あの日から。
兄さんは毎日のように、僕を抱いている。
場所なんて考えていない。
ただ、僕を抱きたいだけで……
兄さんに抱かれていると、不思議な気持ちになってしまう。
嫌なのに、少しずつ、嫌にならない――
そんな気持ちでいると。
僕の頭の中は、兄さんのことばかり考えていた。
学院の大学部には、使用されていない教室がある。
その日は、兄さんがいつも使っている教室で抱かれた。
「はぁ……はぁ……っ」
僕は呼吸を整えながら、兄さんの腕の中にいた。
抱きしめる腕の温もりは、どことなく心地よく感じてしまう。
でも。今日は、何か違うような気がする。
「……っだ…」
聞いてはいけないと思う。
でも、聞いてしまった。
「好きだ」
それは。
凍り付いていた心を、溶かしてしまう魔法の言葉―――
目が覚めたときには、いつの間にか服を着ていた。
兄さんはいなくなっていて。
代わりに上着を置いていた……
僕は、背中にある上着を握りながら、窓の外をのぞいた。
もうすぐ、夜になる――
――会いたい。
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