
アンリ・マティスは1869年、フランス最北端のノール県に生まれ、1887年に父の命で司法試験に合格、しばらくは法律事務所の書記として働いていたが、1889年、盲腸炎の治療中に母から画材を贈られたことで絵画に興味を持つようになった。彼曰く「楽園のようなもの」と回想、1891年にパリに出てギュスターヴ・モローの師事を受ける。1898年に結婚し、その年にロンドンでターナーを研究した。マティスの初期の作風は写実的なものを志していたが、セザンヌ・ゴッホ・ゴーギャンら後期印象派の影響を受け自由な色彩による絵画表現を追求するようになった。
最初のセクション1 は色彩の道です。特に南フランスのトウルーズやコルシカ島に滞在しまばゆい光の輝きを放つこの地の気候との出会いが、解放された一連の絵画が生まれる契機となっている。
初期の作品 本のある静物: 1890年 油彩/カンヴァス 21.5*27cm ニース市マティス美術館蔵
マティス夫人の肖像: 1905年 油彩/カンヴァス 46*38cm ニース市マティス美術館蔵
セクション2はアトリエです。 1917年のニース滞在をきっかけに、この街でアトリエを転々とさせて制作に励むようになる。アトリエはマティスにとって創造の現場であると同時に、絵画の中心的な主題の一つでもありました。アトリエに花瓶・テキスタイル・家具調度など多様な文化的起源をもつオブジェを飾り絵にしている。
小さなピアニスト、青い服: 1924年 油彩/カンヴァス 22*29.8cm ニース市マティス美術館蔵
ロカイユ様式の肘掛け椅子: 1946年 油彩/カンヴァス 92*73cm ニース市マティス美術館蔵
セクション3は舞台芸術から大型装飾へです。1920年にパリのオペラ座で公演された「ナイチンゲールの歌」の舞台装置と衣装デザインを手掛け、1930年にアメリカのバーンズ財団の装飾壁画の注文を受けた。この仕事を契機として大型装飾に職業的使命を認めることになる。
ダンス、灰色と青色とバラ色のための習作: 1935~1936年 エッチング/紙 29.7*80.3cm ニース市マティス美術館蔵
森の中のニンフ(木々の緑): 1935~1943年 油彩/カンヴァス 245.5*195.5cm オルセー美術館蔵(ニース市マティス美術館寄託)
セクション4 は自由なフォルムです。1930年にマティスはタヒチに旅行し、その眩しい光と色彩に魅了されたがなかなか作品には表現できずにいた。1941年に腸の手術を受けてからは体力が落ちて絵を描くことが次第に難しくなってきた。そんな時にたまたま部屋の壁に穴が開き、そこを動物の形に切った色紙で塞いだところ思わぬ効果を発見、発想が次々に浮かび絵具では出来ない絵の表現を会得した。
クレオールの踊り子: 1950年 切紙絵 205*120cm ニース市マティス美術館蔵
ブルー・ヌード IV: 1952年 切紙絵 103*74cm オルセー美術館(ニース市マティス美術館寄託)
葦の中の浴女: 1952年 グアッシュで彩色、裁断した紙/白色カノン社製の紙に貼り付け(カンヴァスで裏打ち)
オルセー美術館パリ(ニース市マティス美術館寄託)
波: 1952年 グアッシュで彩色、裁断、貼り合わせた紙(カンヴァスで裏打ち) ニース市マティス美術館
アンフォラを持つ女: 1953年 グアッシュで彩色、裁断、貼り合わせた紙(カンヴァスで裏打ち)
ポンビドーセンター/ 国立近代美術館・CCI、パリ(ニース市マティス美術館寄託)
日本の仮面: 19510年初頭 グアッシュで彩色、裁断した紙(紙に貼り付け) 個人蔵
花と果実: ニース 1952~1953年 グアッシュで彩色、裁断した紙/白色カノン社製の紙に貼り付け(カンヴァスで裏打ち)
ニース市マティス美術館蔵 410*870cm
陶の習作、12点: ニース 1953年 陶工:シャルル・コックス 彩釉テラコッタ ニース市マティス美術館
大きな顔、仮面: ニース1951年 筆と墨 カンソン・エ・モンゴルフェ社製の透かしの入ったぺラム紙
オルセー美術館(ニース市マティス美術館寄託)
大きなアクロバット: ニース1952年 筆と墨 / ぺラム紙 オルセー美術館パリ(ニース市マティス美術館寄託)
木(プラタナス): ニース1951年 筆と墨、白色のグアッシュで修正 / 中央下部に紙が貼り付け足されたぺラム紙
オルセー美術館パリ(ニース市マティス美術館寄託)
顔 3点: 1951年 筆と墨 / 紙 読売新聞社
セクション 5 は ヴァンスのロザリオ礼拝堂 です。 1948~1951年にかけての4年間、マティスはヴァンスにあるドミニコ会の修道女のためのロザリオ礼拝堂の建設に専心します。この礼拝堂のステンドガラス・室内装飾・典礼用の調度品・さまざまな時期に対応する祭服に至るまで殆どを指揮し、総合作品として仕上げています。
蜜蜂:1948年 グアッシュで彩色、裁断、貼り合わせた紙 / 厚紙に糊付け(カンヴァスで裏打ち) ニース市マティス美術館
この作品は礼拝御堂には採用されなかったが、故郷の小学校?のステンドガラスに使われ、教室を明るく照らしている。
ステンドグラス 生命の木 2点: 1950年 ガラス工:ポール・ボニ 鉛で接合された色付き透明すりガラス ニース市マティス美術館
星形のある背景の母子像: ニース1949年 筆と墨 / クラフト紙に糊付けしたぺラム紙(カンヴァスで裏打ち) ニース市マティス美術館
左:聖ドミニクス: 1949年 筆と墨 、白色のグアッシュと貼り紙で修正 / ぺラム紙 300*134.5cm ニース市マティス美術館
右:聖ドミニクス: 1949年 陶工:オパーニュ・ブルデヨン 筆による釉 / 白色のファイアンス板 ニース市マティス美術館
祭壇の基督磔刑像: ニース1949年 鋳造:ヴァルスアーニ ブロンズ ニース市マティス美術館
祭礼服は全部で6種類ですが、ここでは2種類を載せます。
左:緑色のカズラ(上祭服)のための 上:正面・下:背面 右:緑色のストラ〈頸垂帯)のためのマケット 1950~1952年
グアッシュで彩色、裁断した紙 / 紙に貼り付け(カンヴァスで裏打ち)
左:黒色のカズラ(上祭服)のための 上:正面・下:背面 中:黒色のストラ〈頸垂帯)のためのマケット
右上:黒色の聖杯用覆布のためのマケット 右下:黒色のマニブルス(腕巾)のためのマケット 1950~1952年
グアッシュで彩色、裁断した紙 / 紙に貼り付け(カンヴァスで裏打ち)
ロザリオ礼拝堂の内部(部分)
ロザリオ礼拝堂のステンドグラス: 礼拝堂内の明るさが時間と共に変化する。
以上160点の作品を見終わえて改めてフォーヴィズム・モダニズム・印象派の画家として絵画をはじめ版画・彫刻・ドローイングと幅広く活動していたのに凄いなと思いました。特に紙切り絵は楽しく見ることが出来ました。でも疲れました。
写真はタンポポです、早く暖かくなればと思います。
背景画は三角形の集合です、自分では気に入ってます。
マティスは絵画しか見たことがありませんでした。版画やステンドグラスなど幅広い活動だったんですね。どなたかが「マティスの絵画の色は優しさが籠っている」と書評されていましたが、本当に心惹かれる絵画が多いです。心惹かれる展覧会ですが、これだけ多くの作品を見るのはやっぱり大変!それをさらにまとめるなんて私にはとってもできません・・。
光と色彩から離れた、切り絵の世界、新しいマティスを発見した思いでした。
ステンドグラスの作品「生命の木」は、シンプルながらその色彩といい、力強く、神秘的です。
たくさんの編集、ほんとにご苦労様でした。
背景画の作品もとっても素敵です。
160点もの作品、見応えが有りましたね。お疲れさまでした。
背景画の作品も色合いが素敵ですね。
ラストで一気に持ってかれました(笑)
一方で、こんなシリーズもございます
マティスMatisse カットアウトTheCut-Outs展 バーチャルツアー その(1)at MoMa NY
https://blog.goo.ne.jp/onscreen/e/6cafa7a4fed620d71528c6f9d24ee11f
その(1)〜 その(10)まであります
ご参考まで